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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第17話 地図の価値

 翌朝、テントから出ると道行く冒険者だけでなく、商人までもが俺たちのテントを微妙な表情で見ている。正確にはテントの傍に放置された物にだ。

 原因は分かっている。


「こいつらも懲りないな」


 テントの傍にはルフランたちが倒れていた。

 初日の夜と同じように敵意を持って近付いてきた相手を麻痺させる罠を仕掛けておいた。初日に同じ罠に引っ掛かっているにも関わらず夜の内に攻撃を仕掛けようとしたらしい。


「いや、ちょっと違うみたいだな」


 転がる体を見ていると微かながら魔力を発している物体があることに気付いた。

 転がるルフランにポケットからそれを取り出すと護符だった。


「麻痺を無効にする護符か?」


 こういう特定のステータス異常を受けないようにする護符が存在することはアリスターでも普通に売られていることから知っていた。

 それでも実物を見たのは初めてだった。

 俺たちのステータスを考えれば宝箱のあった部屋で毒を何度か受けても平気だったように必要性を全く感じなかったから買いに行かなかったためだ。


 話には聞いていたので、それなりに高価なアイテムだったはずだ。

 それでも俺の麻痺を受けて倒れているのは、俺の魔法が護符の無効化できる限界を超えた効果を発揮してしまったからだろう。


 とりあえず遺跡前の広場にポイッ。


「まったく、嘆かわしいですね」


 ルフランたちを捨てると遺跡に向かうべく装備を整えたイリスティアと出くわした。


「どうせ初日に出遅れた仕返しをしようとして返り討ちにあったのでしょう」

「その通り」

「こんな者と同郷だと思われるのは心外ですね」


 イリスティアが額に手を当てて目を瞑っている。

 彼女は、俺たちと同い年ぐらいでありながら俺みたいなズルなしで実力を評価された冒険者だ。そんな彼女が野蛮な行動に出た同郷の冒険者を見て嘆いている姿は絵になる。


「イリスティアさんをこのような連中と同じだと思わないでください」

「え?」


 イリスティアの取り巻きだった大柄な剣士が俺に話し掛けてくる。


「彼女の実力は本物です」

「それは、信じていますから大丈夫ですよ」

「昨日会ったばかりの人間に何が分かりますか」

「一目見ただけでも理解できることはありますよ」


 たとえば『鑑定』を使用するとか。

 迷宮魔法の鑑定ではイリスティア本人を鑑定することはできなかったが、イリスティアが帯剣している装飾の施された剣には鑑定を使うことができた。


 ――聖剣ヘルヴォル。


 アイラにあげた聖剣と同系統の剣を装備していた。

 しかも迷宮魔法の『鑑定』が通用したということは、迷宮産の聖剣だ。


「それ、聖剣ですよね」

「よく分かりましたね」

「俺の仲間には同じように聖剣を装備した者がいましたからね」

「そういうことか」


 何かに納得したように聖剣を装備したイリスティアを見つめる。


「だが……」

「もちろん彼女の強さは聖剣を持っていることだけが理由じゃない。彼女は、聖剣を持つに相応しいだけの力を持っている。違いますか?」

「そうだ。彼女なら辺境に行ってもAランク冒険者としてやっていくことができるだろう」

「そうですか。アリスターに来た時には遠慮なく話し掛けて下さい」

「ああ、行くことがあったら考えておこう」


 剣士は俺から離れるとイリスティアと一緒に打ち合わせをしていた。


「これから遺跡探索ですか?」

「ええ、昨日の内に1階の探索は終えているので2階へ向かうつもりです」


 もう1階の探索を終えているらしい。


「こちらは昨日の内に1階の探索で上質な魔石を40ほど。他には宝箱から財宝を2つ手に入れて手元には資金がたくさんあります」


 魔物を倒せる実力もそうだが、宝箱を開けられるスキルを所有した仲間もいる。

 イリスティアがにこやかな顔で俺に近付いてくる。


