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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
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第1話 呪いの行方

 パレントから帰って5日。


「なにしてるの?」


 庭で魔法を使って作業をしているとシエラが顔を出して来た。

 長女であるシエラが興味を示せば次第に下の子たちも興味を示すようになる。気付けば屋敷にいる子供たちが全員集まっていた。

 しかも、今はエルマーたちも滞在中だ。今日は休養日ということで屋敷にいたため子供たちの集まる場所に自然と呼ばれた。


「おはか?」

「そう。お母さんの家族のお墓よ」


 アイラと一緒に屋敷の庭に設置した墓の前に立つ。

 屋敷の庭には他にも墓がある。そのため子供たちは墓がどういう物なのか知っており、見慣れていた。


「……………」


 増えた墓を前にしてシエラを始めとした上の子供たちが黙祷している。

 下の子たちも目を瞑っているが、意味をよく分からずに姉や兄の真似をしているだけだ。


「ボール遊びしよう」


 シエラがボールを手にしながら声を掛ければ弟妹たちが賛同する。

 意味あり気にこちらを見てから離れて行くシエラ。墓の前では大人しくしておいた方がいいと分かっているが、それ以上に楽しい雰囲気に包ませた方がいいと理解している。

 孫が楽しくしている姿を見て安堵してくれることを願うばかりだ。


「それにしても土ごと持って来たんですか?」

「仕方ないだろ。亡くなってから10年以上が経過しているんだから、掘り起こした遺体が無事なはずがないだろ」


 エルマーの質問に応える。

 墓を掘り起こすだけでなく、土と一緒に墓まで持っていく必要があったため時間が掛かってしまった。

 だが、こうして無事に持って来られてよかった。


「会議を始めてもよろしいですか?」

「ああ」

「呪いに動きがありました」


 メリッサの調査に進展があった。



 ☆ ☆ ☆



 子供たちは外で遊ばせ、リビングに10人で集まる。

 一応、エルマーたち4人にも報告を聞くだけなら権利があるものの関わらせるつもりはない。


「まず、ルーデンスへ流れた呪いがどのようになったか、もう一度説明させていただきます」


 穀倉地帯を抱えるルーデンス。

 豊かな大地、安定した恵まれた気候のおかげで作物が育ちやすい。そんなことができていたのも、全ては土地が抱える問題を余所に押し付けていたからだった。

 それらが一度に返って来たことでルーデンスは農業に適さない土地へ一瞬で様変わりしてしまった。

 そこに住む人、統治する領主は原因と全く関係ないが、これまで恩恵を受けていたのだから罰を受けているようなものだ。


「途中までは浸食するように広がっていった呪いですが、街を中心に周囲を覆い尽くしたところで地脈に吸い込まれていきました」


 消えていった呪いは全体の8割ほど。

 メリッサは自身の【魔力感知】によって呪いがどこへ向かうのかを必死に調べていた。


「あの……」

「はい、ジリー」

「ルーデンスは?」

「あまり気分のいい話ではありませんよ」


 作物が一気に死滅したことによって空気まで淀んでしまった。

 今は街へ近付くのも危険な状態で、住民の一部は必死に作物を処分する作業に従事している。

 そして、住民の大部分が街からの避難を開始していた。


「少々、私の予想よりも被害の規模が大きくなっています。すぐにでもパレントを非難する声明が出されると思っていましたが、今はそんなことをしている余裕すらないようです」


 作物を目当てに多くの行商も訪れていた。

 だが、近付くだけで危険な街に商人が寄り付くはずがなく、浄化に何年もの時間が必要なことが予想されているため、そう遠くない内に死の街となるのは予想できている。

 沈むことが確定している船に乗り続ける必要はない。


 ルーデンスを見限った人々が街を飛び出していた。

 今も街に残って作業に従事しているのは昔から住んでいて土地に愛着がある者や町に根差した権力者たちだ。

 どちらも街の外では生きていくことができない。


「これが貴女たちの選択です」

「でも、わたしたちは迷宮をどうにかしたかっただけで……」

「あそこまで強力になった呪いを浄化するなど不可能です。そして、救う為の方法が『跳ね返す』であると知りながら実行したはずです」


 救いたい一心でスキルを使用した。

 その結果を具体的に予想することまでできていなかった。


「いえ、その件を責めるつもりはありません。私たちだって誰一人として予想していなかったのですから」


 俺たちは最も楽な選択肢を選んでいた。

 パレント迷宮を消滅させていた場合には、パレントの街が今よりも貧しくなってしまうだろうが亡びるようなことはなかった。

 対してエルマーの選択によってルーデンスの街は完全に亡び、ルーデンスで収穫される作物に助けられていた周辺の街も困窮することとなる。

 被害規模としては大きくなっている。


「大人になり、『主』となったのなら守りたい「もの」を定めなさい。そして、貴方たちの選択は、定められたものから逃れられなくなりました」


 もう迷宮を最優先に考える以外の選択肢がなくなった。


「もし……もし、呪いが悪用されているなら……」


 言い掛けたエルマーに指を向けてメリッサが止める。


「ここからは私たちの仕事です。貴方たちは迷宮の管理でもしていなさい」

「はい……」


 4人を関わらせるつもりはない。


 呪いを掠め取る。

 そんな事ができる人物は限られており、もしも本当にゼオンだった場合には無駄死にさせる可能性の方が高い。


「で、掠め取られた呪いはどこへ行ったんだ?」


 この数日間、地脈に乗ってあちこちを移動していた呪い。


「こちらの方へ向かっていた呪いですが、急に方向を変えて東へ向かいました」

「東――まさか海を越えたのか!?」


 俺の問いにメリッサが頷く。

 ここまで呪いの気配を覚えて【魔力感知】で遠距離から位置を捉えていたが、海では打ち付け合う波によって魔力の反応が攪拌されてしまう。

 近距離からなら捉えることはできるが、遠距離からでは正確な位置を捉えることができなくなってしまう。


「ですが、ご安心ください。直前の様子からして真っ直ぐ進んだのは間違いありません」


 メリッサが魔法を使用すると空中に世界地図が映し出される。

 パレントを出発した呪いが光の点で表示され、円を描くような動きをして、南へ向かってから進行方向を東へ変える。


「イシュガリア公国か」

「はい。再び『聖女』の力を借りる時がきたのかもしれません」

久し振りのイシュガリア公国ですが、後半まで『聖女』の出番はありません。

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