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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第39章 巨人叫喚
1162/1458

第1話 5年後

前章から5年経過しています。


第1部のステータスも更新してあります。(露骨なPV稼ぎ)

 カシャカシャ。

 ボウルに入った生地を掻き混ぜる音がキッチンに鳴り響く。その音はお世辞にも均一とは言えず、力に任せて適当に掻き混ぜているだけだった。しかも、その力も子供のものなので足りてない。


「うんしょ」


 それでも少女は自分の成果に満足して手を止める。


「こんなかんじ?」

「どれどれ……」


 ボウルの前から退けて母親に……正確には母親の一人に状態を確認してもらう。


「うん、大丈夫よ」

「やった」


 母親の腰ぐらいの高さで少女が喜びから飛び跳ねている。

 そうして喜んでいる間にボウルを回収する母親。少女からは見えない高さで持って、背を向けて隠すと目にも留まらぬほどの速さで掻き混ぜる。

 実際には足りていなかった。それでも率先して手伝ってくれている少女の優しい想いを無駄にしたくなかったため嘘をついて誤魔化した。


 少女――シエラが足音を立てながらリビングへと向かう。

 リビングには大きくはあるものの低いテーブルが置かれている。10人ぐらいは余裕で座れるぐらいに大きいテーブルを金色の髪を三つ編みにした少女――ソフィアが一生懸命に布巾で拭いていた。


 シエラとソフィア。子供たちの中でも『お姉ちゃん』な二人は、今となっては親の手伝いができるぐらいに大きくなっている。


「ありがとう」

「おかあさん」


 布巾をテーブルに置いてシルビアへ駆け寄る。

 シエラは長女としての責任感からシルビアの仕事を手伝うようになり、ソフィアは血のつながった母親であるシルビアが大変そうにしている姿を見て5歳を過ぎた頃から手伝うようになっていた。


「じゃあ、お兄ちゃんたちを呼んで来て」

「うん!」


 ソフィアが屋敷の庭へと駆け出す。

 庭ではレウスとアルフ、ディオンの3人の男の子が体を動かして遊んでいた。


「おにいちゃんたち」


 妹から呼ばれてレウスとアルフが動きを止める。ディオンは少し前から疲れており走り回るのを止めていた。


「ごはんだよ」

「もう、そんなじかんか」

「きょうのくんれんはここまでだな」

「つかれた……」


 遊んでいるようにしか見えない。けれども、父親と同じ騎士や冒険者を目指しているレウスやアルフにとっては体力をつける為の重要な訓練になっていた。

 体質なのか体力のないディオンは嫌々ながら付き合わされている状況だった。


 3人の男の子たちがリビングへ向かう。


「あ! て、あらわないとだめなんだよ」

「……わかっているよ」


 双子の妹から叱られて渋々ながらリビングへ向かう前に水場へと向かう。

 そんな彼らの後ろを狐のぬいぐるみを抱えた小さな女の子が二人ついて行った。


「おもしろい?」

「うん!」


 庭が見える場所では狐の耳と尻尾を生やした獣人の女の子が庭で遊んでいる3人の兄を眺めていた。

 よく似た少女。初めて見た人なら、双子と勘違いしてしまいそうだが実際のところは姪と叔母の関係に当たる。


 姪であるリエルが叔母のノナを連れて手を洗いに兄たちの後を追う。

 生まれた順番からリエルが姉のように振る舞い、ノナも妹として扱われることに何の疑問も抱いていなかった。二人はたくさんいる兄弟姉妹の中でも最も仲がいいと言っていい。姉妹の中で獣人は二人だけなのが大きな理由だ。

