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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第13話 遺跡突入

 遺跡探索当日。

 ギルドから遺跡探索の正式な依頼を受けたパーティが全員遺跡の前に揃っていた。いや、1組だけ俺たちに襲い掛かろうとしていたせいで体が麻痺してしまい、動けなくなってしまったので足りていなかった。


「えー、1組は欠席のようですが、予定されていた冒険者パーティが全員揃っているので遺跡探索を始めたいと思います。まったく領地が近いから私たちにも探索の権利を寄越せ、とか言うから2組だけ許可したのに……」


 遺跡の入口前に立ったギルド職員が集まった冒険者たちに告げながら愚痴っていた。

 ああ、ルフランが本拠地としているクラーシェルの方が遺跡は距離的にはアリスターよりも近い。そうなるとクラーシェルの領主が遺跡から受けられる様々な恩恵を手にしようと伯爵様に対して動いたのかもしれない。


「まずは、オライアス」

「はい」


 俺たちよりも少しだけ年上の冒険者4人が入口の前まで進み、ギルド職員がパーティメンバーを確認すると入口が開けられ中へと入って行く。

 パーティメンバー全員が入ると遺跡の入口が閉じられ、入口の前にはギルド職員が立っていて他の冒険者パーティが入れないようになっていた。

 そうして別のパーティのリーダーの名前が呼ばれるとそのパーティは入口が開くのを待っていた。


「何をしているんだ?」


 パーティごとに入れているというのは分かる。

 しかし、攻略を急いでいるなら次から次へと冒険者を送り込んだ方が効率いいように思える。


 俺の呟きを隣にいたブレイズさんは聞いていた。


「遺跡探索のルールなんだが、まず1組だけ冒険者パーティを入れる。次に5分ぐらい経過してから次のパーティを入れるっていう方法を取っているんだ」


 本来なら野営地の防衛を任される依頼の時に先輩の動きを見ながらそういった決まりも覚えることになっていたが、俺たちはそういった経験を飛ばしていたから分からない。


「どうしてそんな方法を?」

「最初の頃は、順番なんてない早い者勝ちの探索だった。ある意味では、それも公平だったから誰も文句なんて言っていなかったらしい」


 その場合、先に遺跡を見つけた者の方が有利になる。もちろん探索できるだけの実力を持っていることが前提条件になるけど。


「だけど、ある時に複数の冒険者パーティが偶然にも一度に押し寄せることになった。その時に1組だけ突出した力を持った冒険者パーティがあったらしい。で、そのパーティがほとんどの宝を独り占めしてしまった」


 その冒険者がどうやって財宝を独占することができたのか?


 もちろん他の冒険者が束になっても勝てない冒険者が自分たちの妨害をしてくる冒険者を次から次へと倒していったことに原因があった。

 襲われた方の冒険者は重傷を負ってしまった。


 その事態を重く見た冒険者ギルドが遺跡においても迷宮と同じように冒険者同士の諍いを禁止にした。さらに順番を決めて挑むことによりチャンスが公平になるようにした。

 時間を置いて挑めば遺跡の中で鉢合わせることも少なくなる。


「なんというか色々と考えられているのですね」


 俺と一緒にブレイズさんの話を聞いてメリッサが頷いている。

 ブレイズさんの説明を聞いている内に3組目の冒険者が遺跡の中へと入って行った。


 4組目のパーティが呼ばれたが、まだ俺たちの名前は呼ばれていない。


「そろそろ呼ばれる頃かと思っていたが、お前たちはギルドから随分と期待されているみたいだな」

「どういうことですか?」

「この呼ばれている順番だが、簡単に言えば実力順だ」

「実力?」

「そうだ。実力のあるパーティなら遺跡を奥まで探索できるだろ。逆に実力に不安の奴だと1階や2階ぐらいしか探索することができない」


 そこで改めて目の前にある遺跡を見上げてみる。

 遺跡は、石のブロックを積み上げて造られた物で、中を軽く探索したギルドの予想では1階から5階まであるとのことだ。さらに遺跡は上から見れば四角錐のようになっているので奥へと進むほど面積は狭くなる。


