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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第11話 パレント迷宮の異状-前-

 太陽が昇ったばかりの早朝。

 パレント郊外にある迷宮を訪れる。

 入口の前には二人の兵士が立ちはだかっている。今の迷宮は異常事態が発生しているため、無謀な挑戦を阻止する為にも見張りが立てられていた。


「止まれ!」


 近付く者がいれば警戒する。

 さらに相手がパレントで見たことのない冒険者ともなれば立ちはだからない訳にはいかない。


 6人の冒険者を前にして槍を構える。


「お仕事お疲れさまです」

「え、ああ……どうも」


 掛けられた言葉が落ち着いたものであったため力が抜けてしまった。


「そんなに力を入れていると倒れてしまいますよ」


 労いに回復薬(ポーション)を渡す。街で簡単に買える代物なので大きな出費にはならない。


「お、ありがとう」

「俺たちの事は気にしないでくれ。ちゃんと交代で立っているからな」


 回復薬を飲みほしたことで体に活力が戻る。

 ……飲んだな。


「ちょっと聞きたいことがあるんです」

「なんだ?」


 回復薬には傷を癒して体力を回復させると同時に服用者に高揚感を与える効果もある。

 本当に些細な効果でしかないため、陽気に話に乗ってくれる程度だ。

 それでも話を振れば会話に乗ってくれた。


「今日アルバという冒険者は来ましたか?」

「ああ、もう来ているよ」

「いつも早くに来るんだよな」

「助かりました」


 アルバという冒険者は既に来ている。


「こんな朝早くから来るなんて真面目な人なんですね」

「ああ、なにせ元騎士だっていう噂だからね。困っている人は放っておけない性格なのかもしれない」

「けど、攻略は進んでいないんだよな。あの人が迷宮に入るようになってから数日が経っているのに地下10階にすら到達していないじゃないか。1日早く来ていたベクターさんは、今日には地下20階を攻略できるみたいだぞ」


 片方の門番には真面目な性格が評価されていたが、もう一人の方は思ったほど攻略が進んでいない状況を嘆かれていた。


「じゃあ、俺たちは入らせてもらいますよ」

「待ってくれ。おそらく余所の街から来た冒険者だろう。今この迷宮では異常事態が起きているんだ。悪いが低ランクの冒険者は入らせるわけにはいかない」

「低ランク、と言うとどれくらいあれば問題ないんですか?」

「少なくともBランクは必要だ」


 なら問題ない。

 全員がAランクの冒険者カードを見せる。


「これは……!」

「文句ありませんね」


 門番が言ったのはBランク以上の冒険者が統率するパーティである必要がある、という意味だった。誰か一人でもBランクであることを示せば十分。

 まさか6人全員がAランク冒険者だとは思っていなかった。


「ギルドからも今回の異常を調査するよう依頼されています。中へ入っても問題ないでしょうか?」

「はい、問題ありません!」


 門番に敬礼されながら迷宮へ入る。

 平原にポッカリと空いた穴。階段を下りて、地下へ潜ると薄暗い洞窟が奥へと続いている。

 見慣れた光景だ。


「最初は洞窟なのよね」

「大災害から逃れる為の避難施設だったからな。どうしても同じような仕様になるんだろ」


 おそらく昔からパレントで生活している人の祖先は、この洞窟で永い時間を過ごしていた可能性が高い。


「さて、今回は自分たちの力をフルに使うぞ」

「どういうこと?」

「【地図(マップ)】」


 視界の端に地下1階の様子が描かれた地図が表示される。

 下手に冒険者ギルドやホヴァから自作した地図を購入するよりも正確で、安上りな方法だ。


「え、使っちゃうの?」

「エルマーたちのサポートが目的だったのではないですか?」


 アイラとシルビアの疑問ももっともだ。

 あまりに積極的に力を行使してしまうとサポートの範疇を越えてしまう。


「問題ない。サポートするにしても問題の原因が、あいつらの手に負えるものなのかは知っておく必要がある」

「まあ、そうかもしれないけど」


 スキルを使うだけで迷宮の状態を把握することができる。


「地下1階には魔物が全くいないどころか、宝箱すらないな」


 異様な静けさに包まれた迷宮。


「どうしますか?」

「まずはエルマーたちに追い付くことにしよう」


 早朝から真面目に働く冒険者は少ない。早朝でなければ遭遇することのない魔物を追っている時や他人を出し抜く為に速く行動している時ぐらいだ。

 アリスターにいる間、真面目なエルマーは早起きして依頼を受けていた。

 だが、屋敷という拠点を手放して冒険をしている内に、自由に行動をするようになったのだろう。


「ま、自由に屋敷へ帰れる俺たちの言えた事じゃないけどな」


 地図を見れば地下2階へ続く階段までの最短距離が分かる。

 一気に駆け抜けて、地下2階へ到達した瞬間に【地図】を使用する。

 地下1階と代わり映えしない洞窟。迷路のように入り組んでいるが、【地図】さえあれば無意味だ。


「進む――ん?」


 何も表示されていなかった地図。

 だが、ほんの少しの間だけ意識を逸らしている間に反応が表示されていた。


「急に現れたな」


 表示されたのは魔物の反応だ。


「全部で8体か」

「位置からすると地下3階から現れたようですね」


 魔物が現れたのは地下2階の最奥。

 そこに地下3階へ続く階段がある。


「はい、異常事態」


 迷宮の魔物は基本的に生み出された階層を移動することはない。

 移動することがあるとすれば魔物が暴走している場合くらいだ。以前に迷宮のボスが暴走したことで迷宮の制御を離れてしまった魔物が上の階層へ移動してしまったこともある。


「けど、それもあり得ない」


 階層を移動して現れた魔物の数は8体。

 単体での暴走という可能性は潰えた。


「ゴブリンか」


 まだ視界に捉えることはできていない。

 それでも情報だけは次々と集まっている。【地図】を使用した階層へ足を踏み入れた段階で丸裸にされているようなものだ。


「しかも真っ直ぐこちらへ向かって来ていますね」


 メリッサが言うようにゴブリンは群れ、と言うよりも軍隊のように規則正しい動きで真っ直ぐ向かって来ている。


「それだけじゃない」


 イリスが地図の変化に気付いた。

 階層にある通路のいくつかが狭くなって閉じて行っている。何らかの意思が介在することで行き止まりを作り、ゴブリンとの戦闘を避けられないようにしている。


「俺たちなら行き止まりを破壊することもできるけど……」

「このゴブリンが気になるところですね」


 近付けば近付くほどゴブリンにしては異様な強さを持っていることが分かる。


「けど、ゴブリンの放つ魔力じゃないわよ」

「原因は武器にあるんだろ」


 全てのゴブリンが魔剣を装備している。

 感じられるのはゴブリン自身の強さよりも魔剣の方が強い。


「ま、所詮は大したことないでしょ」


 アイラが剣を抜く。

 魔剣を手にしたことで強くなっていると言っても冒険者で言えばCランク程度といったところだ。


「まあ、待て」


 前に出ようとしたアイラを止める。


「え、もう近くまで来ているわよ」

「まずは情報を集めるのが先だ」


 目の前まで迫れば必要な情報がもっと得られる。

 そうして待っていると曲がっている道の奥から魔剣を手にしたゴブリンが姿を現す。

 ゴブリンの方もこちらを敵として見做しているようで俺たちを見つけた瞬間に敵意を剥き出しにしている。


「――【鑑定(アナライズ)】」


迷宮関係の問題では【鑑定(アナライズ)】がチートすぎる。

これで問題の根幹がほとんど分かってしまうものですよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 間違い無く誰かが意図的に操作しているよね。
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