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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第39章 巨人叫喚
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第4話 都市復興の翳り

 この5年の間にリオから様々な依頼を受けていた。

 それこそグレンヴァルガ帝国所属のSランク冒険者なのではないか、と疑われてしまうこともあった。

 ただし、今でも公式にはアリスターを拠点にしているAランク冒険者のままだ。


 皇帝からの報酬の支払いはいい。そうして得られた報酬をレジュラス商業国からの借金への返済に充てている。時間さえ得られればリオに資金を用意することはできるし、俺たちなら苦労する魔物の方が少ない。

 リオの協力もあって安穏とした生活を送ることができている。


「で、今回は何が現れた?」


 迷宮が過去に考えられないほど暴走したガルディス帝国。

 本来ならいないはずの魔物も居着くようになってしまったため普通の冒険者では手に負えない場合がある。


「お前には話したと思うけど、今年の春からモンストンへの移住を開始しただろ」


 軍事都市モンストン。

 国境があった場所から最も近い場所にある都市で、グレンヴァルガ帝国との戦争を想定して造られた軍事都市。その目的から元々あった外壁が頑丈に造られていたことから利用して修復されることになった。


 しかし、今のガルディス帝国で都市を再建するのは非常に難しい。なにせ、すぐに魔物が襲い掛かってくるような場所であるため、ちょっと目を離した隙に都市が襲われるようになっている。

 そのため都市の外を常に監視する者と防衛を担う者を大量に動員して、どうにか以前の形を去年には取り戻すことができた。


 再建に掛かった費用は全てガルディス帝国に残された財宝によって賄われた。

 オネイロス平原に避難してきた人たちは今も平原で貧しい暮らしを強いられている。彼らにとって最も叶えたい願いは以前の暮らしを取り戻すこと。都市だけを取り戻すことができても以前の暮らしまで取り戻すことはできない。それでも、将来への一歩にはなる。

 再建したばかりの都市では苦労するのは目に見えていた。だから希望者を募って移住が行われることになった。


「予想以上に人が集まったおかげで復興作業そのものは順調だったんだ」


 オネイロス平原での生活は時間が経ったこともあって簡素な小屋での生活が中心になっていた。

 かつての暮らしを知っている人たちは5年もの間ずっと耐えていた。

 ボロボロに朽ちている建物ばかりとはいえ、しっかりとした屋内で生活できることに憧れていた。


「問題は、移住が開始されて半月ほど経った頃に起こった」


 これまでは都市の再建を目標にしていたが、モンストンが都市として機能するようになったのなら周囲の状況も知っておく必要があった。


「以前はガルディス帝国で活動していた冒険者を中心にモンストン周辺がどのように変わっているのか見てもらったんだ」


 魔物が溢れたことによって以前とは生態系が全く異なっている。


「その冒険者が帰って来なかったんだ」


 すぐさま複数の捜索隊が編成された。

 しかし、その捜索隊も3割が帰還することはなかった。


 ――危険な魔物がいる。


 冒険者や騎士も含めた兵士が帰還しないことからモンストンの統治を任されている領主は皇帝であるリオへ救援を求めた。

 とはいえリオ自身が動く訳ではない。冒険者ギルドを通してグレンヴァルガ帝国が抱える最高ランクの冒険者が派遣された。


「俺が派遣したのは探知能力に優れたSランク冒険者だ」


 特殊なスキルを持っているらしく、宝箱や遭難者を見つけるのが得意な冒険者なので今回の依頼には打って付けな相手と言えた。


「まさか、その人も帰って来なかったなんてことは……」

「いや、ちゃんとモンストンまで帰って来たぞ」


 Sランク冒険者としての面目を保つことができたみたいで安心する。


「ただし、ボロボロな姿になっていたらしいけどな」


 体の至る所に打撲があり、血によって赤くなった場所の方が多いぐらいの負傷をしていたらしい。

 命に関わるほどではないが、現場へ復帰する為には数週間の休養が必要になる。

 それでもSランク冒険者として情報は持ち帰っていた。


「探知能力に優れているとはいえ単純な戦闘能力ならBランク冒険者以上の実力がある。そんな奴でも敵わない――巨人がいるそうだ」

「巨人? オーガとかサイクロプスっていうこと?」


 魔物の中には人と似た姿をした巨人型の魔物がいる。その体躯に見合った膂力をしており、殴られただけでも致命傷を負ってしまう可能性があるのだが、人に近い姿をしていることもあって武器を手にすることもある危険な魔物。


