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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第38章 迷宮防衛
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第41話 困惑の冒険者ギルド

戦闘シーンが続いたため箸休め回です。

 翌朝、アリスターにある冒険者ギルドを訪れると騒然としていた。


「おい、本当に大丈夫なんだろうな!」

「見間違いなんかじゃないんだって……!」

「本当に魔物が消えたんだ」


 騒いでいるのは前日――俺がゼオンと戦っていた日に迷宮へ行っていた冒険者たちだった。


「ええと……」

「私たちも状況を確認しているですので……」

「まずは落ち着いてください!」


 対する受付嬢は状況が分かっておらず四苦八苦していた。

 冒険者は怒っているでもなく初めて遭遇する事態に困惑しており、どうにかしようと慌てていた。


 受付嬢の方も初めて聞く話にどう行動すればいいのか分からなかった。


「助けてあげないの?」


 隣にいるイリスが尋ねてきた。

 今日、一緒にいるのはイリスだけだ。話し合いだけのつもりなので何人もいても邪魔になるだけだし、冒険者ギルドで話をするならイリスが適任だと言えたため彼女を連れてきた。


 迷宮から突如として魔物が姿を消した。

 迷宮の外では稀にではあるものの起こる現象らしく、そういった出来事があった後には縄張りにしていた魔物が暴走するなどといって事例が報告されている。

 迷宮で魔物が消えたのは初めての出来事だったが、冒険者である彼らは外での出来事から迷宮が暴走する兆候ではないか、と判断していた。


 迷宮が暴走するようなことになれば冒険者として対応しなければならなくなり、対応するのなら問題が小さい内の方がいいという訳だ。

 もっとも、暴走する兆候などではない。むしろ逆の事が起こっている。

 だが、ここに真実を知る者は俺とイリスを除いていない。


「あ……! マルス君は何か知らない?」


 カウンターで対応していたルーティさんが冒険者ギルドへ入ってきた俺たちの姿に気付いて名前を呼んだ。

 すると冒険者たちの顔が一斉に俺の方へ向く。今ではアリスターで最も強い冒険者として知られるようになり、依頼により長期でアリスターを離れている場合を除いて迷宮にいる事も有名だ。


「おい、マルスの奴だぞ……!」

「しばらく外へ行っていたんじゃ」

「帰って来たっていうことだろ」

「あいつなら何か知っているんじゃないか?」

「けど、帰って来たばかりなら迷宮の件を知っているはずがないだろ」


 口々に囁かれる。

 いつの間にか誰よりも迷宮に詳しい、という認識が持たれるようになっており、今回の件も俺が何か知っていると思っているんだろう。

 実際、全ての事情を把握しているどころか犯人と言ってもいい。


 冒険者ギルドへはガルディス帝国へ出発する前に私的な用事で向かうと伝えてあるので、最も注目されている冒険者が留守にしていることから噂としてガルディス帝国へ行っていた事実が広まっていたのだろう。

 これから表向きにどうするのかは決めていない。


「たしかに俺は色々と事情を知っていますよ」

「お、本当か!」

「ただ、俺の持っている情報をどこまで公表するのか決めるのはギルドマスターの仕事です。これからちょっと打ち合わせしてきますよ」


 今日、冒険者ギルドを訪れたのはギルドマスターと詳しく打ち合わせするため。

 かなり無茶をしてしまったため俺一人の手で負えなくなっている。


「ま、迷宮が暴走する訳ではないですから安心してください」

「……お前がそう言うなら信用しよう」


 数年もの間、冒険者として活動してきた実績は無駄ではない。

 俺の言葉を聞いてベテランの冒険者たちは落ち着いていた。ただし、見慣れない若い冒険者の中には情報提供者が自分たちとそれほど変わらない年齢の冒険者だと知って納得していない男性冒険者もいた。


「あんな奴の言葉を信用するんですか?」

「あ? 分かっていないな」

「何がですか?」

「冒険者を長く続けたいなら相手の実力を見抜けるぐらいの力は身に着けておいた方がいいぞ」


 若い冒険者の一人が親しくしているベテラン冒険者に話し掛けている。

 冬が終わって春になれば雪が解けたことで辺境へも楽に行けるようになったことで自分の実力を試したくなる若い冒険者が多く訪れる。そうして無謀にも以前いた街の近くに現れていた魔物よりも強い魔物に打ちのめされてベテラン冒険者の世話になる。

 彼らの関係もそんなものだろう。


「ギルドマスターにご用ですね。私が案内します」

「お願いします」


 ルーティさんに連れられて階段を登る。

 その後ろ姿を若い男性冒険者が見つめている。

 ステータスは上がったのだが、筋肉は目に見えるほどついていないため戦士のように鍛えられているようには見えない。また、魔力の方も限界まで抑えているため一流の魔法使いでようやく俺の魔法使いだと判断できる。

