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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第12話 遺跡探索前夜

 遺跡攻略の為にギルドから依頼を受けてやって来た俺たちだったが、ギルドからは一切指示のようなものは受けていなかった。

 野営に関してもそれぞれで道具を持参して行うということだったのでシルビアたちには使えそうな場所へブレイズさんに案内してもらって準備をしてもらうことにした。


 その間、俺はギルドから派遣されてきた見知らぬ職員に到着したことを告げた。

 どうやらブレイズさんが言っていたように他の冒険者は既に到着していたらしく、俺たちが最後の到着だったらしい。その際、今後はもっと余裕を持って到着するようにと怒られてしまった。


 その後は自由時間となる。

 さすがに俺だけで遺跡の周囲を見て回るわけにもいかないので野営の準備をしている仲間の下へと向かう。

 集合場所は決めていなかったが、迷宮同調を持っている俺たちはお互いがどこにいるのかなんとなく分かるようになっている。


「なんだ、この魔法は!?」


 仲間の下へ向かっていると大きな声が聞こえてきた。

 魔法……


「メリッサが何かやらかしたのか?」


 急いで駆け寄ると普通に家が出来上がっていた。


「お帰りなさい」


 魔法で家を造り上げていたメリッサが俺のことを迎え入れてくれる。

 土魔法で土台を造り、土魔法と水魔法の応用で生み出した木でコテージのような物を造り上げていた。ついでに家の中を確認する。うん、どうやって運び込んだのか分からないがベッドが置かれている。間違いなく家だ。


「一応、聞いておくけどこれは何だ?」

「数日はいるならテントよりもこれぐらいの方がいいかと思ったのですが?」


 たしかにテントよりも快適に過ごせる。

 けど、問題なのはこんな物を魔法で用意してしまえることだ。


「周りを見てみろ。家なんて用意している奴がいるか?」

「ええと……」


 メリッサが周囲の冒険者たちが野営用に持ってきたテントを見る。

 パーティの人数や規模によって数に違いはあるものの基本的に持ち運びができる物である。中には魔法使いのいるパーティもあり、地面を均していたりはしているが家まで用意しているパーティはなかった。


 メリッサも悪気があったわけではない。

 彼女も正式に冒険者となってからは俺たちとだけ行動していたせいで俺たちの行動が基準になってしまっていた。


「すぐに片付けます」

「いいよ。せっかくだから今度機会があった時に使わせてもらう」


 俺が道具箱(アイテムボックス)を使用すれば造り上げた家も一瞬で収納される。

 寝泊まりする場所については、数日掛かりで出掛ける必要のある時に使用するテントを使用することにしよう。道具箱からテントを取り出す。


「なあ、1つ聞いてもいいか?」

「どうしました?」


 家が造られ、その家が消えてテントが出現するところまでを見ていたブレイズさんが疑問をぶつけてくる。


「家に関しては……この際いいとして、この組み上がったテントはどこから出て来たんだ?」

「あっ」


 俺もうっかりをやってしまった。

 パーティで行動している途中からテントを組み上げるのが面倒になってきたので組み上げたテントをそのまま収納してしまっていた。それをいつもの癖でポンと出してしまった。


「メリッサもマルスさんもうっかりですね」


 その様子を微笑ましく見ていたシルビア。

 彼女は率先して食事の用意をしていた。少し早いが、夕食の準備も各々でしなければならない。


「今日は隣で野営をしているブレイズさんのパーティも歓迎して盛大に料理を準備したいと思っています」


 だが、うっかりを犯してしまったのはシルビアも同じだ。


「シルビア……」


 彼女が用意している食事の内容を見て頭を抱えたくなった。

 シルビアの傍には簡易の竈、その上には大きな鍋が置かれていた。持ち込んだ方法は収納リングによるものだ。重さを感じさせることのない収納リングを利用すれば持ち運びが可能になる。


 けれど、周りにいる冒険者たちを見てほしい。

 彼らは自分たちの使ってきた馬車にテントや保存食を積み込んでいるものの調理器具は最低限の物しか積み込んでいない。野営時には普通、保存食や焚火を利用して食材を焼いたりするだけで簡単な調理ぐらいしかしない。

 ここまで大掛かりな調理は滅多にしないが、収納された調理器具を取り出して外でも調理をする。これが俺たちパーティの普通だ。


「あっ……」


 シルビアも俺の視線を受けて気付いたようだが、既に手遅れだ。

 少し離れた場所ではアイラが2メートル近くある猪型の魔物を大きな包丁を使って解体している。普通に包丁と力で解体しているわけではなく、明鏡止水まで使用しているのであっという間に食べやすいサイズへと変わる。


