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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第12話 パレント迷宮の異状-後-

 【迷宮魔法:鑑定】。

 迷宮内にいる魔物や迷宮から出土した財宝限定ではあるものの、ありとあらゆる情報を詳らかにすることができるスキル。

 ゴブリン、そして魔剣に使用する。

 現れたゴブリンが普通のゴブリンである事ははっきりした。


「うわっ」

「これ、どうするの?」


 魔剣の秘密が分かってしまった。

 それにより迷宮にどのような異状が起こっているのかも予想できる。


「原因が何であろうと最下層まで行くのが手っ取り早そうだな」

「じゃあ、あの子たちの依頼を横取りする?」

「そうだな……」


 アイラと話をしている内に2体のゴブリンが魔剣を手にして斬り掛かって来る。

 剣で二人ともゴブリンの攻撃を防御する。


「お、速さと攻撃力を上昇させる魔剣か」


 身体能力を上昇させる魔剣。

 おかげで魔剣を手にしたことで剣士と言っていいほどの身体能力を手にしている。


「ギィ……!」

「ギ、ギギ!」


 2体のゴブリンが何度も剣を振り下ろす。

 だが、俺たちの剣によって弾かれて攻め切れずにいた。


「ギィ!」


 後ろにいた4体のゴブリンが強く吠える。

 斬り掛かっている2体のゴブリンが後ろへ視線だけを向け、自分の最期を悟りながらも攻撃を止めない。


「そうか」


 自分が後衛の盾となる。

 次の瞬間、ゴブリンの持つ魔剣から炎や電撃が一斉に放たれる。


 狭い洞窟を覆い尽くしてしまう威力の攻撃。


「グギャアア!」


 仲間を巻き込んでまで攻撃したゴブリンが笑う。

 どうやら、よほど敵を倒せたことが嬉しいらしい。


「話に聞いていた通りに下種な連中だな」

「ゴブッ……!?」


 背後から聞こえて来た声に最後尾にいたゴブリンが慌てて振り向く。

 だが、その頭が後ろを向くことはなかった。


「お前もだ」


 続く様に隣にいたゴブリンの首を刎ねる。


「いくら強力な武器を持っていても使っているのがゴブリンじゃあ宝の持ち腐れだな」

「ゴブッ……!!」


 言葉の意味が正確に理解できた訳ではない。

 それでも俺の表情からバカにされていることを理解した4体のゴブリンが再び魔剣から攻撃を放つ。


「う~ん……最後尾にいた2体が厄介な魔剣を持っていたから先に倒したけど、あまり変わらないな」


 回復魔法が使えるようになる魔剣と近くにいる味方のダメージを引き受けることのできる魔剣。

 どちらも攻撃能力はないが、残しておくと厄介な能力だったため優先して倒したが、4体のゴブリンが放つ攻撃を【迷宮結界】で受けてもビクともしない。


「よっと」


 正面に【迷宮結界】を展開したまま炎を放つゴブリンを蹴り上げると、ゴブリンが洞窟の天井に突き刺さる。

 岩盤の破片がパラパラと落ちてくる音が響く。

 その光景を見せられた他のゴブリンたちが攻撃を止めて戸惑う。


「誰も俺が後ろへ移動したことに気付いていなかっただろ」


 周囲に【迷宮結界】を展開すればダメージを一切受けることなく炎の中を駆け抜けることができる。

 まさか無事だと思っていなかったゴブリンたちは天井付近の事など気にしていなかった。


「それがお前たちゴブリンの実力だ」


 3体が敵意に満ちた目を向けている。

 すると、1体が馬鹿にされている状況に我慢できなくなって斬り掛かって来る。魔剣には炎を起こす為の魔力が充填されており、斬り掛かった瞬間に爆発を起こす仕組みになっている。


