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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第40章 冒険参観
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第5話 エルマーパーティとの再会

 エルマー。

 身寄りがなくなって引き取った時は10歳の少年だったが、今では17歳の立派な男性になっていた。背は俺よりも高くスラッとしており、体もガッシリとしている。


 成長しているのはエルマーだけではない。

 ジェムは冒険者として動き易さを損なわないよう造られた鎧を身に付けており、栄養失調で小柄だった頃が嘘のように筋肉がついて大きな体をしていた。戦槌を手に何年も戦っているホヴァには負けるが、十分にパワーを活かした冒険者を名乗ることができる。

 ジリーは相変わらず体が小さいものの薄らと化粧をしているのか綺麗になっており、髪にも艶が見て取れる。


 最も変化が顕著なのはディアだ。いや、分かり易いと言った方がいいだろう。

 元々、海の近くで生活していたこともあってアリスターへ移住して以降も冬以外は露出の多い格好をしていた。短剣やナイフを手にして、身軽な動きで敵を翻弄するスタイルなため重い装備を受け付けず、頑丈な胸当てと短パンのみという格好は仕方ない。

 ただし、成長して胸や腰の肉付きが良くなった今も同じ格好をしているのはいただけない。おかげで目のやり場に困り、保護者として本気で心配になる。


「せめて街中ぐらいはちゃんとした格好をしろ」

「これが一番楽なんです」

「男たちから見られるだろ」

「別に、気にしないです」


 ディアに羞恥心がない訳ではない。

 ただ、ディアの男性に対する関心が全てエルマーに向けられているだけの話で、他の男から見られても気にしないだけだ。


「……とにかく久し振りだな」


 エルマーたちと会うのは2年振りだった。


「今はパレントを拠点にしているのか?」


 15歳――成人するまではアリスターの屋敷で生活させていた4人だったが、成人すると同時に独り立ちさせる為に俺たちの側から離れるよう言った。

 もちろん永遠に帰って来るなという訳ではなく、少しは外の世界を自分たちの力だけで見て学んで欲しい事があったからだ。

 それからエルマーたちは言いつけを守って帰ってくることはなかった。


「まさか、お前たちがいるとは思わなかったぞ」


 だから気配を探るような真似をしなかった。

 教えを守って普段は街中に溶け込むようにしていたため、こちらから探るような真似をしなければ気付けない。


「いえ、たまたまです。僕たちが来たのも3日前ですから」


 今の状況を考えればパレントを訪れた理由も分かる。


「冒険者ギルドから呼ばれたのか?」

「そういう訳ではないです。次の目的地を迷っている最中に相談したらパレントを紹介されただけですからね」


 修行として一定期間は滞在する街を決めて依頼を受ける日々を送る。

 その後、別の街へ移動して色々な依頼を受けることで経験を積む、という生活を続けていた、との事だ。

 そして、以前いた街にあった冒険者ギルドで紹介されたのがパレントだった。


「マルスさんこそどうしてここに? アリスターからかなり離れていますよ」


 エルマーたちは俺たちの異常な力についてある程度は知っている。

 それでも移動時間は『ちょっとそこまで』などというレベルの話ではない。そもそも都市間の移動が簡単ではない。

 俺とアイラだけなら冒険者として依頼を受けたというのもパレントの状況を知っているため納得することができる。


 ただし、アイラの側にはシエラとリックがいる。

 冒険目的でないのは間違いない。


「ここはアイラの故郷なんだよ」

「あ、そういうことですか」

「じゃあ里帰りなんですね」


 エルマーが納得すると、ジリーが屈んでシエラと目線を合わせると頭を撫でながら成長した姿を眺めていた。


「お姉ちゃんの事、覚えている?」

「ジリーさん!」

「……?」


 元気よくジリーの名前を呼ぶシエラだったが、リックは誰か分からず首を傾げていた。