「ん? なにかマズかった?」


 アイラも俺たちと行動して何カ月も経っているせいで常識というものを忘れてしまっているみたいだ。

 ブレイズさんたちがなんとも言えない表情で見ている。


「ま、やってしまったものは仕方ない。夕食は豪勢に行くことにしよう」

「そうですね」


 夕食が用意し終わる頃には暗くなってきた。


「どうやら季節が俺たちのいた世界と違っていたりするわけじゃないみたいだな」


 冬なので夕方になればあっという間に暗くなる。

 竈の火とは別に用意した焚火の前に皆で集まってシルビアが用意したシチューを食べる。寒い季節には食べたくなる食事だ。


「いいな。お前たちのパーティはいつもこんな物を食べているのか」

「いつも、というわけではないですけど、シルビアが料理得意なので助かっています」

「いい子を見つけたわね」


 格好の獲物を見つけたようにブレイズさんとマリアンヌさんが絡んでくる。

 ま、からかっているだけで敵意があるわけではないので適当に付き合おう。


「へ~、アイラは賞金稼ぎをしていたのか」

「そうなの。ちょっと目的があって賞金首を追っていたんだけど、目的も果たしたところでマルスと知り合ってパーティを組むようになったの」

「……気の合う奴と巡り会えたのはいいことだ」


 アイラはグレイさんとギルダーツさんと一緒に食事をしながら話を弾ませていた。前線で戦う者として話が合うのだろう。


 シルビアとメリッサもネイサンさんとリシュアさんと楽しそうにしていた。


 2つのパーティが合流して楽しく食事をしていた。


「いったい、何の用ですか?」


 だから敵意を向けながら近付いてくる相手が気に入らない。


「ガキが随分と調子に乗っているじゃないか」


 近付いてきた相手は20代後半ぐらいの男で鎧と剣を装備していた。傍には剣を装備しているものの軽装の男が2人立っていた。

 俺は最初の頃に先輩冒険者と付き合っていたのでアリスターにいる強い冒険者については一通り知っている。

 しかし、近付いてきた男の顔には覚えがなかった。


「それで?」


 俺がおざなりに返答すると傍に控えていた男2人が怒りを露わにして剣に手を掛けていた。


「よせ」

「ですが、ルフラン様」

「こいつらは新人だから俺のことを知らないんだよ」


 ルフランと呼ばれた冒険者が傍に控えていた冒険者を一喝すると冒険者も黙ってしまった。


「俺はクラーシェルという街で冒険者をしているルフランで、ランクはBだ」

「は、はぁ……」


 ルフランが自己紹介をしてきた。

 クラーシェルという街は、俺の記憶が確かならアリスターから北東に進んだ場所にある街で隣国との国境に近い場所にある交易で栄えた街だったはずだ。アリスターからもそれほど離れているわけではないので、クラーシェルの冒険者ギルドにも迷宮探索の依頼が行っていたのだろう。


「俺は、アリスターで冒険者をしているマルスです」


 こちらも名乗る。

 ただし、自分のランクを名乗って実力を教えるような真似をしない。そんなことをするのは教えることによって自分が優位に立てる者のすることだ。


「なに、遅れてやってきたというのにベテラン冒険者に挨拶もしない新人冒険者がいるという話を聞いてやって来た。しかもパーティメンバーを見れば女性しか連れていないじゃないか」


 ルフランがニヤニヤとした笑みで俺たちを見る。

 リーダーである俺以外が女性の冒険者パーティ。一方、ルフランの方は取り巻きの男たちを見ると男しかいないのかもしれない。


「これは、説教が必要かもしれないと思って訪れたのさ」


 ルフランが一番近くにいたメリッサの肩に触れようとする。

 しかし、メリッサの肩に触れる前に手を掴まれてしまったルフランは投げ飛ばされて地面に叩き付けられることになった。


「この……!」

「気安く触らないでいただきましょう」


 装備から分かる通り前衛で筋力のあるルフランは、同じように装備から魔法使いだと分かるメリッサなら簡単に組み伏せられるだろうと判断したのだろう。だが、生憎とメリッサのステータスの筋力は低い方だが、それでも他の冒険者を圧倒できるだけの力がある。


「おいおい、お前たち本当にBランクの冒険者パーティかよ」

「ブレイズ……」


 地面に叩き付けられたルフランを見てブレイズさんが呆れたような視線を向けていた。


「相手の実力ぐらい見ただけで分からないようじゃ話にならないな。これがクラーシェルの実力か」

「くっ……」


 辺境と他の街では求められる実力が違う。他の街でBランク相当だと認められても辺境に行けばCランクやDランク相当の実力しか持っていないなんてこともあり得る。


「こいつもお前たちと同じBランクの冒険者だ。悪いことは言わないから大人しく謝って帰った方がいいぞ」

「新人がなめたような態度を取っているからだ!」


 そんなことを言っているが、リーダーである俺を睨みつけながらチラチラとシルビアたちに視線を向けていることは分かっている。

 こいつは、美少女を侍らせている俺のことが気に入らないだけだ。


「先輩なら食事をご一緒してもいいかと思いましたが、パーティメンバーに危害を加えそうな相手とは仲良くなれそうにありません。残念ですが、お引き取り願いましょう」

「その態度を後悔しないといいな」

「ご忠告ありがとうございます」



 ☆ ☆ ☆



 夕食後はのんびりとしながら明日以降の探索に備えて早めに就寝した。


 翌日、テントから出ると予想通りの光景が広がっていた。


「後悔することになったのはルフランたちの方でしたね」


 テントの周りにはルフランたちが倒れていた。ルフランと昨日いた取り巻きの2人。それから見たことのない後衛らしきメンバーが2人倒れていた。


 寝る前にしっかりと迷宮魔法でテントの周囲に近付いてきた敵を麻痺させる魔法を罠として仕込んでおいた。

 まさか予想通りに引っ掛かってくれるとは思わなかった。

 大方、新人で女性ばかりを連れている俺が気に喰わないので3人を襲おうとでも考えていたのだろう。


「では装備品をいただこうか」


 さすがにテントに置いてきてある持ち物まで奪うのは忍びないので反抗できないように今持っている物を奪うだけに留める。

 襲われたとしても俺たちなら無傷で済むだろうが、面倒なことには変わりない。

 敵対するような相手からは敵対できるだけの力を奪っておくに限る。


 その後は、適当な場所に放り投げておく。

 麻痺は早くても今日の夜までは解けないはずなので今日1日の安全は保障されたようなものだ。


絡んで来た奴を撃退した報酬

・装備品一式

・所持金

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