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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第15話 宝箱の罠

 部屋の中には16個の宝箱が等間隔に縦4つ、横4つずつ置かれていた。

 迷宮にも宝箱はあるが、これだけたくさん置かれた部屋はない。

 ただし、形状が同じなだけで大きさはバラバラだ。小さい物は30センチぐらいの大きさなのだが、大きい物だと1メートルぐらいの物まである。大きさぐらいでしか違いが分からない。


「初めてなのか。だったら簡単に説明してやる」


 仲間を助けられた冒険者は気を良くしながら部屋について説明してくれる。


「この部屋は宝箱が置かれた部屋だな。ただし、部屋の中にある16個の宝箱の内ほとんどが罠だ」

「ほとんど?」

「ほとんど、だ。全部罠だった時もあるぐらいの覚悟を持っておいた方がいい」


 部屋の中にある宝箱は既に3個開けられている。


「宝箱に罠があるかどうかはスキルを持っている盗賊職の奴なら確実に分かるんだが、お前たちの中に盗賊職の奴はいるか?」

「一応います」


 シルビアが頭を下げる。

 ただし、その所作は盗賊のものではなくメイドのものだ。

 本人としては冒険者として活動している時はパーティの構成を考えて盗賊として先頭で動いてくれているが、気持ちはいつでも俺のメイドらしい。


「だけど、罠を感知するようなスキルは持っていないので難しいですね」


 シルビアは気配や周囲の状況を感知するスキルは持っているが、宝箱に組み込まれた罠を感知するようなスキルは持っていない。


「そうか、不安なようなら引き返した方がいいぞ」


 そう言って部屋の中にいた冒険者パーティは撤収する準備を始めてしまった。


「あれ、帰られるんですか?」

「罠感知のスキルを持っている奴がいるおかげで俺たちはもう宝箱を2つ開けたんだが、しっかりと財宝を手に入れることができたから撤収するつもりだったんだ。が、新人のコイツが欲を出して宝箱を開けちまったんだよ」


 罠があるかどうかも確認せずに開けた結果がさっきのミミックに腕を喰われた状況というわけか。

 そして、俺たちもスキルで確認せずに宝箱を開けたりすればあんな風になると教えてくれている。見た目は大柄で怖そうな人なのだが、いい人みたいだ。


「ちなみに当たりを引くとこんな物を手に入れることがある」


 腰のベルトに吊るしていた装飾の施された短剣を見せてくれる。

 どれくらいの価値があるのか分からないが、売ればそれなりの値段になるのだろう。


 もう1つの宝箱から得られた財宝はサポーターの背負うリュックの中に入っているみたいだ。


「この部屋以外にも罠はたくさんあるから気を付けて探索するんだぞ」


 冒険者たちが部屋を去って行く。


 さて、俺たちはどうするべきか?


「どれがいい?」


 開けるのは確定事項。

 稼ぎを必要としていないが、経験を積む為に罠のある宝箱に挑戦してみたい。


 遺跡の入り口で進行方向を聞いた時と同じようにどの宝箱を開けるのかパーティメンバーに尋ねる。


「これ」

「これです」


 アイラが大きい宝箱を選び、メリッサが小さい宝箱を選んでいた。


「いや、開けるなら大きい宝箱の方がいいでしょ。中にたくさんの宝物が入っているかもしれないわよ」

「いえ、こういうのは小さい宝箱の方が貴重な物が入っている可能性が高いです。それにミミックに変わった宝箱の大きさを忘れたのですか? アイラさんが開けようとしている宝箱と同じぐらいの大きさでしたよ」

「罠なんて関係ないわよ。どうせならたくさん入っている物を開けた方が開けた時の喜びも大きいでしょ」

「たしかに私たちなら罠なんて関係ないかもしれませんが、だからと言って適当に選んでいいわけではありません」


 2人とも入口の道と同じで特に根拠があるわけでもなく自分が開けたい宝箱を選んでいた。

 こうなったら入り口と同じでシルビアに頼ることにしよう。


「これですね」


 シルビアが選んだのは70センチほどの大きさがある宝箱だ。


「何か根拠があるのか?」

「いえ……2人が大きい宝箱と小さい宝箱を選んでいるので、わたしは中間ぐらいの物を選んでみようかと」

「消去法かよ!」


 とはいえ、シルビアを責めるわけにはいかない。

 スキルを持っていないせいで罠の有無が分からないのは全員同じだ。


「こっちの大きい方がいいって」

「いいえ、小さい方にこそ価値のある物があります」

「わたしの盗賊としての勘がこれだと言っているわ」


 ああ、とうとうどの宝箱を開けるかで喧嘩を始めてしまった。

 それからシルビア、お前が宝箱を選んだ理由は特になかったんじゃないか?