 ノエルの質問にリオが首を横に振る。

 Sランク冒険者が依頼に失敗した、という話を聞いてソニアに頼んでリオもモンストンまで移動した。そこで治療を受けているSランク冒険者に魔法を掛けて見た光景をイメージしてもらい、幻影として持ち帰ることにした。


「問題のある場所はモンストンから西へ10キロほど移動した場所にある渓谷だ」


 渓谷では、その特殊な環境からなのか貴重な薬草を採取することができ、魔物が現れないことからモンストンを拠点にする冒険者の貴重な収入源になっていた。

 一般人でも渓谷までを行き来することができれば稼げる場所。

 それぐらい安全な場所だと知られていたため警戒もしていなかった。


 魔法で空中にガルディス帝国の地図が投映される。

 位置はメリッサとイリスが覚えたようなので迷う心配もない。


「で、これが問題の巨人だ」


 地図の隣にSランク冒険者が遭遇した巨人が投映される。

 たしかにオーガやサイクロプスといった巨人型の魔物とは違う。


「人間、じゃないのか?」


 投映された姿は、人間と同じ肌色の体に人間らしい顔とボサボサであるものの髪をした――人間としか思えない相手。

 なによりも魔物と決定的に違うのは服を着ていること。布を繋ぎ合わせたような簡素な物だが、人間らしい姿をしていることもあって服にしか見えない。


「幻影だと分かり難いかもしれないけど、これで人間の3倍以上の大きさがあったらしい」

「3倍……!?」


 全長6メートルの人間。

 それは、たしかに人間と認めるのは難しいかもしれない。


「今回、依頼したいのはこの場所へ行って巨人の調査を行ってきてくれ」

「分かった」


 せっかく再建したばかりの都市の近くにそのように危険な魔物がいたのでは安心して生活することができない。

 巨人の話はモンストンでの生活を始めた人たちにはまだしていない。しかし、帰還することのできなかった冒険者がいる、という噂は広まってしまっているらしく不安に駆られながら生活しているらしい。

 これは、あまり時間を掛けていられない。明日にでも行動を開始した方がいい。


 詳しい情報については現地――モンストンで集めることにする。

 リオの元にも届いているだろうが伝達しているうちに欠けているものもあるはずだ。


 仕事の話はこれまで、ということで子供たちの方を見てみるとガーディル君が床に伏せて倒れていた。

 ガーディル君の側にいるのは幼い妹だけ。

 他の弟妹は、勝利したシエラに憧れてしまったらしくアイラの教える剣術訓練に参加していた。


 弟妹からも放置される長男。

 そんな姿を見てしまうと、どうにも居た堪れない。


「ごめん」

「いや、構わない。あいつにはちょうどいい敗北になっただろ」


 唯一の救いは【未来観測(フューチャーヴィジョン)】でガーディル君の心が挫けないと分かっていることだけだ。


「じゃあ、子供たちは置いて行くから後は頼む」


 せっかく楽しく遊んでいるのだから連れて帰るのは忍びない。

 今日はアリスターへ帰るなり依頼に備えて消耗品の準備が必要になるが、普段から最低限は準備しているため俺一人で事足りる。

 女性陣に世話も含めてお願いすると一人で屋敷へ戻る。


壁の代わりは渓谷の断崖にやってもらいます。

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[一言]  強く生きてガーディル君・・・(ほろり)
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