表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
1239/1458

第6話 溶けるノスワージ港

「ふっ」

「たぁ!」


 襲われている人を目にした瞬間、アイラとノエルが助けるべく触手を伸ばそうとしていた海月の魔物を叩いて倒す。

 地面に叩き付けられた魔物はピクリとも動かない。


「好きなように動いていい。港に被害を出さないよう襲われている人たちを助けよう」

『はい』


 各々が海月を倒すべく向かう。

 俺も1歩踏み出した瞬間、左から男性が転がって来る。


「ひぃ……!」


 転がって来る前の地面には海月の触手が鋭く地面に突き刺さっている。


「大丈夫ですか?」


 男性は冒険者で、ハルバートを手にして戦っている。


「ああ。もし力に自信があるなら手伝ってくれないか?」

「手伝うのは構わないのですが……」


 駆け抜けて海月の魔物を神剣で斬ると消えてなくなる。


「なっ、悪魔の海月(デビルジェリー)を一撃で……」

「そういう名前がつけられているんですね」

「ああ。少し前に貴族が乗った船が襲われたらしくてな。名前がないままはかっこよくないだろうからって仮の名前をつけたんだ」


 生き残った少年の言葉がそのまま採用されてしまった。


「ただ、その貴族様も……」


 男性がある船に目を向ける。

 俺も男性が見た方へ顔を向けようとするが、その前に頭へ迫ろうと浮遊している悪魔の海月を斬る。

 やはり何も残さず消えてしまう。


「チッ、貴族が犠牲になったのか」


 悪魔の海月に襲われれば何も残せない。

 だが、興味を示さなかった物だけは残ることになる。おかげでサルオール家へ向かおうとしていた貴族が填めていた指輪だけが港に落ちていた。


「貴族が死んだとなれば面倒なことになりますよ」


 海から飛び出して停泊させていた船から逃げ出して来た人を襲おうとしていた2体の悪魔の海月に向かって斬撃を飛ばして倒す。


「あんたも戦ってくれ。こいつらが相手なら少しでも人数が多い方がいい」

「分かった」


 ハルバートを手にした男性が悪魔の海月に斬り掛かり、何度も攻撃することで倒している。

 何度も攻撃が必要なのは、悪魔の海月の耐久力よりも攻撃に冒険者が慎重になっていることに原因がある。敵の攻撃は、たった1回刺さるだけでも致命傷になり得てしまう。回避に集中していては十分な攻撃を発揮することができない。

 5体の悪魔の海月が同時に伸ばしてきた触手を斬り払い、海月本体をも一気に斬り捨てる。


「キリがないな」


 次は6体の悪魔の海月が海中から飛び出してきて俺に狙いを定めている。

 一撃で仕留めることができる相手は海月にとっても脅威になっていた。


「それはいいんだけどな」


 1体を神剣で斬り、もう1体を風弾(ウィンドバレット)で吹き飛ばす。

 だが、2体を倒したばかりだというのに海中から3体の悪魔の海月が飛び出してくるのが見えた。

 こんなことをしていても意味がない。


「マルス!」


 ノエルが錫杖で道中にいた悪魔の海月を串刺しにしてから傍にやって来る。

 二人で背中合わせになって立つと風弾で近付こうとする悪魔の海月を優先的に吹き飛ばしていく。


「いくら吹き飛ばしても分体が相手だと意味がないぞ。あまり考えたくはないんだけど、早々に撤退も考えた方がいいぞ」

「ダメ! そんなことをしたらノスワージの人たちが困る」

「そうは言ってもな」


 舗装された港の一部が海中に沈み込む。

 外に出て人を襲っている海月もいる。だが、それ以上に港を下から破壊しようと目論んでいる海月もいた。

 根本的な問題をどうにかしなければ港が沈み込んでしまう。


「……わたしに協力する気はある?」

「本体を見つける方法があるんだな」

「ま、試したことなんてないから上手くいく保証はないけどね」


 それでも全く手掛かりのない状態では希望になり得る。


「やってくれ」


 言葉にしてお願いした瞬間、背後で攻撃を続けていたノエルの動きが止まるのが分かった。

 慌ててノエルの方にいた悪魔の海月に向かって風弾を放ってからノエルを見れば目を瞑ったまま立っていた。


「おまえ……」


 気付けば30体の悪魔の海月に囲まれていた。

 そんな状況で自分からは攻撃をせず、目を瞑るなど俺が守ってくれることを信頼していなければできない。


「請け負おう」


 全方位を警戒しながら魔法を撃つ。


「さすがに慣れてきたぞ」


 既に100体近い悪魔の海月を倒している。

 その全てに共通しているのが浮いている高さだ。浮くことのできる高さには限界があるのか俺の頭より上に浮くことはない。なら、頭上からの攻撃は警戒する必要がなく、全員の位置を捉えるのも難しくない。

