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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第20話 魔物部屋

 遺跡探索3日目。


 昨日の夜、イリスティアパーティを歓待する為に用意した夕食の残りを朝食にして食べながら遺跡に入って行く冒険者たちの姿を眺めていた。

 こうして冒険者たちの姿を見ているだけでも勉強になる。


 多くの冒険者が大きな荷物を持っていた。

 昨日までは大きめのリュックを背負っているだけだったことを考えると3日目の今日は泊まり込むつもりらしい。


 それと見ていて気付いたのだが、イリスティアから地図を購入したルフランの姿が見えない。わざわざ地図まで購入しているのだから遺跡に挑んでいないはずがない。おそらくルフランたちだけは、昨日の内から泊まり込んで遺跡に挑んでいるのだろう。


 さて、俺たちの方も朝食はこのぐらいにして遺跡へ挑むことにしよう。



 ☆ ☆ ☆



 1階、2階の攻略は既に地図が完成されていることもあって簡単に済ませることができた。


 そして、3階に上がると――


「くそっ!」

「なんだよ、この数は……!」

「一体一体は強くないんだが……」

「とにかく撤退しましょう」


 前衛の男3人と魔法使いの女が30メートルほど離れた場所でゾンビに襲われていた。

 ゾンビは、それほど強くないので遺跡探索を依頼されるほど強い冒険者なら苦労することなく倒すことができる。


 問題は、襲ってきている数だ。

 冒険者たちがいる場所は真っ直ぐ続いている廊下で、廊下を埋め尽くすように大量のゾンビが雪崩れ込んでいた。


「ざっと見たところ50体ぐらいか」

「既に何体かは倒しているでしょうから最初はもっと多い数に襲われていたのではないですか?」


 メリッサの言いたいことは分かる。

 ゾンビの群れから逃げている冒険者の装備は所々ボロボロになっている。既に消耗してしまっていることは確実だ。


 助けてあげるのは簡単だ。

 ここで気にしなければいけないのは、他の冒険者が魔物と戦っている最中ということだ。


 迷宮でも同じだが冒険者には守らなければならないマナーというものが存在している。

 その1つとして、他の冒険者が戦っている魔物を奪ってはならないというものがある。

 ここで人助けとして加勢し、後から獲物を奪われたと文句を言われてしまうわけにはいかない。


 ま、同じアリスターから来た冒険者だから見捨てる選択は最初からない。


「助けは必要ですか?」

「……! 頼む、助けてくれ!」


 ゾンビから逃げることに必死で俺たちがいることに気付かなかったのか声を掛けたことでようやく気付いた冒険者が俺たちに助けを求める。


 これで言質はもらった。


「メリッサ」

「はい」


 冒険者を追っている魔物は50体近い数のゾンビ。

 確実に仕留める為には大火力の魔法で殲滅するのが一番だ。


「フレアトルネード」

「クリアサンクチュアリ」


 冒険者たちが俺たちの後ろまで逃げるのを待ってゾンビの大群に向かって魔法を放つ。


 俺の手からは、炎の竜巻が吹き荒れゾンビの群れを呑み込む。

 そこへメリッサの発動させたアンデッドの魂を浄化させる光属性の広域魔法が廊下全体へと及び、ゾンビが跡形もなく消失する。


 ――コロンコロン。


 残された物はゾンビの体内にあった魔石だけ。

 迷宮に出現させることのできるゾンビの魔石は、個体の強さがそれほど強く設定できないため魔石の質も落ちてしまう。だが、遺跡で出現するゾンビは迷宮と同等もしくは弱いのに魔石の質は良さそうに見える。