 二人とも大人しい性格をしており、遊んでいる兄たちを眺めながらのんびりしているのが大好きだった。


「ただいま!」


 母親と手をつないでいた女の子が帰ってくるなり、大好きな姉の姿を見つけて駆け寄ろうとする。

 姉であるリエルとノナも抱きしめようとする。


「こら」

「あぅ」


 母親であるアリアンナに止められて自分がいけないことをしたことに気付いた。


「分かればいいけどね。帰って来たら、まずは綺麗にしないとね」

「うん」


 少女――ティナが朗らかに笑いながら頷く。

 3人が笑いながら過ごしている姿を見ていると母親であるアリアンナも穏やかな気持ちになっていた。


「あの二人の方がよっぽど血の繋がった姉妹みたい」

「ま、レウス君も実の妹にはそれほど興味がないみたいだしね」

「アイラさん。ただいま戻りました」

「おかえりなさい」


 遊んでいる子供たちを遠くから見守っていたアイラが傍へ寄ってくる。

 男の子であるレウスは実の妹であるティナよりも齢の近い従兄弟のアルフやディオンと仲良くしていることの方が多い。


「私としては、もっと実の妹を構ってほしいところです」

「その辺は男女の差とか年齢とか色々とあるんでしょ」

「そうですかね」

「少なくとも寂しい思いはしていないはずよ」

「ええ」


 屋敷には子供だけで13人いる。

 リビングへ戻れば熱を発する魔法道具の鉄板の上でパンケーキの生地を焼いているシルビアの姿があった。

 プロの料理人も顔負けの速さで次々と焼いていくシルビア。


 その姿に傍で見守っていた8人の子供たちが賑やかに感心する。


「私たちは手伝わなくていいのでしょうか?」

「いいのいいの。スキルの無駄遣いみたいな気がするけど、一人でやった方が手早く済ませられるからね」


 まず手伝ってくれたシエラとソフィアの前にパンケーキが置かれ、その後は年齢順に配られていく。


 上の子供は下の子供の面倒を見る。

 遊んでいるようにしか見えなかったレウスやアルフも弟や妹の面倒を見ることで親たちの手伝いをしていた。何をしてしまうのか分からない幼い子供に注意をしてくれているだけでも助かっている。


「じゃあ、あたしたちも食べましょ」

「はい。夕食の材料は倉庫にしまっておきますね」


 20人以上の人間が生活する屋敷。

 毎日のように大量の食材が消費されるため先ほども買い物へ行って来たばかりだった。


「そういえば下の子たちはどうしたんですか?」

「上で寝ているのよ」


 食材の保管をアリアンナに任せてアイラが3階にある大部屋へ向かう。

 大部屋は子供たちが集まって遊ぶ為の部屋として解放されており、幼い子供たちを1ヶ所に集めて寝かせておく為の場所としても使われている。


「やっぱり寝ていた」


 部屋の中央に敷かれた毛布の上ではイリスが穏やかな寝顔を浮かべて眠っており、手には子供向けの絵本が握られていた。


 イリスの左右にはフリフリの服を着て蒼い髪をした4歳の少女と紅い髪の3歳半の男の子、濃い茶色の髪に小さな狐耳を隠した3歳の男の子も眠っていた。

 イリスの産んだ少女――ヴィルマ。

 アイラの産んだ男の子――リック。

 ノエルの産んだ男の子――ノアト。


 さらに部屋の奥を見れば誰でも面倒が見られるようにメリッサとシルビアの産んだ女の子が二人寝かされている。


「うん、頑張ったんじゃない?」


 障害に思われていたゼオンが倒れた。まだ懸念はあるものの障害がなくなったことで解放されてしまった。


「大変であるけど、楽しいからいいんだけどね」


 寝ている自分の息子の頭を撫でながら中心で寝ているイリスの顔を見る。

 その顔は以前のようにキリッとしたものではなく、完全に緩んでいた。


「ま、ここで殺気でも出せば跳び起きるんだろうけど」


 ヴィルマが生まれてから完全にデレデレになっていた。

 おまけに自分とは違って女の子らしく育てるつもりなので、女の子らしい服装を着させて可愛らしく着飾るのに余念がない。


「今日のマルスは迷宮にいるから一緒に行ってほしかったんだけど、ヴィルマに絵本を読んで欲しいってせがまれたんじゃ、今のイリスが行くはずないわよね」


 イリスが読んでいたのは『蒼の姫と黒の剣士』という絵本。

 剣を手にして勇敢に戦う蒼い髪をしたお姫様。そのお姫様を助けた黒い髪の剣士との出会いから始まる物語だった。

 子供向けに内容と絵が改変されているものの史実を知っている者ならイリスとマルスがモデルになっていると分かる。

 王都からアリスターを訪れた商人から購入した絵本だったが、モデルになった二人は微妙な顔をして好きにはなれなかった。イリスも避けていたが、娘から読むようにお願いされる頻度の最も高い絵本が『蒼の姫と黒の剣士』であるため向き合わない訳にはいかなくなり、羞恥心に耐えながら読んでいた。


「ゼオンと戦ってから5年も経っているんだもんね。できれば、このまま何も起こらないことを祈るばかりだけど……」


 そんな平穏はグレンヴァルガ帝国からの報せで終わりを告げる。

シエラ(長女7歳)、アルフ(長男6歳)、ソフィア(次女6歳)、ディオン(次男5歳)、リエル(三女5歳)、ヴィルマ(四女4歳)、リック(三男3歳)、ノアト(四男3歳)、セラフィ(五女2歳)、フィーナ(六女半年)


5年経ったことを分かりやすい手段で表現しました。

久し振りにプロットを掘り起こしたら設定だけ見つけてしまったので全員採用しました。

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5年あって話にあって他の100超えてる3つのダンジョン調べてないの?
[一言] 一気に5年も経過させるより 主人公のダンジョンの周辺のダンジョンを攻略して 支配下の収めて行く方が断然良かったのでは。 余りにも膨大な借金返済の為にも収入源は数多くあった方が良いのでは それ…
[良い点] 主人公もオジサンかぁ…… [一言] どこぞの子煩悩な女神さまが草葉の陰から羨ましそうに見てそうだw
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