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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第18話 緊張の冒険・対空

「なかなかの絶景ですね」


 目の前に広がる光景を目にしてエルマーが声に出した。

 他の3人も似たような感想を抱いたみたいで山の上から見える景色に心を奪われていた。


「ここが高山フィールドだ」


 パレント迷宮の地下11階から20階までは山を駆け下りることになる。

 広さはそれほどでもない。冒険者なら体力があるため余裕を持って下ることができる。


 ここには山にしか自生しない植物が多量にある。パレントの周辺は平原であるため迷宮に頼らなければ手に入ることのできない物を手に入れることができる。

 外の状況もあって地下11階という上層にもかかわらず高山フィールドが設置されたのだろう。


「マルスさんたちはどうやって下りたんですか?」

「調べたんじゃないのか?」

「はい。一般的には頂上にある道に沿って下りて行くのがベストみたいです。途中に脇道なんかがありますけど、入った先には果物や木の実の生る場所があるみたいなんです」


 そうやって誘き寄せることで魔力を稼ぐ。

 以前に訪れた際は先へ進むことを優先させていたため見ることはなかった。


「俺たちの方法は参考にならないぞ」

「では、何か特別な方法があるのですね」

「……」


 墓穴を掘ってしまったようなので無言になりながら崖の縁へ向かう。


「ここから飛び降りた」

「え?」


 それは正気とは思えない手段だった。

 崖から飛び下りるなど普通なら死んでいる。空を飛ぶことができる、着地をどうにかすることができる俺たちだからこそできた手段。

 エルマーたちにできるかどうか知らないが、普通は絶対にやらない手段だ。


「だから参考にならないって言っただろ」

「そのようですね。僕たちがやったら自殺行為になります」


 崖から下を覗き込んで諦めた。

 どうやら一度はできるかどうか確かめたらしい。


「お、普通に鳥の魔物はいるんだな」


 遠くの空に鳥が飛んでいるのが見える。


「どこですか……あっちですね!」


 ヒュッ!

