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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第13話 緊張の冒険・開始

 パレント迷宮地下8階。


「おい、追い付いたぞ」

「……本当にもう到着したんですか?」


 前方にいるエルマーが呆れながら振り向く。


「僕たちは数分前に地下7階の探索を終えたばかりですよ」


 魔剣を持った魔物との戦闘を極力避けているエルマーたち。倒すのは苦労しないが、倒しても得られる物が少ないために避けている。いくら戦闘力に差があったとしても割に合わないのに危険のある行動をする必要はない。

 冒険者として決して間違った行動ではない。


 だが、俺たちが迷宮へ入ってから数十分後に遅れて入ったとはいえ、こうして追い付かれてしまうと思うところがあった。


「俺たちの事は気にするな」

「そうそう、いつも通りにしてくれればいいから」

「わかりました」


 言葉では了承したもののどこか緊張した様子だ。

 なにせ誰かを護衛しながらの冒険ならしたことがあるが、後ろにいる相手が自分たちよりも圧倒的に強くて育ての親ともなれば緊張してしまう。

 こうなることは事前に予想できた。


「じゃ、後はよろしく」

「魔法が必要になったら呼んでください」


 イリスとメリッサが屋敷へ帰る。


「え、二人はどこへ……?」

「帰った」

「帰った!? え、みなさんが空間を移動できることは知っていますよ」

「でも、こんな未知の場所で帰ります!?」


 ジェムとジリーが驚いている。

 俺たちを知る者なら俺だけを置いて帰るなどあり得ない。


「ちょっと前からヴィルマが熱を出して寝込んでいるんだ」

「ああ、あの屋敷にいた頃は看病していましたね」

「今朝は熱も下がっていたけど、やっぱり病み上がりだから心配なんだよ」


 そういうわけでイリスは帰った。

 ヴィルマの体調が悪いとイリスが付きっ切りになってしまう。そうなると下の子たちが母親の一人とはいえ占有している状況に嫉妬してしまう。だから一緒に遊んであげる母親が必要になった。

 話し合いの結果、今日の当番はメリッサになった。


「あたしは今回の依頼の当事者みたいなものだから居残り」

「で、わたしとメリッサでジャンケンをしてどっちが帰るのか決めたの」


 依頼を引き受けた当事者とも言える俺とアイラは常にいなければならない。

 さすがにアイラ一人だと戦闘面では問題ないが、色々と不安な面があるため誰かが残ることになった。


 そうなれば欠けているものに気付いたエルマーが周囲を確認する。


「シルビアさんはどこへ行ったんですか?」

「あいつには別に頼んである事がある」


 情報収集の全てを任せることになって心苦しくあるが、シルビアには事前に情報を集めてもらっている。


「あのペースだと2時間もしないうちに合流することができるだろ……どうした?」


 いつまでも先へ進まないエルマーたち。

 こちらとしては後に続くだけのつもりでいたので彼らが動かないと先へ進むことができない。


「一つだけ確認させてください。どれだけの情報を得られましたか?」

「へぇ」

「いくらヴィルマちゃんの体調が悪いとはいえイリスさんとメリッサさんがマルスさんから離れて屋敷へ帰るのは異常です。シルビアさんの別行動は許容することができたとしても、二人が離脱しても問題ないと判断したわけです」

「まあ、そうだな」


 魔剣を手にしても魔物が相手にならないのは判明した。

 侵入者を迎撃する為の罠も存在しているが、【地図】があれば引っ掛かることもないし、上層にあるような罠では傷付けることすらできない。

 そもそも危険のある物は既に把握済みだ。


「お前が言うように『俺たち』にとって危険はない。けど、お前たちもそうだとは限らない」

「あなたたちが2年の間にどれだけ成長しているのか後ろから見させてもらうことにするわ」

「……教えてくれることはないんですね」

「教えたら、お前たちの依頼にならないだろ」

「そうですね」


 ようやく先へ進み始める。

 エルマーたちパーティの隊列はリーダーであるエルマーを中心に置き、前に偵察役であるディアが立ち、後ろにいるジェムが最後尾で火力のある攻撃の準備をしているジリーを守れるよう護衛に動く。

