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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第39章 巨人叫喚
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第17話 巨人族誕生秘話-後-

 獣人。

 かつて大災害が発生した際の魔力異常による影響を受けて体が変質してしまった者たち。

 肉体に獣の部位が現れるようになったのが特徴だ。


 巨人族(タイタン)から話を聞いて、おそらく同じ現象だと判断した。


「いえ……そういうものだとしか」


 獣人誕生の秘密は一般的に知られていない。

 そういうものだ、という認識さえ持っていれば全く問題なかったからだ。


 けれども、同じ現象が起きているなら彼らにも知っていてもらう必要がある。


「そんな……! 彼らも同じ人間だったのですか!?」


 巨人族になった彼らの中に獣人はいない。

 と言うよりもガルディス帝国には獣人があまりいない為だった。いたとしても山奥で誰に知られることもなく生活しているか、労働力として奴隷になって生きているぐらいしかない。


 獣の特徴が現れ、人間に近い姿をしているにもかかわらず人間とは明らかに違う姿をしていることに人々は迫害を始めた。

 その考えがガルディス帝国では強く残っている結果だった。


 獣人誕生の秘密を教えてあげると、全員が言葉を失くした表情をしていた。

 迫害されることに対して特別な感情を抱いていなかった。しかし、自分の境遇と重ねることによってどれだけ酷い事だったのか理解したようだ。


「俺は、獣人へ巨人族への変化を『進化』だって考えています」

「『進化』……? これが……!?」


 洞窟内が巨人族の声で騒がしくなる。

 肉体が変化してしまったことで苦労している彼らにとっては受け入れられる言葉ではない。

 だが、『進化』という側面があるのも事実だ。


「人間も魔力なしには生きていけません。その魔力に異常が発生してしまったら今まで通りの生活はできなくなります。そんな状況でも生きていこうとするのが人間です。だから環境に適応した体へ変化した」


 巨人族になってしまったことにも何かしらの理由がある。

 それに進化した結果が獣人だと考える理由は別にある。


「みなさんは獣人と人間のハーフが存在しないことは知っていますか?」

「……そういえば聞いたことがないな」


 いくら迫害されていたとしても、時には獣人と人間の間で子供ができることはある。

 しかし、生まれてくる子供は例外なく獣人だ。

 だから獣人と人間の間に子供がいたとしても、獣人のハーフは存在しない。


「ウチにも同じ条件の子供が二人いますけど、どちらも獣人です」


 リエルとノアト。

 どちらにも狐の耳と尻尾があり、母親の特徴をしっかりと受け継いでいてノエルに似ている。

 いや、二人に限った話ではなく子供たちは俺の要素が薄く、それぞれの母親の特徴が強く現れている。


「人間よりも獣人の要素の方が強いんですよ」


 種として獣人の方が強い。

 それが『進化』した結果だと考える理由。


「……では、この体も『進化』した結果として受け入れろ、と言うつもりですか」


 獣人という存在がいるなら、それも一つの選択肢だと言える。

 しかし、洞窟内にいる巨人族から悲しみの含まれた目で見られればそんなことが言えるはずもない。


「ちょっと待っていてください」


 巨人族に待ってもらって仲間内で話し合う。

 原因は解った。


 問題は、解決方法だ。


「普通の人間に戻す方法なんてないよな?」

「そんなの当り前でしょ」

「そんな方法があるのなら、ずっと昔に獣人はいなくなっています」


 ノエルとメリッサから突っ込まれてしまう。

 どうしようもない問題だからこそ獣人はそのままにされてきた。


「けど、原因の排除なんてできないぞ」


 イルカイト迷宮の暴走時における魔力異常が原因だ。

 だが、あの騒動から5年が経ったことでガルディス帝国のあちこちで発生していた魔力異常は沈静化している。

 何らかの原因があって、今も影響を受け続けているのなら原因を排除することによって元に戻すことはできたかもしれない。


 しかし、既に原因は取り除かれ、肉体の変質が完了している。

 当初の計画は既に機能していない。


「彼らの力が強いことは明白です。わたしたちだからどうにかすることができましたが、普通の人なら上から押し付けられただけでペシャンコになってしまいます」

「次に被害が出るようなことがあれば大規模な討伐依頼が出るわよ」


 グレンヴァルガ帝国からSランク冒険者を何人も動員して討伐隊が編成される。

 さすがにそんなことになれば数十人いる巨人族でも無事では済まされない。


「諦めてもらって絶望させるのは簡単だけど、せっかくここまで来たんだからどうにかしてあげたいよな」


 獣人誕生の秘話を知っている俺たちだからこそ巨人族にも同情することができた。

 こうして依頼を受けて赴いたのも何かの縁だ。助けになってあげられるのなら助けてあげたい。


「進化……元の姿……」


 話し合っている間もずっと考え事をしていたイリス。


「どうした?」


 イリスが小さく呟いたのを聞き逃さなかった。

 今は少しでもヒントになる材料が欲しかった。


「もしかしたら、元の姿になら戻すことができるかもしれない」

「本当か!?」


 イリスの言葉に反応したのは俺たちの誰でもなく、巨人族の代表の方だった。


「あ、申し訳ないです。この体になってから遠くまで見えるようになったし、小さな音も拾えるようになったんです」

「いえ、気にしないでください」


 話し合っていることが分かるよう言葉を口にしていた。

 本当に聞かれたくない話だったなら念話で話し合えばよかっただけの話だ。


「それで、本当に元の姿に戻ることができるんでしょうか?」


 代表が恐る恐る尋ねてくる。

 それは巨人族になってからずっと夢見てきた事だ。


「可能……だと思う。ただ試したことがないし、今のところ試せる相手を貴方たち以外に知らないから実験台になってもらわないといけない。それでもいい?」

「構いません。元より棄てるつもりでいる命です」


 イリスにとっても初めての試み。

 問題は、どんな事をするつもりなのか俺にも全く知らされていないことだ。少なくとも獣人を人間に変化させる方法なんて俺は知らない。


「私も獣人や巨人族を普通の人間に戻すことはできない。けど、この人たちを元の姿に戻すことならできるかもしれない。


 イリスが3つのスキルを準備する。

 【施しの剣】と【天癒】、そして【世界】だ。


「――【回帰(リグレッション)】を使う」

5年経っているので、それぞれスキルの新しい使い方があります。

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