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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第19話 緊張の冒険・休憩

 山を下りる最中にある洞窟内。

 奥の方にある広い空間の中央に魔法道具のランタンが置かれ、7人で囲んで座ると休憩を取る。


「ちょうどいい場所があって良かったな」

「これも迷宮の仕組みですよね」

「へぇ」


 素直に感心させられた。

 迷宮主であることは冒険者の間で噂になっているためエルマーたちの耳にも入っている。それでも迷宮がどのような仕組みになっているのか一般公開していないのと同様に関係者以外には誰にも伝えていない。


 ただし、アリスターを出て色々な街を巡った。中にはパレントのように迷宮を抱えている街もあるはずだ。

 そういった街を巡って結論を得ていてもおかしくない。


「都合のいい場所に休憩できる場所があれば休みます。洞窟なんて鳥型の魔物が多く出てくる高山フィールドにはちょうどいい休憩場所じゃないですか」


 鳥型の魔物は洞窟のように狭い場所へは侵入してこない。

 山には他にも獣型の魔物もいるが、俊敏な動きによって敵を翻弄することを得意とした小型の魔物がほとんどなので狭い場所では長所を活かすことができない。

 冒険者には打って付けの休憩場所に見える。


「僕たちは助かるからいいんですけどね」

「結局3回も戦かったからな」


 警戒していても空からの監視を全て防ぐのは不可能だった。

 襲撃されれば監視している魔物を見つけて仕留め、魔剣を装備した魔物から逃げるか倒す。

 どうしても避けることのできなかった戦闘があれから2度あった。


「でも、これだけの距離を移動にしては十分じゃない」

「そうそう。わたしたちなら、もっと戦っていた気がするし」


 慰めようとしているのだろうけど、ノエルの言葉は俺たちの力不足を自分たちで言っているようなものだ。

 つい反論したくなってしまう。


「でも、すぐに倒しちゃうんでしょ」

「私たちなんて空からの奇襲に苦戦させられるのに」

「できれば遠距離への攻撃手段をもっと増やしたいところなんだけど、高ランクの魔物を倒せるような方法なんて簡単に手に入るようなものじゃないしね」


 魔法か弓矢ということになるんだろうが、魔物が強くなると防御力が高くなるため簡単には仕留められなくなる。


「ま、お前たちはお前たちなりの方法でやり方を見つければいいさ」


 基本的な事は教えてあげた。

 それをどのように応用させるかは彼らの選択次第だ。


「たしかに……マルスさんたちから色々と教わることができてありがたく思えています」


 エルマーの言葉に3人も頷いている。


「外の世界に出て、実際の冒険者がどのような実力を持っているのか知ることができて改めて実感することができました」


 成人する頃には戦闘能力だけなら一流冒険者並の実力を持っていた。

 だが、実際に冒険するならそれだけでは足りない。


「俺たちのやり方は全く参考にならないからな。だから、外の世界で実際に学ばせたんだ」


 その効果はあったと感じている。


「ボスと戦えるだけの能力、特殊な環境にいる魔物への対応、なにより自由を求めて貴族からの圧力にも屈しない心」


 力をつければつけるほど自分のものにしようと思う者が現れる。

 顕著なのが権力を持つ貴族で、圧力に屈することのない力を身に付ける必要がある。その過程で貴族や有力者と手を結ぶことがあったとしても屈してしまうようなことがあってはならない。


