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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第14話 緊張の冒険・戦闘

「待って……」


 地下9階へ続く階段の最中、ディアが止まるよう言う。


「待ち伏せされている」

「ゴブリン?」

「わからない。けど、魔剣の気配は全然消せていない」


 狩猟民族として山の中を駆け回っていたディアには周辺の魔力を嗅ぎ分ける能力がある。ゴブリンが相手では弱過ぎて判別もし難いらしいが、魔剣は強過ぎるせいではっきりと判別することができていた。


「階段を下りた先で待ち伏せされている」

「……」


 ディアの言葉を受けてエルマーが後ろにいる俺たちの方を見る。

 とりあえず肩を竦めてみせる。


「エルマー」

「なんですか、ノエルさん?」

「マルスの反応を窺うのは止めた方がいいわ」

「けど、みなさんは下の様子がわかっているんですよね」


 エルマーが言うように現状でさえ変容した迷宮の3割を把握することができている。

 もちろん待ち伏せされているのも気付けている。

 俺たちの反応から正解なのか確証を得ようとしていたのだろう。


「もちろん。今だけは答えを言うけど、下で8体のゴブリンが待ち伏せしている」

「やっぱり……」

「でもね、わたしたちから答えを得られなかったら半信半疑のまま進んでいたって言うの?」

「だって確証は得られていませんから」

「つまり、ディアの能力を信用していないんだ」

「あ……」


 そこでエルマーは自分がどれだけ愚かな真似をしていたのか気付いてしまった。

 たしかに明確な答えを持つ者が後ろにいるが、先頭で気を張りながら偵察しているのはディアなのだ。危険を犯して偵察しているディアの判断を信用していない、と言っているようなものだ。


「ごめん、そういうわけじゃないんだ」

「うん、わかっている。だって後ろにいたら頼りたくなるよね」


 近くにいれば頼りたくなる。

 もっと離れた場所から見るべきなのだろうが、どうせなら近くから見ていたい。


「さ、反省するのはここまでだ。どうする?」


 俺たちから得られた答えは抜きで話し合いが行われる。

 4人が固まって小さな声で話し合っている。


「本当なら作戦を立てる時はこうやって話し合うものなのよね」

「俺たちの場合は【迷宮同調】があったからやったことないな」


 念話で作戦会議を行えば小声以上に誰に聞かれることもない。


「――よし」


 隊列を変える4人。

 まず、盾を構えたジェムが階段を駆け下りる。


『ゴブッ!?』


 ゴブリンたちが急に現れたジェムの姿に驚く。それでも、すぐに冷静さを取り戻すと前衛を担当している2体のゴブリンが同時に斬り掛かる。


「邪魔だ!」


 ドォンッ!

 走るジェムの盾によって2体のゴブリンが吹き飛ばされる。


 斬り掛かったゴブリンのすぐ後ろにいた2体のゴブリンが持つ杖のような形をした魔剣から小さな炎の球が放たれる。僅かにしか稼ぐことのできなかった時間では弱い魔法を放つぐらいしかできなかった。

 直撃すれば体の至る所に火傷を負ってしまう魔法。

 けれども、左手に持った盾と右手に持った剣を巧みに操って魔法を打ち消している。


「今でも、俺たちのプレゼントした剣を使っていることには驚いたけど、どうやら中身は別物になっているらしいな」


 成長した時に合わせてプレゼントした大きな剣。

 渡した時は剣と体の大きさが合っていなかったが、成長して体が大きくなった今は剣を軽々と振り回していた。

 ただし、プレゼントした剣は頑丈さを追求した剣。いずれジェムが自分の剣を手にするまでの繋ぎでしかなかった。再会した時に見た時はプレゼントされたことが嬉しくて今でも使い続けていることにガッカリしてしまったが、ジェムは自分の剣を『見つける』のではなく、自分の剣に『する』ことを選んだらしい。