「覚えていないか。これでも1歳になるぐらいまでは一緒にしてあげたんだけど」

「ごめんなさい」

「ううん、大丈夫だよ。そんな小さい頃なんて覚えていなくて当然なんだから」


 ショックを受けるリックをジリーが必死に宥めている。

 冒険者ギルドでの話は子供たちを退屈させてしまうかと思ったが、思わぬ再会のおかげで喜ばせることができたみたいだ。


「で、里帰りしたら故郷で問題が発生していた。そうしたら領主から問題を解決するよう依頼されたっていうのが現状だ」

「理解しました」


 納得したエルマーの視線が俺からホヴァへ向けられる。

 俺が依頼を受けた状況だけではなく、叫ぶように言葉を発していたホヴァの声も聞こえていたらしく揉め事の原因まで察していた。


 サッと間にいる俺を抜けてホヴァの前に立つ。


「ホヴァさん、あなたの言い分も分かります」

「テメェも余所者だろうが」

「そうです。けど、あなたはこの依頼に1月も掛かり切りですよね。それでも解決することができていない。だからベクターさんやアルバさんが呼ばれる事態になったはずです」

「……」


 ベクター、アルバというのが救援で呼ばれた冒険者なのだろう。

 自分たちの手に負えない。だから救援が呼ばれたことぐらいホヴァにも分かっていた。

 それでも、エースだからこそ自分たちで解決したいという想いを譲ることができなかった。


「そんな事は分かっているさ。けど、おかしくなってからの迷宮は俺たちが必死に情報を集めたんだ。それをベクターみたいに後から来た奴らにタダで持って行かれるのが気に入らないんだ」

「その件は僕も聞きました。ホヴァさんの提出した報告を依頼人とはいえ勝手に他の冒険者に教えてしまうのは許せないですよね」

「げっ、そんなことをしていたのか」


 思わずそんな言葉が漏れてしまった。

 きっと早期に解決してほしい想いだったのだろう。

 だが、苦労して得た情報を何の対価もなく渡されるような真似をされれば気に入らない。だからと言って依頼人に進捗状況を報告しないのは不義に当たるし、領主が相手では強く意見することもできない。


 情報を共有したおかげで二組のパーティは攻略を順調に進めている。


「だから僕たちは対価を支払ったじゃないですか」

「なに……?」


 ホヴァの視線が険しくなる。


「はい。たしかに預かっていますよ」


 そんな事を聞いていなかったホヴァの雰囲気が鋭くなるが、マルセラさんの言葉で途切れてしまう。

 カウンターの上に置かれる金貨の入った袋。


「エルマーさんから情報開示の要求があったため情報を提供しました。依頼人の意向で情報を求める者には無料で提供するよう言われているのですが、エルマーさんから対価を渡すよう言われています」

「どうして今なんだよ」


 預かっている事を言われた直後に出した事を訝しく思うホヴァ。

 エルマーが自分から言わなければ知ることのなかった事実にネコババしようとしていたのではないか、と疑っていた。


「預かったのは二日前です。昨日は迷宮へ行っていてギルドへ姿を出さなかったので渡すタイミングがなかっただけです」

「そ、そうか……疑って悪かった」


 マルセラさんも疑われていることに気付いた。

 それが冒険者ギルド職員のプライドを傷つけられたようで怒りを露わにして注意していた。


「で、お前らはどうするんだ?」

「そうですね……」


 情報そのものはそれほど必要としていない。

 早期の解決を望むならパレント迷宮の難易度を思えば力任せに攻略してしまうのが最も手っ取り早い。


 当初は2、3日中に終わらせるつもりでいたぐらいだ。

 しかし、ここでエルマーと出会ったことで予定を変更する決定をした。


「俺たちは依頼を諦めます」

「は?」

「こいつらの援護に専念することにします」

今章、メインで戦うのはエルマーたちです。

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[一言]  がんばれ、エルマー(笑)
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