 それに一気に殲滅させてしまったため50個も出てしまった。


「ありがとう」


 助けた冒険者が近付いてくる。

 一度、酒場で話したことがあるのだが酒を飲んでいため記憶はそれほど確かではないので名前を思い出せない。


「いえ、同じ街で活動する冒険者なんですからこれぐらいは当然です」

「ははっ、これが魔物1000体をたった1人で倒した奴の実力か」


 にこやかにお礼を言いながら床に転がる魔石を見ている。

 その瞳に宿る感情は、嫉妬や羨望。


「ルールに従って魔石は俺たちの物でいいんですよね」

「ああ、助けを求めて応えてくれたのはお前たちだ。好きにするといいさ」

「回収はわたしたちの方でしておきますね」

「頼む」


 戦闘で役に立つことができなかったせいかシルビアが魔石を回収する為に動き、アイラとメリッサは他に魔物が現れないか警戒している。

 冒険者たちが床に転がった魔石が次々とどこかに消える光景を見て驚いている。収納リングを持っている冒険者は本当に一流だから虚空に消える光景が珍しいのだろう。


「それよりも遺跡の3階にはあんなに大量の魔物が現れることがあるんですね」

「そういうわけじゃない。どうやら魔物部屋が多いらしい」

「魔物部屋……」


 厄介な部屋が存在する。

 魔物部屋は、広い部屋の中へ入った瞬間に大量の魔物が出現する部屋のことだ。迷宮にもある部屋なので迷宮主である俺は、その効果についてもしっかりと知っている。

 ただ、迷宮主である俺では『迷宮適応』があるせいで罠である魔物部屋が発動してくれないので遭遇したことは1度もない。


 そう、聞くと宝箱のあった部屋と同じで罠が仕掛けられていると分かっていても開けたくなってしまう。


「みなさんは、これからどうしますか?」

「俺たちは、もう帰ろうと思う」


 おそらく今日の探索を終えるだけでなく遺跡の探索そのものを終えるつもりだ。


「魔物部屋に入る数十分前にアリスターでは見たことのない凄腕の冒険者が奥へと進んで行くのを見た。それに噂だと昨日から泊まり込みで探索をしている奴だっているらしい」


 イリスティアやルフランのことだな。


「遺跡探索は最奥にいるボスを倒して財宝を得たら、それで終了だ。早ければ今日中。遅くても明日には探索は終わっているはずだ」


 今日の探索を切り上げると明日の探索はできないかもしれない。

 とはいえ、探索を切り上げようとしている彼らを止めることなどできない。


「帰りは気を付けて下さい。魔物はいないかもしれませんけど、見落としがないとは限らないんですから」

「大丈夫だ。これでもベテランの冒険者なんだからベースに帰るぐらいなら問題ない」


 彼らの装備品はゾンビに追われ続けたせいでボロボロになっていた。

 これ以上の探索は命に係わる可能性がある。


「俺たちも最奥を目指して進んでみます」

「気を付けろよ……って、お前ぐらいな奴には不要なセリフかもしれないな」


 手を振りながら冒険者たちが階段を下りて行く。


「ご主人様……」


 魔石の回収を終えたシルビアが不安そうに見上げてくる。

 俺がこれから何をしようとしているのか分かっているのだろう。


「さて、魔物部屋に突入してみようか」

「本当に開けるんですか!?」


 魔物部屋は扉を開けなければ作動しない。

 そのため魔物部屋があると分かっている場合には扉に手を触れないようにして立ち去るのが普通だ。

 そのセオリーを自分から敢えて壊す。


「というわけで開けてみようか」


 おあつらえ向きに30メートルほど歩いた場所に扉があった。

 ガチャ、とドアを開けると……部屋の中心で大きな魔法陣が光を放ち始める。


「うわっ!」


 魔法陣から放たれた光が部屋を満たす。

 咄嗟に手で目を覆って視力が潰されないようにするが、目が眩んでしまう。


 10秒ほどすると光が魔法陣へと吸い込まれるように消え、部屋の中には光の代わりにカタカタと骨の音を鳴らす魔物――スケルトンがいた。

 迷宮で見るスケルトンよりも骨が太く強そうに見えるが、俺たちの強さからすれば微々たる差でしかない。


「よしっ」


 思わず部屋の中にいるスケルトンを見て喜びから声を上げてしまった。

 だって、目の前には100体近い数のスケルトンがいるんだ。


「というわけで経験値稼ぎにスケルトンの相手をします。メリッサは広域魔法を禁止。単純な魔法でスケルトンを潰して行くこと」

「はい」

「ついでだから競争でもしてみよう。誰が最も多くスケルトンを倒すことができるのか」

「分かりました」

「いいわね」


 シルビアとアイラは反対しない。

 しかし、殲滅を封じられたメリッサは不満そうだ。


「いえ、いいですけどね」

「優勝者には俺に叶えられる範囲で願い事を叶えてあげるから」


 もちろん俺の方でもステータスを半分程度まで抑えた状態で参加させてもらう。

 俺が願いを叶えると聞いてシルビアたちはやる気を出して狩りに勤しんだ。


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