「もう、これでいいよ」


 なんだか喧嘩している光景を見ていると宝箱を選ぶ気力すらも失せてしまったので一番近くにあった宝箱に手を掛ける。


「「「あ!」」」


 俺が宝箱を開ける姿を見て3人が声を上げる。

 同時に……


 ――ドゴォーン。


 部屋の中に爆音が響き渡る。


「けほっ、けほっ……」


 爆音の正体は、俺が開けた宝箱が爆発したことによるものだ。

 俺が開けた宝箱には、開けた瞬間にミミックになって襲い掛かってくる罠が仕掛けられているのではなく、開けた瞬間に爆発する仕掛けが施されていた。


 その爆発を正面から宝箱を不用意に開けてしまったので直撃してしまった。


「だ、大丈夫ですか!?」


 爆発により起こった煙が晴れるとメリッサが近付いて俺の様態を確かめる。


「大丈夫だ」


 そう言うもののメリッサは心配した目をしたままだ。


 まあ、心配するのは無理もない。

 内部からの爆発によって宝箱は粉々に吹き飛び、宝箱の置かれていた床は穴ができるほど吹き飛んでいた。間違いなく宝箱を開けた相手に致命傷を与えることを目的とした罠だ。


 そんな爆発を受けた俺だが、煙を吸い込んでせき込んでいるぐらいでダメージらしいダメージはない。服の方も上に着ているコートも深淵の黒衣という名前のSランクの装備品なので無傷だ。ただし、コートの内側に着ている服はボロボロになってしまった。


「俺だからこんなダメージで済んでいるけど、普通の人間なら死んでいるぞ」


 仮にミミックに襲われていた冒険者がこの宝箱を開けていたとしたら良くて両腕が火傷によって使い物にならなくなる。悪ければ両腕が吹き飛んでいた可能性だってあった。


 一応、回復魔法を掛けて治療してくれるが、一時中断させる。


「いいだろう。当たりを引くまで引き続けてやる」

「あ、ちょっと……」


 とりあえずアイラが選んだ大きな宝箱を開けてみる。


 ミミックに変わった。


「ていっ」


 ミミックに変わっても無抵抗なままでいると頭を咥えられてしまった俺に代わってアイラがミミックの体を両断してくれた。


「次」


 もう、こうなれば作業だ。


 メリッサの選んだ小さな宝箱を開けると中から紫色の気体が漏れ出してきた。

 咄嗟に蓋を閉じるものの中から漏れ出てきた気体――毒をわずかながら吸い込んでしまったのか体が少しだけ怠くなる。この毒も普通なら死に至らしめるような毒なのだろうが、俺が相手では何か月後の話になるのか分からない。


「次」


 最後にシルビアが選んだ宝箱に触れた瞬間、宝箱から針が飛び出してきて腕に突き刺さる。


「こんなもんか」


 針を引き抜くと適当な場所に放り投げる。

 この針にも麻痺毒らしき物が塗られていたが、俺が動けなくさせるほどの力はないみたいだ。


「これが迷宮ならどの宝箱に罠が仕掛けられているのか見破ることができるんだけどな。ここにも適用できないかな」

「さすがにそれは無理ではないかと……」


 上手くいかないものだ。


「とにかく次の宝箱を開けるから選べ」

「まだ、続けるのですか!?」

「4つも開けて全部罠だったんだぞ! 大人しく帰れると思うか!?」


 絶対に罠のない当たりを引くまで帰るつもりはない。


「残りの宝箱は9個。3人で3つずつ好きな物を選べ」

「全部開けるのですか!?」


 普通は、罠を避けて開ける宝箱を選ぶのだろうが、今開けて罠を受けたことで俺たちには罠の効果があまりないことが分かった。

 こうなったら全部開けてやる。


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