「どうです? まだ1階の探索を終えていないなら買ってみませんか?」


 イリスティアが差し出してきたのは1枚の紙。

 紙には、精度では俺が描いた地図には劣るものの1階から2階へ上がる為の階段まで描かれていた。


「悪いけど、いらない」


 すぐに目を逸らす。

 ああ、ちょっと見ただけなのに階段の大まかな位置を記憶してしまった。

 自分で探索することに意味があるのに。


「残念です。ですが、既に他のパーティ1組が金貨1枚で買い取ってくれたので儲かっています」

「金貨1枚!?」


 そこまでの価値があるのかと疑ってしまう。


「あなたは遺跡には初挑戦でしたね」

「あ、ああ……」

「それでも昨日の探索で既に気付いたと思いますが、遺跡にいる魔物は再出現しません」


 これは、気付いていた。

 道に迷っている最中に魔物が現れたので倒したが、その後で同じ道を通った時には魔物が現れることはなかった。

 そんなことが何度か続けば魔物が再出現しない仕組みになっていることにも気付く。


「遺跡で得られる財宝は基本的に早い者勝ちです。1階など多くの冒険者がいるせいで奪い合いになってしまうことすらあります。もしも安全に探索をしたいというのなら早い内に奥へ行く必要があります」

「なるほど」


 1階ではなく2階の探索をすぐに行うことができるというのなら地図には金貨1枚相当の価値があるのかもしれない。


 そして、ルフランたちが俺たちに仕返しをしようとした理由も分かった。

 遺跡探索において速さは重要になる。

 そんな中、初日の探索に参加できなければ彼らが参加する頃には既に魔物が討伐された後や開けられた宝箱が残されているだけの遺跡を探索することになる。

 焦った彼らは俺たちから奪い取ることを選択した。

 その結果、2日目も不参加が決定した。


「ちなみに麻痺はいつ頃解ける予定ですか?」

「早ければ夜……あー、どうだろうな?」


 今回、麻痺を防ぐ護符を持っていた。

 結局役に立つことはなかったが、護符を持っていたことには変わりない。


「早ければ夕方には目覚める可能性もある」

「そういうことでしたら帰ってきた頃には高値で売れるかもしれませんね」


 冒険者としての戦闘力も然ることながらイリスティアは商魂たくましいらしい。

 彼女たちの実力を考えれば夕方までに2階の探索を終え……もしかしたら3階の探索をある程度終わらせて戻って来ることも可能かもしれない。


 手元には3階まで辿り着くことのできる地図。

 2日も連続で遺跡探索に参加できなかった彼らが地図を見せられたらどんな反応をするのか?

 遺跡探索では参加しただけでは報酬を貰うことはできない。遺跡内の探索で得た魔石や財宝を売って得た資金が報酬となる。


 だからこそ、まだ探索のされていない3階には興味を示すはずだ。


「では、私たちは探索があるので失礼します」


 イリスティアが頭を下げて去って行く。



 ☆ ☆ ☆



「というわけなんだけど、どうする?」


 テントに戻って遺跡探索の準備をしながら仲間に確認をする。

 彼女たちは基本的に俺の決定に逆らうような真似はしないので、先に彼女たちの意見を求めるようにしている。


「どういう意味でしょうか?」


 シルビアが聞いて来たので今日の予定を言う。


「まず、昨日の段階では1階の続きを探索しようっていうことになっていたよな」

「そうね」

「けど、昨日1日だけで1階の探索はほとんど終えられているみたいなんだよ」


 イリスティアたち以外にも長く探索をしていれば2階へ続く階段を見つけたパーティは他にもいるだろう。

 つまり、それだけ1階は探索され尽くしたということだ。


「探索するだけでも経験は得られるんだろうけど、財宝とかが全くない場所を探索するとかテンションが上がらなくないか?」

「そうかもしれませんが……」

「というわけでさっさと2階へ行こう」


 さっきイリスティアから見せてもらった地図のおかげで大まかな位置は把握している。近くを歩いていれば見つかるだろう。


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