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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
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第5話 覚めない眠りの噂

「例の魔物について知っているんですね」

「ええ、簡単になら話を聞きました」

「こちらでも分かっていることは全くないので、内容はほとんど変わらないと思います」


 正体不明、目的不明。

 どのようにすれば騒動が収まるのか分からない状態であるため、今のところは迎撃しか手段がない状態らしい。

 冒険者ギルドとしては航路を利用する船に危険性を訴え、ノスワージにいる冒険者を紹介するぐらいしかできる事がないことを悔しく思っていた。


「その件とは別に異常が起こっていないか、ということですね」

「はい」


 可能なところまで素性を伏せて行動したい。

 詳細まで分からなくとも『聖女』と個人的に交友のある間柄だと知られるだけでも騒がしくなるのは間違いない。


「もし首都へ向かうなら気を付けてください」

「何かあるんですか?」

「はい。数カ月前から首都を中心に眠ったまま起きる事のない人が続出しているんです」


 ただ眠っている。

 ただし、何日経っても起きる気配がない。

 寝ているせいかエネルギーの消費が抑えられ、定期的に水を与えるだけで延命が可能になっているため看護してくれる人がいてくれるだけで今すぐにどうこうなることはない。


 もっとも数カ月も続けば何十人、何百人と眠り続ける人は増える。

 既に個人で看病できる数を超えてしまっているため教会が身柄を預かってくれている。


 原因不明の昏睡。

 しかも、イシュガリア公国の中心であるウィンキアへ近付けば近付くほど被害は多くなっているため、商人たちも首都近辺に立ち寄るのを嫌厭するようになっていた。


 教会が受け入れられる人数も限界が近い。

 どうにかしたい、と思っているらしいが原因すら分かっていないのでは対策のしようがない。

 緘口令が敷かれているため一般には広まっていないが、民衆にまで不安が広がるのは時間の問題だろう。


「もしかして貴族とか偉い人たちが眠ったままになっていますか?」

「そこまでは分かりませんね。なにせ秘匿されていますから」


 俺たちが今いるノスワージはイシュガリア公国の最北端。

 中央で起こっている問題が伝わるまで時間が掛かり、国や教会が本気になれば詳細が届く前に止めてしまうのも難しくない。


「ただ、この国で起こっている二つの問題に対して言えることがあります」


 今までに起こった事のない事態。

 海月の魔物も海にはいたが、どちらかと言えば温厚な魔物だったので無害だとして放置していたぐらいだ。

 首都で眠り続けている人たちも被害者にこれといった共通点がなく、無差別に眠らされているらしい。


「もし、首都へ行くなら気を付けてください。もっとも何に気を付ければいいのすら分かっていない状況ですけどね」

「ありがとうございます」


 お礼を言ってから冒険者ギルドを出て、向かいにある食事処へ入る。

 簡単に昼食の注文を済ませると、食事が運ばれてくるまでの間に話し合いを行うべく顔を近付ける。


「首都近辺で起こっている原因不明の昏睡。これとミシュリナさんは関係していると思うか?」

「まあ、大変そうなのは間違いなさそうね」

「いえ、眠っているだけとはいえ簡単な看病は必要です。それが何百人ともなれば『大変』などという言葉では片付けられません」


 『聖女』として率先して看病に従事していて忙殺されているため連絡しても対応することができずにいる。

 アイラとシルビアの考えはマシな方のパターンだ。


 悪い方に考えた場合は……


「最悪、ミシュリナさんも昏睡している可能性があります」

「むしろそっちの方がありそうだな」


 もう何日も連絡が取れていない。

 さすがに忙しくても多少の時間は取れてもいいはずだ。


「さて、どうするか」


 首都でも問題が発生しているとなると確認した方がいいだろう。

 今後の予定に頭を悩ませていると揚げた魚の肉を挟んだパンとサラダが運ばれてきた。おススメをお願いしてみたところ港町のノスワージらしい料理だった。

 口の中へ運んでみると自家製のソースが使われているらしく、シルビアがすぐに味を盗もうとしていた。


「お!」


 暢気に昼食を楽しんでいると海蛇から連絡が届いた。


『申し訳ありません。見失いました』

「見失った?」


 海中では無類の移動能力を持つ海蛇らしくない。


『かなり沖合まで移動したのですが、まるで煙のように消えてしまいました。周囲には気配もないので本体の所へ一瞬で移動したのでしょう』

「それはおかしい」


 もし、本当に一瞬での帰還が可能なら泳いで移動する必要はない。何かしらの制限があるのかもしれないが、それでも長時間も移動していたのが腑に落ちない。

 イリスが空中に投映したイシュガリア公国の地図を睨み付けていると、何かに気付いたように表情を変える。


「今すぐこっちへ戻す」

『それは構わないのですが……』

「逃げ出したのは海蛇に敵わないと即座に判断したから。そして、逃げる姿を見せることで後を追わせて引き離した」


 ノスワージとは反対方向へ移動させられてしまった。

 現在、北へ何十キロも移動した場所にいる。


「囮の役割をしていた魔物まで戻したのなら、そろそろ起こってもいい……」


 ガラガラガラ!

 何かが崩れ落ちる音が聞こえてくる。


 次いで大勢の悲鳴も聞こえてくる。

 離れた場所にある店にまで聞こえてくるということは、相当派手な壊れ方をして、現場にいる人たちは阿鼻叫喚といった様子だろう。


「ごちそうさま」


 カウンターに銀貨を3枚置いて店を出る。

 すぐさま悲鳴を上げながら街の大通りを港がある方向とは反対へ走る人の姿が見える。

 反対に武器を手にした者たちが港のある方向へ走っている。


『すぐに戻ります』

「いや、ここだとちょっと難しいな」


 崩れ落ちる音は船でも溶かされてしまったのだろう。

 もう港にまで入り込まれている。海蛇のように強い魔物が港で暴れれば、海月の撃退に成功する代わりに港を失ってしまうことになりかねない。

 それではダメだ。


「お前はそっちにいろ」


 沖合からの方が逃げ出した海月の魔物を仕留めるにはちょうどいい。

 港から離れた場所で待機しているよう海蛇に伝える。


「海月の魔物は、もしかしたら俺たちとは関係のない事かもしれない」

「それでも、目の前の状況を無視することなんてできないよ」

「同感。やっちゃうからね」


 ノエルとアイラが港の方へ走り出す。

 何が起こっているのか分かっていない状況で二人だけを向かわせる訳にはいかない。


 慌てて走り出し、目にした港の様子は地獄絵図だ。


「いぎゃっ!?」


 海から飛び出して空中をふよふよと漂う海月の魔物。

 触手の1本が背中に突き刺された男性が絞られたように体が縮んでいき、最期には消えていなくなってしまう。


 何も残らない死。

 そんな殺戮を起こす魔物が港に50体も侵入している。

 逃げる人々を襲い、建物も手当たり次第に溶かして自らの力へと換えていた。

首都とは別に問題が起きています。

が、その前に海月と関わらなければなりません。

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