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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
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第2話 悪魔の海月

 アリスターの東には広大な森があり、そこを抜けると海へ出ることができる。

 そこまでの間を開拓することに成功すれば海路を利用することができるようになり、これまでよりも豊かな生活を送れるようになる。

 だが、今のところは魔物が邪魔をして開拓は進んでいない。

 利用できるようになるのは最低でも次の世代や、その次の世代になるのは間違いない。領主のアリスター家もそのようなつもりで行動している。


 今回の目的地であるイシュガリア公国は、海を越えた先にある島国だ。

 何度も訪れたことのある国で、いつもは空を飛んで向かっているが、グレンヴァルガ帝国にある港から出ている定期船を利用して向かっている。


「それなりに隠蔽するつもりではいるけど、魔力使って空を飛ぶなんて真似したらゼオンたちなら見つけるだろうからな」

「真正面からぶつからないの?」


 アイラとしてはコソコソしているのが気に入らないようだ。


「もしも、あいつらが生きているんだとしたら5年もの間、俺たちから隠し通していたことになる」

「その間で何をしていたのか分からない」


 イリスも俺の考えに同意してくれている。

 未だに正体不明なパーティは、できることなら真正面からの衝突を避けたいところではある。


「見てください。海が綺麗ですよ」

「わっ、大きなおさかな発見」


 シルビアとノエルは久し振りに乗る船に感激したらしく、船から身を乗り出して高速で通り過ぎる海面を覗き込んでいた。

 乗り込んだ船は魔法道具による動力を積んだ大型の船で、費用は嵩んでしまうものの国と国の間を高速で行き来することができる。


「あんまりはしゃぐなよ」

「大丈夫ですよ」


 子供みたいにはしゃぎながら船頭の方へ向かって行く。

 甲板に置かれた椅子に座って空を見上げる。すると、隣にメリッサが座る。


『二人は何も見つけられていないですね』

『そうみたいだな』


 周囲に聞かれないよう念話での会話。

 イシュガリア公国へ向かうにあたって『聖女』であるミシュリナさんに連絡を取ろうと考えた。何か異常が起こっているのだとしたら彼女の協力を求めた方がいいし、最低限の情報ぐらいは伝えておいた方がいい。

 だが、連絡が繋がることはなかった。


『たしか1カ月ぐらい前に連絡した時は問題なかったんだよな』

『はい。普通に会話することができました』


 この1カ月の間に何かがあった可能性を捨て切れない。


『グレンヴァルガ帝国でも情報収集をしたけど、妙な騒ぎは起こっていないらしいし、まずは向こうに着いてみないと何も分からないな』

『そうですね。二人が何か気配を捉えてくれると助かるのですけどね』


 はしゃいでいるように見えて、常に警戒している二人。

 何かしら異常があるようなら二人から連絡がある。


「ねえ、何かいるよ」

「……海月?」


 船の向かう先に大量の海月が浮いているのが見える。


「なっ……! 急いで進路を変えろ!」


 船長の怒号が甲板にまで聞こえてくる。


「見張りは何をしていたんだ!?」

「無茶を言わないでください。相手は、ほとんど透明なんですよ。この距離で気付く方が異常なんですよ」


 見張りの顔がシルビアとノエルに向けられる。

 二人が気付くまで見張りは気付いていなかった。だが、二人に指摘されたおかげで気付くことができた。


 船には監視用の使い魔を放っている。

 どこかで異常が起こったとしても瞬時に気付くことができるようにしていた。


「とにかく急いでここを離れるぞ!」

「……いえ、遅いみたいです」

「なに!?」


 伝声管を使って行われるやり取りも聞き取ることができている。


「向こうの方がこっちに気が付いたみたいで、真っ直ぐこっちへ向かって来ています」

「チッ、水中なら奴らの方が速い……」


 船長は逃げ切ることを諦めて船員に戦闘用意の指示を出していた。

 船の側面には大砲が積まれており、それで海面を泳いでいる海月を吹き飛ばし、近付いて来たところを魔法や弓で攻めるつもりでいる。

 ただし、それでは倒し切れないことを船長は理解している。


「いいか? 追い返すだけでいい。とにかく奴らを警戒させて船には絶対に近付けさせるんじゃない」

『了解!』


 時間稼ぎが目的みたいだ。


「おい、何だっていうんだ……」

「いきなり凄い速度が出たんだけど……」


 船が進路を変えて、速度を上げれば他の乗客も異常に気付く。

 手の空いていた船員が宥めようとしているみたいだけど、落ち着く様子はない。


「まさか『悪魔』が出たんじゃないだろうな」

「……! とにかく落ち着いて下さい」


 船員が乗客の口にした『悪魔』という言葉に反応してしまった。


「メリッサ、イリス」

「悪魔系の魔物でしょうか」

「ま、悪魔の詳細は分からないけど、間違いなく海月の事だと思う」


 海月の事を悪魔だと言う乗客。


 その時、大砲が轟音を響かせる。

 近付いて来る海月に向かって大砲が放たれた。


「化け物共め……」


 船長が忌々し気に海面を睨み付ける。

 砲弾の着弾した付近には海面から顔を出すように浮かんだ海月がいた。


「ケヒャ、ケヒャヒャヒャアアア!」


 顔のよう、ではない。

 海面から飛び出した部分の下半分が割れ、気味の悪い笑い声がけたたましく聞こえてくる。


「ひぃ……」

「きゃあ!」


 その笑い声は人を不快どころか恐怖に貶めるだけの力がある。

 笑い声を耳にしてしまった乗客が蹲る。船員も本当なら身を投げ出してしまいたいほどの恐怖に襲われているが、守るべき乗客を前にして踏み止まっている。


「そろそろやる?」

「いや、待て」


 血気盛んに攻撃しようとしたアイラを止める。

 人々を苦しめる笑い声だが、俺たちには何の被害も与えられずにいた。


「できる事ならもっと情報が欲しいところなんだけど……」


 海月の様子を観察していると甲板に冒険者が出てくる。

 気付けば少し前まで多くの人がいた甲板からは人がいなくなっていた。


「あの悪魔を退治すれば俺たちも一躍有名人だ」


 弓使いの矢が近付いていた海月の1体に突き刺さる。


「よしっ!」


 貫かれた海月の体が溶けるように消えてしまう。

 後には濁った白い液体が浮いていた。


「おおっ、倒したか」


 海月が倒される瞬間を見ていた船長が歓喜の声を上げる。


「大金は必要だったが、護衛に冒険者を雇ったのは正解だったみたいだな」


 脅威が減ったことに喜ぶ船長。

 だが、冒険者の方は顔を歪ませていた。


「奴らから戦利品が得られればよかったんだが、何も残さないからな」


 妙な液体が残るだけで、何も残さない。

 似たような状況に覚えがあった。


「どう思う?」

「どこかに本体がいて、アレは呪い――霊魂で作られた傀儡にすぎない」

「だよな」


 イリスの推測は間違っていない。

 そうしているうちに海月が船の間近まで接近してしまう。

先へ進むとシャボン玉が出てくるので、そこから何故か悪魔の形が『海月』になってしまいました。

プロットを読んでも何故海月にしたのか分からない。

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― 新着の感想 ―
[一言]  まあ、魔物っぽいからいいのでは。悪魔っぽさならタコだろうけれど、もう食べ方広まっただろうしね。
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