「冒険者への機会を均等にする為に1階から3階ぐらいまでしか探索できないような冒険者を優先的に先へ入れているのさ。逆に奥まで行けるような冒険者は後回しにして冒険者のいる入口付近よりも奥を探索させるように仕向けているのさ」

「そういうものですか」


 そんな話をしている内に5組目の冒険者が呼ばれた。

 しかし、それでも俺たちの名前は呼ばれない。


 今回の遺跡探索には11組50名の冒険者が参加している。その内の1組であるルフランは麻痺しているので初日の今日は不参加。初日の参加者は10組。


 つまり、既に半数の名前が呼ばれたことになる。


 そうして待っていると7組目で呼ばれた……ブレイズさんの名前が。


「おいおい、本当にギルドから期待されているみたいだな」


 ブレイズさんたちが遺跡の入口へと向かったので俺たちはパーティ内だけで会話をすることになった。


「どう思う?」

「ブレイズさんが言っていたようにギルドから期待されているのではないですか?」

「馬鹿ね。ギルドはあたしたちの偽装したステータスやスキルしか知らないのよ。それなのに新人みたいなあたしたちにどんな期待をするっていうのよ」

「それもそうなのですよね」


 そうしてブレイズさんたちが遺跡の中へと入って行き、8組目の冒険者が呼ばれたがやはり俺の名前ではなかった。


 残ったのは俺たちと同じ4人パーティだが、男3人に女1人の逆ハーレム状態のパーティ。ただ、気になるのは4人ともアリスターでは見たことがなかった冒険者だ。

 ルフランたちと同じようにクラーシェルから派遣されてきた冒険者なのだろう。


「初めまして」


 最後に残った冒険者パーティの女性が近付いて挨拶をしてきた。


「ここまで呼ばれないとは随分とギルドから期待されているパーティのようですね」

「どうなんでしょう? 少なくとも俺たちは遺跡探索の依頼を受けるのは初めてですよ」

「そうなると逆のパターンも考えられますね」


 女性が唇に指を当てて考えていた。

 逆のパターンとなると、最近調子に乗っている新人にギルドから警告として儲かるはずの依頼を儲からなくさせるといった感じだろう。目立つのは嫌だったのでBランクやCランクの依頼を淡々とこなしていただけだからそんな風には思われないはずなんだけど。


「次、イリスティア――」

「あら、Aランクである私の方が先に呼ばれてしまいましたね。どうやらギルドの不興を買ってしまったみたいですね」


 ギルド職員に名前を呼ばれた女性冒険者――イリスティアが遺跡へと向かって行く。

 最後に残されたのは、俺たち4人だけ。


「どういうことでしょうか?」


 シルビアが首を傾げている。


 実は、俺にはもう1つだけ可能性が残されていると考えていた。むしろ俺たちの実績を考えればそっちの方が高い。


 イリスティアたちが遺跡の中へと入って行くのを見届けると俺たちも入口の前に並ぶ。

 近くにはギルド職員がいるのだし、せっかくだから確認してみよう。


「あの、俺たちみたいな新人がどうして最後に呼ばれたんですか?」

「順番が実力順だということは知っていますか?」

「はい」

「この実力に関してはギルドマスターを筆頭にギルド幹部によって決められています。あなた方に関しての評価は『遺跡を攻略できるだけの実力はあるだろう。しかし、本人たちが隠したがっているため未知数』とのことです」


 つまり、ギルドとしては今回の遺跡探索で俺たちが無事に遺跡を攻略できるかどうかで俺たちの実力を判断したい。

 こうして順番を後にすれば稼ぐ為に遺跡攻略を優先してくれるはず。

 そういう思惑があった。


 けど、残念ながらその思惑は成就されない。


 もしも俺たちが本当に稼ぎを目的に遺跡へ来ているのなら最奥にある財宝を求めて攻略を優先させたかもしれないが、生憎と生活に必要な資金は迷宮から得られるので稼ぎが少なくて困るようなことはない。

 探索はのんびりとさせてもらうつもりだ。


「では、みなさん頑張ってください」


 少し待っているとイリスティアが入ってから5分が経過したのか遺跡へ入れるようになった。

 さて、どんな場所なのか楽しみだ。



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