 それぞれの役割を活かした順番だ。


「セオリーと言えばそれまでだけど、ちゃんと考えて動くことができているみたいだな」


 パーティの歩き方に淀みはない。

 普段から連携も考えて動いている証拠だ。


「でも、なんかギクシャクしていない?」

「そこは見てやるな」


 運動能力の高くないジリーが何度か転びそうになっている。


「俺たちに見られて緊張しているんだよ」

「そういうことを後ろで話される方が気にしますよ!」

「あ、悪い」


 とはいえ自分の目で見たいという欲求が働いてしまうため離れて行動するつもりはない。

 だが、このまま緊張させたままなのは申し訳ない。


「お前たちはゴブリンと戦ったんだよな」

「はい」

「だったら倒すのは問題ないな」

「それは大丈夫だと思います。ただ、旨みのない相手ですから避けていきますよ」

「意図的ならいいさ」


 先ほどから脇道があり、差し掛かる度にディアが道の先まで気配を辿っていた。


「地下8階に魔物の気配はないですね」

「おお、正解」

「……どれだけ把握しているんですか」

「もっかい悪い」


 またエルマーの神経を逆撫でするようなことを言ってしまった。

 ディアが言ったように地下8階に魔物はいない。


「警戒するのは止めよう。あの様子だと魔物どころか罠の気配もない」


 たしかに罠もない。


「おいおい。人の言葉を簡単に信用していいのか?」


 俺の言葉だけでなく態度からも真実だと判断したのかもしれないが、もしも俺が敵意のある相手、さらには試験としてブラフを混ぜていた場合には危険な判断となる。

 そんな風に判断しているようではリーダーとしては失格だ。


「はぁ」


 しかし、俺の言葉に対してエルマーは溜息を吐いた。


「僕とあなたの関係は何ですか?」

「それは……」

「少なくとも僕は『父』と『子』だと思っていました。あなたの態度や仕草については熟知しています。だから自然な言葉だというのはわかっています」


 エルマーは自分なりの基準に従って判断を下していたようだ。

 そして、3人もエルマーの判断を信じて警戒を解いている。


「ちょっと心配だったけど、ちゃんと冒険者ができているのね」

「そりゃあ、何年も仕込んだんだから当然だろ」


 アイラの言葉に頷く。


「そうじゃなくて。あたしたちが教えた事って剣とか魔法、それに冒険の基礎知識ぐらいでしょ」

「まあ、そうだな」


 パーティでの連携、洞窟のような場所での歩き方などは教えられていない。

 それと言うのも俺たちパーティの方法はエルマーたちにとっては全く役に立たないからだ。

 なにせ【迷宮魔法】や【迷宮同調】といった迷宮主や迷宮眷属でなければ所有することのできない魔法やスキルを所有していることを前提にパーティを結成している。

 だから特殊なスキルを持たないエルマーたちには参考にならない。


「自分たちで考えるなり、冒険者ギルドにいる先輩から教えてもらう必要があったんだよな」


 ただし、アリスターではエルマーたちが俺の庇護下にあることは有名だ。

 万が一にも間違ったことを教えてしまった場合には制裁があるかもしれない、そんな想いに駆られてしまったせいで教えてもらうことができずにいた。


「どうやら外に出した甲斐はあったようだな」

「あの、後ろでそんな会話を続けるなら別行動をしてもらえますか?」

「酷いな。ちゃんと少しぐらいヒントを出すさ」

「――地下31階への行き方ですね」

「気付いていたか」


 本気でパレント迷宮の攻略を目指すなら移動方法を見つける必要がある。

ディア・エルマー・ジェム・ジリー←←←マルスたち

どう見ても授業参観みたいにしか見えない。


次はちゃんと戦えるところを見学です。

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[一言]  (ある意味)鬼かよ(笑)
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