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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第21話 魔導衝波

「……勝った」


 遺跡の魔物部屋で討伐数を競った俺たちだが、結果は俺が30体を倒せたことでどうにか勝利を収めることができた。

 初めは、それなりに戦うだけで3人の内の誰かに勝たせてあげるつもりでいたのだが、3体ほど倒したところで見たシルビアたちの目を見て気が変わった。

 賭けに勝ってどんな要求するつもりなのか分からなかったが、目がギラギラとしていた。


 気が付けば思わず全力を出していた。


「勝負は俺の勝ちだ。というわけで賭けはなしだ」

「「「えー」」」


 抗議の声が上がるが無視だ。

 こういう賭け事は安易に行わない方がいいと痛感した。



 ☆ ☆ ☆



 魔物部屋を出ると遺跡3階の探索を行うが、魔物と遭遇することなく宝箱を見つけても既に開けられた後か罠が仕掛けられている物だった。


 思えば、現在3階には多くの冒険者が訪れている。

 ルフランたちが一番乗りをし、朝から乗り込んでいる冒険者の手によって魔物が討伐され、宝箱も開けられている。


 というわけで偶然にも見つけることのできた階段を使用して4階へと上がる。


「これは……」


 4階に上がった瞬間から甲高い金属音が聞こえてきた。

 誰かが何かと戦っている。


「これは、ゴーレムと戦っている音ですね」


 音の正体に気付いたシルビアが教えてくれる。

 たしかに言われるとゴーレムの体に剣を叩いている音のように聞こえる。


「マミー、リビングアーマー、ゾンビと続いて最後はゴーレムか」


 4階に上がると今までと同じように道が三方向に分かれていた。

 どっちへ進むべきか?


「これは……」


 シルビアが何かを見つけたのか右側の道を進もうとしている。


「どうした?」

「感じられた気配が知り合い……おそらくマリアンヌさんのものだと思います」

「大丈夫なのか?」


 危険なようなら助けに行きたい。

 今回遺跡探索に参加している冒険者の中では一番仲のいい冒険者だからな。


「少し焦っているように感じられます」


 そういうことなら様子見も兼ねて見に行ってみよう。


「お前ら、しっかりしろ!」


 近付くとブレイズさんの声が聞こえてくる。

 彼らが戦っているのは廊下を塞いでしまうほど大きなゴーレムだ。


 先頭ではブレイズさんが攻撃し、ゴーレムの攻撃をグレイさんが盾で防御している。後方では、マリアンヌさんが怪我でもしたのか腕を押さえている。


 3階でゾンビに襲われている冒険者には助けるべきか尋ねてから戦闘に加わったが、今の状況はそこまで余裕があるようには見えない。


『加速』


 迷宮魔法で敏捷を上昇させるとブレイズさんに迫っていたゴーレムの拳の前に出る。


「なに……?」


 剣でゴーレムの拳を受け止めようとしていた前に出ると手を掲げて素手でゴーレムの拳を受け止める。加速状態は速くなれるのが特徴だが、止まる時に注意をする必要があるせいで武器を構える余裕がないことがネックだ。


「ほい」


 ゴーレムの拳を横に逸らすと腕に引かれて体が倒れる。

 そのままボールのように蹴り上げると廊下の奥へと吹き飛ばされていく。


「これが1000体近い魔物を倒せるマルスの実力か……」


 そういえばブレイズさんたちの前で戦闘をするのは、一緒に遠征をしたフォレストウルフ討伐以来では初めてかもしれない。

 あらためて俺の力を近くで目の当たりにして驚いている。


「大丈夫ですか?」


 だが、一刻も早く気を持ち直してもらう必要がある。

 ここは遺跡で、いつ魔物が襲ってきてもおかしくない場所だ。


「ああ、大丈夫だ。もうゴールが近いせいか魔物の強さが一気に強くなって、油断していたところをマリアンヌが直撃を受けてしまって……いや、言い訳をしても意味がないな」


 ブレイズさんが立ち上がってゴーレムが吹き飛ばされた方向に剣を構える。

 同じようにギルダーツさんとグレイさんも構えるが、マリアンヌさんが攻撃を受けてしまったことに動揺してしまったことで消耗してしまったのか力があまり込められていない。


「遺跡の最奥は近いんですか?」


 4階はほとんど探索していない。

 にもかかわらずブレイズさんはゴールが近いと言っていた。


「俺たちの他にも既に最奥――5階に上がる為の階段を見つけた奴らがいる。ただし、ほとんどのパーティがボスに挑むには消耗しているらしいからボスに挑むのは明日に回している状況だ。で、俺たちは4階の探索を行っていたわけだ」


