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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
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第7話 巨大海月の行方

 姿を現した巨大海月。

 真っ白な体の正面からブレスが放たれ、海蛇のブレスと衝突する。


「力は互角か」


 遠くの光景だが、迷宮主や眷属である俺たちの目にはしっかりと見えていた。


「ううん、少しずつだけど押されている」


 ノエルが言うように巨大海月のブレスが徐々に強力になっており、海蛇のブレスを押し始めていた。


「原因は分体に回していた力を取り戻したからか」


 港には悪魔の海月の分体が残されている。ただし、全て動きを止めており冒険者がちょっと武器を振るえば消えてなくなってしまう。


「そこまでにしてください」

「なんでだよ」


 相手は港を破壊していた魔物。止められたことに冒険者が腹を立てていた。


「そいつらの維持にリソースを割いてくれた方が、味方をしてくれる魔物にとって助かるはずです」

「そう、だな」


 実際、海蛇の役に立っている。

 あくまでも俺たちと無関係という体を装う。あんな魔物を使役していると知られた時点で敵に警戒されてしまう。


「しかし、お前らは見えるのか?」

「気になりますか?」


 正面に巨大なレンズを作り出して遠くの景色が映し出されるようにする。

 魔法で見られるようになった景色に港で戦っていた全員の意識が向けられる。


『そっちの様子はどうだ?』

『このままだと押し切られそうです』


 いつもの落ち着いた様子の中に焦りが見られる。


『敵はかなり強いようだな』


 災害の一つとして考えられていた海蛇を押してしまえる力を持つ巨大海月。

 迷宮の魔物の中でも最強クラスの魔物より強いことになるのだから普通の冒険者に敵う相手であるはずがない。


『だけど、それは海蛇より強いだけだ』

『いいのですか?』

『ここまで関わった以上は見過ごすことなんてできるはずないだろ』


 今の海蛇は迷宮の魔物だ。

 海蛇自身の力で敵わなかったとしても勝利する方法はある。


『ノエル』

『勝ってミトゥス』


 ノエルから神気が海蛇へ送られる。


 カッ!

 海蛇の放つブレスが強化され、巨大海月のブレスを一気に押し返す。


「よし、やれ!」


 ブレスを放っている巨大海月は回避することもできずにブレスの直撃を受ける。

 後には何も残されていなかった。


『おおおぉぉぉっっ!!』


 レンズを通して巨大海月が消し飛ばされる光景を見ていた冒険者たちから歓声が上がる。

 さらに港にいた悪魔の海月も幻のように消えてしまう。


「やった!」

「おうよ!」


 アイラが近くにいた冒険者と手を叩いて喜びを露わにしている。

 ただし、俺たちはアイラ以外のメンバーは喜んでばかりもいられなかった。


「こっちにいた海月は消えた。近くに巨大海月も含めて魔物の反応は感じ取ることができない」

「はい。間違いありません」


 シルビアやメリッサでも感知することができないのだから、近くにいないのは間違いない。

 見ていた光景をそのまま信用するなら海蛇のブレスによって消し飛ばされた。

 冒険者たちと同様に喜びたいところだ。


「どうにも腑に落ちないんだよな」

『それについては同感ですね』


 巨大海月と直接戦った海蛇も違和感を覚えていた。


『対峙してもアレから感情のようなものを感じ取ることはできませんでした。それは死ぬ瞬間も変わりません』


 どんな生物であれ生きているなら死を間近にすれば心が震える。

 もし、死を前にして心が反応しないのだとしたら、肉体は生きていても心は死んでいることになる。


「まさか、アレも分体なのか……?」

『考えにくいですね。アレの攻撃は本物でした。もし、分体で私と拮抗できるだけの力を出すことができたのだとしたら、本体はどれほどの力を持っているのか』


 考えるだけでも恐ろしい。


「せめて何かしら得られれば解析することもできたんだけど……」

「仕方ないよ。だって何も残らないんだもん」


 素材が得られれば迷宮へ持ち帰って【解析】すれば詳細が判明する。

 だが、何も残らないのでは解析することができない。パレント迷宮で詳細を知ることができたのは、あそこが迷宮だったから。迷宮の外では魔法の対象とすることができない。

 試しに悪魔の海月に対して使用してみたが反応を示すことはなかった。


「ですが、何も分からなかった訳ではありません」

「本当か!?」


 何も手掛かりがない状態でメリッサが気付いた情報は貴重だ。


「分体だったから対象にすることができなかった、という理由も考えられますが、もしも迷宮の力で作られた魔物だったなら【解析】の対象にすることはできたはずです」


 まだ距離があったせいで本体と思われる巨大海月を相手に【解析】を使用することはできていない。

 だけど、巨大海月を相手にしても通用しなかったならゼオンが関わっている可能性は低くなる。

 未だに確信は得られていない。


「どうしますか?」


 シルビアの言葉にすぐ答えられない。

 良くも悪くも力を持ち過ぎた。メティス王国所属の冒険者が、イシュガリア公国の問題に頼まれた訳でもないのに深く関わる。

 ゼオンが関わっていないのなら手を引いた方がいい。


「何を迷っているの」

「アイラ」

「どっちにしろ首都には向かった方がいいでしょ」

「いや、首都は首都で別の問題が……」

「ミシュリナさんが困っているかもしれないんでしょ。だったら友達を助ける為にも向かうべきでしょ」

「……!!」


 言われるまで致命的な事を忘れていた。

 ノエルとミシュリナさんはお互いの立場も忘れて親しくなるほどの友達だった。そして、今は俺たちとも親しくなっている。

 親しい相手が困っているなら手を差し伸べるべき。


「そうだな」


 友達を助ける。

 その行動に対して誰にも文句を言わせるつもりはない。


「で、これからどうするの?」


 巨大海月の脅威が完全に去ったとは思えない。


「ミトゥスを待機させておこう」

「では、こちらの姿の方が都合いいですね」


 人間の姿になった海蛇が路地から姿を現す。

 ちゃっかりイリスが【召喚】で近くに喚び寄せていた。


「私があの姿でいると警戒して姿を現さないかもしれません」


 どちらの姿であっても警戒してくれていれば十分だ。


「何か問題が起こったならすぐに呼べ」


 多少は目立つことになるだろうが、すぐに駆け付けることを約束する。


「さ、首都では何があるかな?」

まだ登場していませんが、今章はミシュリナを助ける為に奮闘します。

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