 その為なら利用できるものは利用する。

 そのように昔から教え込んでいたため利用された時には、屈辱などは感じることなく喜ばしく思っていた。


「実践的な力ならお前たちの方が持っているんじゃないか」


 少なくとも俺たちは洞窟を照らす魔法道具など持っていない。

 いざ洞窟で休憩することになろうともメリッサが魔法で生み出した光球に頼るか、道具箱(アイテムボックス)を漁れば役立つ物が見つかるからだ。


 だが、エルマーたちはこのような事態を想定して準備していた。


「たしかにそうかもしれません。でも、今回は一緒に冒険することができると知ってマルスさんたちのやり方を知ることで参考にさせてもらおうと思ったんです」

「俺たちのやり方なんて参考にならないぞ」

「はい。全く参考になりませんでした」


 エルマーの言い方に妙な違和感を覚える。


「マルスさんたちならもっと先へ進めていますよね」


 今は地下17階。


「今日1日でけっこう進んだだろ」


 普通に考えれば十分な成果だ。


「シルビアさんはどこまで進みましたか?」

「気付いていたのか」


 シルビアには別件を頼んでいる事を伝えたものの、先へ進んでもらっていることまでは伝えていない。


「さあ、何のことやら」

「教えるつもりがないから言いましょう。少し前に迷宮の最深部まで到達しましたね」

「……!?」


 たしかにシルビアは既に最下層まで到達している。

 おかげで迷宮の地図が全て手に入ったので今は屋敷で休んでもらっている。

 だが、その事をエルマーが知っているのはおかしい。


「報告を盗み聞きなんてできないはずなんだけどな」


 報告は受けていたものの全て念話で行われていた。


「できますよ」


 エルマーが懐から小さな宝石を取り出した。


「魔法道具か」

「こんな小っちゃいのが?」


 アイラが言うように指に乗る程度の大きさしかない。


「ある錬金術師が開発した魔法道具で、念話のように魔力を介した会話を盗み聞くことができます」


 それは盗聴用の魔法道具だった。


「ただし盗み聞く為には話している二者の間にいる必要があります」


 魔法道具による通信は、対になる魔法道具との間に魔力による実体のないラインが繋がれることによって可能になる。

 盗聴用の魔法道具は、そのラインの上に立つことで盗聴を可能にする。


「それが俺を後ろに立たせ続けた最大の理由か」


 観察するためエルマーの後ろにいた。

 その状態はエルマーを自然にシルビアとの間に立たせることとなった。


「ええ、シルビアさんの性格からして細かく報告するのは分かっていました。彼女に先の様子を見てもらうことで情報を得ようと考えたんです」


 エルマーの方が一枚上手だった。


「だけど、シルビアが最下層まで行って情報が得られなくなったから正直に告白する気になったんだな」

「はい。騙すことはしてもあなたたちには誠実でありたいと考えていますから」


 真面目な性格が災いしていた。

 最後にはきちんと告白するつもりでいたようだ。


「ですが、全く役に立ちませんでした」


 アルバたちの姿は確認したものの気付かれることなく通り抜けた。

 ボスとは2秒で戦闘が終わってしまった。

 高山フィールドも飛び降りたため、地下20階へ到達したことの報告のみがされたため参考にならない。


 報告を聞いても参考にならなかった。


「だから言っただろ。俺たちの方法は参考にならないんだよ」


 迷宮主になったことで得られた高いステータスと特殊なスキルによるごり押し。

 それが俺たちのやり方であるためエルマーたちには同じ方法で冒険をすることができない。


「ですが、一つだけ有益な情報がありました」


 地下31階以降の存在。


「この方法だけが謎でしたが、僕たちが調べるまでもなく知ることができました」


 以前と同じように地下30階に唯一ある転移魔法陣を利用することで地下31階への行けることが知られてしまった。


「昔から多くの冒険者が探していました。それでも見つからないから地下30階が最下層だと誰もが思っていましたけど、絶対に見つかっていない入口があると思っていました」


 人の思い込みを利用した隠し方。

 先へ進んでいるホヴァとベクターは地下30階で足止めを喰らうはずだ。


「本当はどうやって謎を解くのか見たかったんだけどな」

「利用できるものは何でも利用する――そのように教えてくれたのはマルスさんですよ」


 ランタンの光を消して立ち上がる。


「先へ進みましょう。今日中には地下20階にいるボスを倒しておきたいですからね」


パレント迷宮最大の謎の答えを知っている者から得る。

これも謎解きなんて真面目にやらずに力任せに動くマルスらしいやり方と言えるでしょう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 遠距離武器といえば、銃! アイラも銃と剣の二刀流になると思ってました
[一言] ちょっと養い子チームを強くし過ぎかなぁ…… これが5年後、10年後って言うなら解るけど。
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