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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第16話 緊張の冒険・威信

 血に塗れた安全地帯(セーフエリア)

 あちこちに斬られて、あるいは焼け焦がれた死体が転がっている。


「ひぃ……!」


 今もジェムの剣によって11人目の男が胸を貫かれて倒れた。

 最後に残ったのはアルバ。


「ど、どうなっているんだ……!? こいつらは我が家で戦闘教練を受けた兵士だ!! それが……」


 貴族の教練を受けた者ともなれば、一流を名乗るには十分な実力を身に付けている。

 だが、アルバを残して全員が倒された。

 対してエルマーたち4人は返り血を浴びているものの傷を負ってすらいない。


 人数差を覆してしまえるほどの圧倒的な実力差。


「お前たちはCランク冒険者だろう! 倒されたこいつらは、お前たちよりも高いランクだ! 私に至ってはAランクだ。なのに、どうして……」


 自分以外がいなくなったことでエルマー、ジェム、ディアの3人から剣を抜けられていることに気付いて言葉を詰まらせてしまう。

 後ろにはジリーがいるものの既に自分の出番は終わったと判断して杖を腰に差している。

 その光景がアルバを苛立たせている。


「簡単な話ですよ。ランクなんていうのは指標の一つでしかないからです」

「どういう……」

「俺たちは、修行の為にあちこちを転々としているからな」

「だからギルドマスターと仲良くなる機会がないの」


 Bランク冒険者になる条件は、拠点にしている冒険者ギルドのギルドマスターから認められること。

 そして複数のギルドマスターから認められることでAランク冒険者になれる。


 拠点を定めずに活動していたエルマーたちではギルドマスターに認められる機会がなかった。

 それでも、それまでの功績があったためCランクまでは順調にランクを上げることができていた。


「では、実力はAランク以上あるとでも言うつもりか!?」

「屋敷にいる間はそれほど気にしたことがなかったですが、外に出て自分たちがどれだけ強いのか実感することができました」


 幼い頃から何年も鍛えてあげたのだから弱いはずがない。

 ただし、俺たちの予想以上に強くなっていた。


「あの人数差だったから怪我ぐらいはすると思っていたんだけどな」

「掠りすらしていなかったわよ」

「単純な強さよりも考えて戦っていたね」


 アイラとノエルも4人の強さに感心している。

 さすがに誰かが窮地に陥れば助けるつもりでいたのだが、俺たちの出番は全くなかった。


「さて、このような行動に出たのですから覚悟はできていますよね」

「ま、待ってくれ……!! こっちは危害を加えるつもりはなかったんだ」

「……思いっ切り殺傷能力のある武器で攻撃してきましたよ」


 先端の尖った剣や槍で攻撃されている。

 アレで危害を加えるつもりがなかった、などと言われても信用できるわけがない。


「私たちは交渉で終わらせるつもりだったんだ。攻撃したのも自分たちの立場を分からせる為だ」

「分かっていないのはどちらでしたかね」


 今の状況を見れば、どちらが弱者なのかは明白だ。


「……貴族と敵対するのがどういう事なのか理解しているのか?」

「もちろん理解していますよ」

「いいや、理解していない。貴族が本気になれば平民を潰すなんて簡単な話なんだぞ!」


 私的に保有している戦力で直接的に痛めつける。

 圧力を掛けることで仕事をさせないことで間接的に苦しめる。

 権力を持つ貴族だからこそ、できることは多い。


「貴方は全く反省していませんね。僕たちがマルスさんと関係があることを知った時点で退くべきだったんです」


 それが最善だった。

 俺たちも色々と忙しいので関わりのない相手にまで構っている時間はない。


「残念だが実家はそのように考えていない」


 アルバとしては正体を知った昨日の時点で撤退するつもりでいた。

 けれども、彼らの監視役とも言える人物は相手を過小評価し過ぎてしまった……と言うよりも貴族である自分たちを過大評価し、平民に何ができるはずもないと考えて行動を起こしてしまった。