 収納リングから取り出したナイフを投げる。


「ここから投げたって届くわけないだろ」


 鳥がいるのは100メートル近く先。

 普通のナイフが届く距離ではない。


「……ん!?」

「普通のナイフではないですよ」


 速度を落とすことなく飛ぶナイフ。

 あっという間に遠くにいた鳥に胸に突き刺さると仕留めてしまう。


「遠くへ飛ばすことを目的にした魔法道具です。欠点としては真っ直ぐ飛ばすことしかできないのと回収用の魔法道具が必要になることですね」


 さらに手を引くとナイフが引き寄せられて鳥も一緒にエルマーの手元へとやって来る。

 魔剣を装備した魔物は迷宮に回収されてしまうが、普通の魔物はそういうこともなく回収することができる。


「倒した魔物はきちんと持ち帰るべきですからね」


 アリスターを出る時には持っていなかった収納リングもしっかりと手に入れているので軽装でも持ち帰るのに苦労しない。

 仕留めたのは一羽の鷹。ただし、目が水晶のようになっている魔物の鷹だ。


「この鷹は感応した他の鷹と視界を共有することができます。僕たちの位置は知られたはずですから、すぐに移動するべきです」


 4人が一斉に駆け出して山を下りて行く。

 しばらくすると高い木が左右に並ぶようになる。


「いったい、どうしたんだよ」


 先頭を走るエルマーと並走する。

 自分は全力で走っているのに余裕を持って並走することができる俺を見て呆れている。


「本当に何も調べていないんですね」


 並走できることもそうだが、事前に情報を集めていなかったことに対しても呆れていた。


「今の迷宮は魔剣が大量に出てくるようになっています」

「らしいな」

「だったら、この高山フィールドにも魔剣を手にした者が現れるはずでしょう」


 急に影が差す。

 眩い太陽のある空を見上げると人影が3つ見えた。


「いや、人じゃないな」


 人の体をしているものの背中に翼を生やし、頭は鷹そのもの。上半身は裸身を晒しているものの下半身と腕は茶色の羽毛に覆われている。そして、右手には魔剣がある。


「報告によればホヴァさんは逃げるしかなかったようです」


 戦闘を避け、遭遇してしまったとしても逃走に徹することで階層を突破した。

 幸いにして山の奥へ入れば鳥には向かない場所になっているため迷宮での活動に慣れているホヴァには難しくなかった。


「キィエエエェェェ!」


 獲物を見つけた鷹騎士(ホークナイト)の1体が突っ込んで来る。

 受け止めるべく盾を手にしたジェムが前に出る。


「なっ!?」


 しかし、降下するホークナイトの姿が3つに増える。


「分身能力か」


 増えたホークナイトに実体があるのかどうかで対応が変わる。


「どいて」


 後ろから聞こえた声にジェムが頭を下げる。


「うおっ!」


 頭上を通り過ぎていく3本の光が2体のホークナイトを撃ち抜き、1体が魔剣で防御する。

 攻撃され、魔剣を防御に使用したことで分身の姿が霞む。


「真ん中が本体」

「本物が分かれば問題ない!」


 体当たりするように突っ込んで来たホークナイトへ盾を押し付ける。

 胸を強打されて地面に叩き付けられる。上から押さえ付けられたホークナイトがジタバタ暴れているものの次第に力が弱くなっていく。


「見つかってしまった以上は戦うしかない」

「俺はそっちの方が好きだけどな」

「好き嫌いの問題じゃない。素材の回収ができないんだから戦う意味がないんだ」


 ホークナイトを押さえ付けているジェムに向かって風の斬撃が放たれる。

 剣を振ることで風の斬撃を発生させることができる魔剣。

 さらにはもう1体が剣先から放った光の矢も迫っている。


「しかも相手は空にいる」


 エルマーの光り輝く剣が光の矢を打ち払い、風を霧散させてしまう。


「上から狙い放題の相手なんて厄介でしょ」

「それでも逃げ回るのは性に合わない」

「そう言うんならさっさと仕留めて」

「意外としぶといんだよ」


 盾で押さえ付けられてもまだ生きているらしく暴れていた。


「敵は仲間を助けようと必死になっている。押さえ付けているジェムが狙われることになるよ」

「じゃあ、仕留めてくれよ」

「そんな暇があるとでも?」


 エルマー一人で上空から浴びせられる攻撃を凌いでいる。

 接近し過ぎているためジリーの魔法も効果的ではない。


「おい、ディアは?」

「彼女なら上」

「上?」


 疑問に思うジェムが手から力を少しだけ抜いた直後、風の斬撃が止んで鷹の頭が地面に落ちてくる。


「おお、いつの間にか使えるようになったんだな」


 空にいるホークナイトの方を見れば、ディアが後ろに回り込んでいた。


 【飛連脚】。空中を蹴ることができるようになるスキルで、駆け抜ければ疑似的に飛ぶことも可能になる。

 シルビアが使用することができるスキルで、機動力向上の為にも教わっていたがアリスターを出る前には使うことができなかったはずだ。


「残念ながら僕たちは空中を移動する術を持ちませんから。今のように空からの攻撃に対処する術が必要だったんですよ」


 パーティを思って必死に習得したスキル。

 残った最後のホークナイトが剣を突き出す。光の矢を放つ為には魔剣を突き出す必要がある。

 しかし、至近距離からの突きを見切ったディアに回避されて逆に無防備な状態で懐へ飛び込まれてしまう。


「キィ……」


 斬り刻まれたホークナイトの死体が落ちてくる。

 だが、戦闘が終わると同時に3体のホークナイトが消えてしまう。


「こいつも死んでいたのか」

「それよりも急いで移動しましょう。僕たちなら空から狙われても対処はできますけど、得られる物が全くありません。こんな戦闘をするだけ無意味です」

「わかっているよ」


 ジェムも逃げたくはないが、戦闘を避けることには賛成だ。

 あくまでも敵に背中を見せたくない。


「――対空能力も問題ない。順調にいけば、今日中には地下20階までは行けそうだな」


パーティの対空能力は、ジリーの魔法かディアが近付いてスパッとやって終わらせる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 1巻買って面白かったので、ここまで一気に読ませてもらいました。やっと追いついた。。。
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