「グゥ……!」

「それも攻撃できれば、の話でしょ」


 アイラが斬り掛かろうとしたゴブリンの後ろから剣を突き刺して仕留めている。

 動くことができなかった2体のゴブリンもイリスとシルビアの手によって首を斬り落とされている。


「ゴ……?」

「随分と不思議そうな顔をしているな。あの程度の攻撃は防御ができる連中なら抜けることができるんだよ」


 エルマーも切り抜けることができた。それにホヴァや他の冒険者にも対処ができたはずだ。

 その辺の情報共有がゴブリンたちの間でされていない。


「ま、情報を共有するシステムを持たない奴に情報収集を怠ったことを責めても仕方ないか」


 ただ魔剣を与えられただけのゴブリンだ。

 魔剣による攻撃を浴びせられたとしてもイリスの展開した【迷宮結界】のおかげで全員が無事だった。


「こいつらは雑魚だ」


 天井に突き刺さったままのゴブリンがピクッと反応する。


「だけど使い物にはなる」


 シルビアが【虚空の手】を使い、天井に突き刺さったゴブリンを引き抜いて地面に置く。


 いつの間にか6人に囲まれてしまっている状況。

 ゴブリンがあたふたしながら周囲を見渡す。


「どうして、お前だけを生かしたと思う?」


 後ろから頭を掴みながら尋ねる。

 ゴブリンは答えることができずにいた。


「徹底的に情報を引き出す為だよ」


 【鑑定】を使えば膨大な量の情報が流れ込んで来る。

 ほとんどが無用な情報だが、必要な情報を抜き出すことに成功する。


「これも回収することができればいいんだけどね」


 倒されたゴブリンが手にしていた魔剣をアイラが手にする。

 けれども、持ち上げた直後にアイラの手から消えてしまう。


「あらら」


 そうなることは分かっていた。

 事前にエルマーが調べてくれていたし、【鑑定】によって原因も判明している。


「サンプルなんて1本あれば十分だ」


 最後まで生きていたゴブリンが手にしていた魔剣。


「拘束して生け捕りにしてもゴブリンの魔力と一緒に魔剣も迷宮に回収されてしまう。だけど、俺たちだけが使える裏技がある」


 無理矢理に情報を抜き出されたせいで痙攣を起こしているゴブリンの頭を掴んで正面から目と目を合わせるイリス。

 全く感情の読み取れない無表情。だからこそゴブリンは恐怖を覚えてしまった。


「――【回帰】」


 吸い込まれそうになる蒼い瞳。

 潜在的に感じてしまった恐怖によってスキルの干渉下に置かれてしまう。

 在るべき姿へと強制的に戻されてしまう。生まれたばかりのゴブリンは、迷宮の魔力によって生み出されているため迷宮の魔力へ還元されていく。


「はい、魔剣は回収できた」


 本来ならゴブリンを生け捕りにしても迷宮の命令によってゴブリンが魔力に還元され、繋がっている魔剣も回収される仕組みになっていた。

 その方法が魔物に与えた魔剣を回収する最も確実な仕組み。


「けど、それは後から組み込まれた仕組み。不自然な状態なんだよ」


 手元に魔剣だけが残る。


「でも、割に合わないから連発はしない方がいい」

「何回ぐらいできそうだ?」

「生まれてから間もない事と相手が雑魚のゴブリンだったせいか魔力の消費は巨人族に使った程じゃない。少なくとも20回は使えるはず」

「ま、最低限必要だった1本は回収することができた」


 ゴブリンと繋がっているせいでゴブリンに関する不要な情報まで読み取ってしまっていた。

 これで魔剣に関する情報だけを抜き取ることができる。


「やっぱり大元の原因を排除するしかないみたいだな」

「でも、相手の位置が分からないと……」

「分かった」

「え……」

「最下層に敵はいる。どうやら、せっかく用意した戦力を排除されている状況に相当苛立っているみたい」


 魔剣に込められた魔力から逆に探知したイリスが敵の位置を補足した。

必要最低限の答えは手に入れたマルスたち。

次回から計算式を描く為にエルマーたちと行動を共にします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 迷宮主がやってるのかね。
[気になる点] タイトルと本文の「異状」は「異常」の誤字かな?? タイトルのほうは自信がなかったのでこちらに書かせてもらいました。
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