 外見だけなら自分よりも弱いと判断するはずだ。


「勝てない相手には戦いを挑むな。もし、追い詰められて逃げられないようなら生き残るため死ぬ気で戦え――それが教えでしたよね」

「そうだ。そして、あいつはここにいる全員が戦いを挑もうとは考えない」

「なっ……!? Aランク冒険者だっているんですよ!」

「所詮はAランク冒険者だし、あいつらはパーティの全員がAランク冒険者だ」


 正確にはノエルはまだBランク冒険者なので全員ではない。

 ただし、普通の冒険者から見ればノエルも十分にAランク冒険者を超える実力を持っているためAランク冒険者として見做されていた。

 こちらから訂正する理由もないため適当に聞き流す。


「その気があるなら、あいつのパーティの一人が暴れるだけでアリスターにいる冒険者の全員を倒すことができる」

「嘘、ですよね……」

「冗談でこんな忠告をする訳がないだろ」


 ベテラン冒険者が酒の入った瓶を開けていた。今日は朝から冒険者ギルドで騒いでしまったため依頼を受けている気分ではなくなったのだろう。

 冒険者は余裕があるのならこのように自由に過ごすことができるのが強みだった。

 若い冒険者がテーブルの上に銀貨を置く。酒代を奢る代わりに情報が欲しい、という合図だった。


「俺だって見ただけならあいつらが強いようには見えない。おそらく実力を隠しているんだろう。世の中にはそういう奴が稀にいる。魔物の中にだって賢い奴なら自分の実力を隠している」

「そんな人はどうやって見分ければ……」

「バカだな。俺がさっき『見抜けない』って言ったばかりだろ」

「え……」


 相手の実力を見抜く力が欲しい若者にとっては予想外の言葉だったのだろう。

 だが、ベテランの言葉には続きがあった。


「世の中には自分の実力をいつまでも隠したまま過ごせる奴らなんていない。あいつらだって派手に戦争で活躍したり、クソ強い魔物をいくつも狩ったりしている」


 そのせいで有名になってしまったと言えた。

 ただし、有名になった事を面倒には思っても後悔をしたことはない。力が使う必要があると思ったからこそ行動を起こした。そして、迷宮主の力は人々から羨まわれ、嫉妬を買うことは分かっていた。

 これは強い力を行使する上でのデメリットだと諦めている。

 もしも、面倒事の全てを避けて生活したかったのなら力の行使そのものを禁止して、全ての面倒事から目を逸らして生きていけばいいだけの話。

 ただし、それができなかったから今も面倒事を抱える羽目になっている。


「だから事前に調べるんだよ」


 既に警戒しなければならない相手として広く知られているなら、相手の実力を見抜く力なんて関係ない。


「もしも、本気で上を目指すつもりならバカみたいに強くなるだけじゃすぐに終わりだ。もっと使うべきところに頭を使え」

「はい!」


 威勢のいい返事をする。

 その声は上の階にまで届いていた。


「気を悪くしないでくださいね」


 前を歩くルーティさんが謝ってくる。

 この程度の事は織り込み済みで迷宮主の力を表舞台でも行使してきた。


「別に気にしていませんよ」

「ありがとうございます。ギルドマスターとしては若手に期待しているんです。最近は色々と厄介な事件が続いていますし、厄介事のほとんどを解決しているのはマルス君です。ただマルス君たちだけに頼り切っている状況はギルドとして適切ではありません」


 理想としては複数のパーティがほしい。今回のように俺が遠征してしまうと厄介事が起きた時に対処することができなくなってしまうからだ。

 アリスターには実力のあるベテラン冒険者が多くいる。しかし、彼らの実力は頭打ちと言っていいため、若くて伸びしろのある冒険者に期待していた。


「複数のパーティが必要な事は理解できるんですけど、俺たちは引退を考えるような年齢じゃないですよ」

「……そうですよね。私よりも年下なんですよね」

「あ……」


 地雷を踏んでしまったらしく暗くなってしまっていた。


「それよりも、もうギルドマスターの部屋についたようですよ」

「あ、本当ですね」


 ノックをした後、部屋にいた主の許可を得て入室する。

 部屋の中には主であるギルドマスターであるガナシュさんが執務机の前にいた。


 そして、もう一人――


「冒険者マルスとイリスをお連れしました」

「掛けてくれ」


 ソファに座るよう促される。

 対面にあるソファにはもう一人の客人である領主のキース・アリスター様が座っていた。


 打ち合わせはギルドマスターの執務室で行われるが、領主を招いての話し合いの場を要請したのは俺だ。


「では、迷宮で何があったのか報告します」

スイマセン、話し合いを始めるだけで1話使ってしまいました。

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