「そうですか。では説得してください」

「な、に……?」

「敵対する相手を全員倒していたらキリがありません。そんなことをするぐらいなら味方……まではいかなくても敵対しないようにした方がいいです」


 ただし、エルマーがアルバの実家を説得したところで意味がない。

 相手は貴族の力を過大評価するような人物。いくら力やコネがあろうとも平民でしかない者たちが対等な交渉を持ち掛けただけで苛つかせてしまう。


「今回のことで敵対するのがどれだけ不毛なのかわかったはずです」

「だが……」


 アルバにとっても相手は身分が自分よりも上の存在。

 いくら息子、さらに血を分けた弟だったとしても扱き使ってくるような相手に説得などできるはずがない。


「できる、できないではありません。やるしかないんです」


 剣を首に突き付ける。

 脅されたアルバはゆっくりと顔を縦に動かす。


「さ、もう行ってください」

「ああ」

「できれば二度と会わないことを祈っています」

「もちろんだ!」


 逃げるようにその場を去る。

 見えていないから仕方ないのだが、すぐ隣にいる俺たちには目もくれない。


「あれは見えていない以上に怯えているな」

「そこまで脅したつもりはないんですけど……」

「いや、信頼する仲間をこれだけ倒されれば怯えもするだろ」


 11人の仲間が殺された。

 3倍の人数差を覆されれば化け物に見えても仕方ない。


「それから勝手に名前を使ってすみません」

「「「ごめんなさい」」」


 代表したエルマーだけでなくディアたち3人も頭を下げてくる。

 彼らが本気で申し訳なく思っている証拠だった。


「気にするな。俺たちが教えた事をしっかりと身に付けているようで逆に安心したぐらいだ」


 利用できるものは何でも利用しろ。

 エルマーたちが俺の庇護下にあったのは間違いようのない事実で、アリスターでちょっとばかり情報収集をすれば簡単にわかることだ。

 事実なのだから否定に大きな意味はない。


「こういう面倒事を回避する術を身に付けているようで安心したよ」

「あくまでも最終手段です。それに、最初はマルスさんたちの姿が見えているものだとばかり思っていたんです」


 後ろにいる俺の姿を見せることで威光を借りるつもりでいた。

 ところが姿を隠してしまっていたものだから交渉に食い違いが生じてしまった。


「こんな方法は滅多にやりません」

「有効な方法だろ」

「だってマルスさんに迷惑が掛かるじゃないですか?」


 エルマーたちは屋敷にいた頃に、俺たちの力を利用しようとシエラたちを人質に取ろうと行動を起こした者たちを見ている。

 ただし、事前に行動したおかげで誰一人として成功していない。

 その事前の行動をさせない為に手段として用いたくなかった。


「だったら早く周囲に影響を及ぼせるような力を身に付けるんだな」


 エルマーたち自身が力を持てば俺に頼ることもなくなる。


「もちろんです。ただ、冬になる前にアリスターへ戻ろうかと考えていたんです」

「そうなのか?」

「はい。やっぱり僕たちにとっては、あの街が一番過ごしやすいですから」


 外を見た上でアリスターへ帰る選択をしたのなら反対する理由はない。


「それに今回はイレギュラーでしたけど、そろそろ里帰りしようとは考えていたんです」

「なら、いいけど」


 アリスターだと俺の影響力が強過ぎてエルマー自身の影響力を持つのは難しくなる。

 賢いエルマーが気付いていないはずないので何かしら考えているのだろう。


「これで問題の一つは片付きました」


 エルマーを邪魔に思っているアルバは片付いた。


「このまま迷宮の奥へ進むのは問題ないんですけど、地下30階にある大きな問題が片付いていないんですよね」

「ちゃんと考えているのか」


 隠された地下31階への入口を見つける。

 攻略を続けながら情報を集めて問題解決に役立てていた。


子供たちに利用される分には全く問題ないと考えています。

賢いので加減を分かっていますし、利用されることになるのを見越して引き取っていますので。

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