 遺跡は奥へ上がれば上がるほど階層の広さが狭くなっていく。

 既に夕方に近い時間になっていることから今日の攻略を諦めたパーティがほとんどらしい。


「あれは俺が倒してしまってもいいですか?」

「いいが、大丈夫なのか?」

「ちょっと試してみたいことがあったんですよね」


 圧倒的なステータスを手に入れた俺だが、だからと言って鍛えなくてもいいというわけではない。

 いつか自分が敵わない相手が現れるかもしれない。

 そう考えると俺が一気にレベルを100以上も上げたように自分よりもレベルが上の相手と戦うのが手っ取り早いのだが、あいにくとここまで強くなってしまうと俺以上にレベルの高い相手がなかなかいない。迷宮で造り出す方法もあるが、魔力は可能な限り節約したい。


 そういうわけで、編み出した方法がレベルに依存しない強さだ。


「ま、あの程度のゴーレム程度なら問題なく倒せますよ」


 ゴーレムがようやく立ち上がる。

 自分の体が倒されたことが信じられないのかゆっくりとした動きだ。


「掌握」


 全身にくまなく流れる魔力を右手にのみ集中させる。

 ゴーレムの敏捷は高くない。それは、遺跡に出現するゴーレムでも同じなのか一瞬で接近したことにゴーレムは気付けない。


「解放」


 跳び上がって右手をゴーレムの胸に押し当てる。


 押し当てるだけ。殴るような真似はしない。

 俺の腕力なら殴ってゴーレムを倒すぐらいなら簡単だろうが、今俺が試している方法は目の前にいるゴーレムよりも硬い敵が現れた時の対策として用意しておいたものだ。


「グギ」


 ゴーレムがダメージの発生しない攻撃に首を傾げながら自分に触れている俺を叩き落とそうと拳を振り上げる。

 しかし、拳を肩の高さまで上げたところで胴体が弾け飛んだ。

 上半身と下半身に分かれた体が床に倒れ、内部に伝わる衝撃のせいで倒れた体も次第に崩れていき残骸だけが残される。


「こんなもんか」


 理想としては手を押し当てた瞬間に効果が発揮される方がよかった。

 試しに使ってみた相手が鈍重なゴーレムだったからこそよかったものの強い相手だったなら効果が発揮される前に攻撃されて致命傷を負うことだってある。


「今のは、一体なんだったんだ?」


 ブレイズさんたちが唖然とした様子でゴーレムを見ている。

 自分たちが苦戦してしまったゴーレムを簡単に一撃で倒してしまったのだから仕方ない。


「私も気になりますね」


 ゴーレムの向こう側からイリスティアパーティが現れる。


「苦戦しているようでしたので駆け付けたのですが、加勢するまでもなく簡単に倒してしまったので驚いています」

「古い文献を読んでいて知ったんですけど、魔導衝波という技術らしいです」


 古い文献というのは真っ赤な大嘘だ。

 実際には迷宮核から教えられた技術で、レベルに依存しない強さについて相談したところ概要だけだが教えてくれた。後は自分なりにアレンジしたものだ。


 俺なりに魔力を右手のみに集中させて相手の内部に伝わせる。

 内側からの衝撃にゴーレムは耐え切れずに体が崩壊してしまった。


 だが、効果を見る限りは今後も練習は必要だ。


「こんなに強くなってどうするんだ?」


 どうするのか?


「俺は今の生活が好きなんです。だから俺よりも強い奴が現れた時の為に備えているだけですよ」


 迷宮主(ダンジョンマスター)であることを隠して迷宮(ダンジョン)を運営しながら迷宮を強くする。

 そうして得られた力を利用して冒険者としてシルビアたちと一緒に活動するのは嫌いではない。


「お前より強い奴なんているのか?」

「もしかしたら、いるかもしれませんよ」


 俺も心当たりは今のところ1つしかない。

 俺の力の源は迷宮主になって得られたものだ。

 世界には複数の迷宮が存在する。同じように迷宮主になっている者がどこかにいないとは限らない。



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