 シルビアだけは自分の頭よりも高い場所を警戒しなければならないが、身長の問題ばかりはどうしようもない。


 10体の悪魔の海月を同時に吹き飛ばす。


「問題はこいつらが分体っていうことだな」


 たった数秒の間に数十体の仲間がやられたというのに海中から新たに補充するのを止めようとしない。


「まとめて吹っ飛ばす」


 港へ飛び出してきたばかりの海月10体へ手を向ける。

 手の平から放たれた風の弾丸が悪魔の海月を吹き飛ばす。


「うおっ!」


 地面が広く陥没する。

 暴れる俺を警戒した悪魔の海月が港に上がってきた分を陽動にしている間に、残りの悪魔の海月が地下まで一気に溶かしてしまう。


 激しい揺れに体勢を崩してしまう。


「クソッ……!」


 咄嗟に意識を集中させているノエルに手を伸ばして体を支える。

 そのせいで自分の体は倒れ込んでしまい、隙を見逃さなかった悪魔の海月が一斉に触手を伸ばしてくる。


「悪いな。この程度はどうということはない」


 地面に手をつくと魔法を発動させて周囲を土壁で覆う。

 土壁が触手を受け止める。触手の持つ力によって溶かされているが、貫通するまでに若干のタイムラグが生じる。


「大丈夫ですか?」


 そのタイムラグの間にシルビアが迫っていた全ての触手を同時に斬る。


「港を可能な限り元の状態で保存していたい気持ちは分かりますけど、そのせいでご主人様が怪我してしまっては本末転倒です」

「悪い」


 立ち上がりながら謝る。

 シルビアの【壁抜け】と【世界】を併用させたスキルによって、彼女だけは時間制限があるものの閉鎖空間でなくても時間停止が可能であり、全ての魔物を同時に倒すことも可能だ。


「ノエル、まだ?」

「大丈夫。あとは最後の仕上げだけ」


 シャ―――――ン!

 ノエルの持つ錫杖から綺麗な音が奏でられる。


 その音に港で戦っていた冒険者たちが手を止めて、音を鳴らしたノエルの方へ顔を向けてしまう。

 致命的な隙を晒してしまうことになるが、攻撃される前に全てが終わる。


「見つけた」


 ノエルの感覚は悪魔の海月の本体を捉えていた。


「何も残さない? 実体があるのだからそんなことはあり得ない」


 だが、実際に倒された後で何も残さない。


「簡単な話よ。全部、本体が回収していたの」

「は?」


 迷宮と同じ事ができる魔物がいる。

 ただし、迷宮ほど離れている訳ではないためノエルは回収された先を感覚で捉えていた。


 港から10キロ先の海中。


「どうやらギリギリまで戻さなかったのは正解だったみたい」


 沖合で海蛇が体を海中から飛び出す。蛇の姿になっており、息吹(ブレス)を吐き出す準備を終えている。


「やっちゃってミトゥス」

『心得ましたわ』


 ノエルの言葉に応えるように海蛇からブレスが吐き出される。

 狙いは海蛇自身がつけていない。何もない海中を狙っての攻撃だが、ノエルの感覚はその場所を捉えていた。


 白い……真っ白なブレスが海蛇のブレスの先から発射される。


『やはり何かいましたね』


 二つのブレスが衝突する。

 すると、次第にブレスを放っている相手の姿が明確になる。

 透き通った蒼い海の中に現れた真っ白な体をした体長50メートルはあろう巨大な海月の魔物。


 港にいた悪魔の海月が動きを止める。

 力の全てを本体が放つブレスに集中させているためだ。

巨大蛇VS巨大海月

残念ながら、まだプロローグ段階です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] あれ?「世界」ってダンジョンか室内じゃないと発動出来ないってなかったっけ?土壁で解決した??
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