「どこの誰なのか知らないけど、魔法を斬ることができるようにした錬金術師がいたらしいな」


 ジェムは力任せに魔法を打ち消しているわけではない。

 魔力を通わせた剣で魔法を斬ることで消している。剣に斬られた瞬間、火球が霧散している。


「よっと」


 攻撃していた2体のゴブリンを踏み越えて最後尾へ到達するとゴブリンの首を刎ねる。


「今のやり方は……」

「どこで俺のやり方なんて学んだんだか」


 偶然かもしれないがエルマーの指示を受けたジェムの戦い方は俺と同じだった。

 単身で突破することのできる者が後衛のいる場所まで突撃して仕留める。そうすることで中衛の意識を集めることができる。


 4体のゴブリンが魔剣から魔法をジェムへ向けて放つ。

 既に自分たちが守るべきゴブリンが倒されていることを理解しているため全力の魔法攻撃。

 しかし、突破する必要がなくなり強く盾を構えた防御を突破できない。


「はい、終わり」

「ま、ゴブリンだからね」


 そうしている間にディアとエルマーの手によって4体のゴブリンが仕留められている。


 けれども、ゆっくりと背後へ忍び寄る影がある。

 最初にジェムが吹き飛ばした2体のゴブリンだ。

 自分の気配は隠しているつもりなのだろうが、魔剣の気配が全く隠せていない。


 背後に迫る気配に気付いていた二人が同時に振り返る。


「「ゴ、ブッ……」」


 ただし、二人が目にしたのは襲い掛かろうとしたものの脳天に穴を開けられたことで倒れたゴブリンの姿だった。


「もう、3人で活躍するなんてズルいよ」


 最後にゴブリンを仕留めたのはジリー。


「事前の打ち合わせでは、僕たちだけで十分ということになったよね」

「ゴブリンなんてジリーの魔法を使うような相手じゃないでしょ」

「わたしも活躍したいよ!」


 当初の作戦では弾き飛ばされて負傷したゴブリンは逃げるにしてもエルマーたちをどうにかしなければ逃げることができないため、襲い掛かって来たところを逆に迎撃するつもりでいた。

 反対側には階段しかないため階層を移動することができない状態ではエルマーたちの方へ向かって行くしかない。

 ただし、その作戦ではジリーだけが活躍することができない。


「まあまあ、落ち着いて。ジリーちゃんの活躍はちゃんとメリッサも見ていてくれたから」

「本当ですか!」


 ジリーに魔法を教えてあげたのはメリッサだ。


「あいつの弟子らしい、と言うか……」


 脳天を炎のレーザーによって正確に貫かれている。

 大きさは指程度。メリッサに似て最低限の威力で仕留められている。


『あの子の魔力は平均レベルでしたから無理に魔力量を増やそうとは考えませんでした。ですが、精密性には適性があったので根気よく教えてあげたら自由自在に操ることができるようになりましたよ』


 メリッサとしては満足できる出来だったらしくゴブリンが仕留められる瞬間を見ながら頷いていた。

 転がったゴブリンの死体を見れば既に魔剣は消失していた。

 ゴブリンの死体はそのままに先へ進む。


「得られる物がないなんて本当に嫌な迷宮ですね」

「今は素材の回収よりも先へ進むことを優先させましょ。依頼だって異常の原因を調査するのが目的なんだから」

「そうなんだけど……」


 せっかく倒したのに得られる物がない。

 魔剣は消えてしまうし、ゴブリンからは価値のある物が得られない。


「マルスさんは魔剣が消える謎がわかっているんですか」

「ああ」

「……!? さすがですね」

「お前たちなら工夫次第で対応することができるかもしれないぞ」


 もっとも今の段階では消える謎のヒントすら掴めていない。

 この状況で考えさせるのは酷だ。


「いえ、先に解決しなければならない問題がありますからそちらを先に片付けます」

「へぇ、そんなのがあるんだ」

「気付いているのに気付いていないフリは止めてもらえませんか」


 エルマーが言うように最初の問題が地下10階で待ち構えている。


「待ち伏せなら洞窟内の方がやり易いですから仕掛けてくるとしたら次の階層でしょう」


 わかっているのならどのように対処するのか見せてもらうことにしよう。

基本的に連携はエルマーが提案しています。

そして、彼らに基礎を教えたのはマルスたちです。

考え方が似てしまうのは仕方ない。

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[一言] そんなに気になるなら保護者組にはひょっとこの仮面でも着けてもらおう。なお絵面
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