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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第38章 迷宮防衛
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第26話 5体の最強魔物

 金色の髪と髭を持つ獅子の獣人にしか見えない青年――黄金の(ゴールデン・メーン)

 白髪の斧を手にした老人――雷獣。

 どちらも獅子型の魔物が人化しており、それぞれの武器を持って奇襲を仕掛けていた。


 しかし、奇襲を予期していたゼオンとキリエに受け止められ失敗してしまう。


「だから言っただろ」


 キリエの拳を弾いて黄金の鬣(ゴールデン・メーン)が後ろへ跳ぶ。


「こいつらは確実に倒す必要がある。できる事は何でもするべきなんじゃ」


 雷獣の斧から雷が爆ぜる。

 無造作に放たれただけの電撃ではゼオンにダメージを与えることができない。それでも唐突な電撃に目が(くら)まされてしまう。


「こんなことをしたところで!」


 目が一時的に見えなくなったとしても気配を辿れば関係ない。

 すぐ傍にいる雷獣に向かって剣を振るう。


『二人とも、離れな!』


 剣が振るわれるよりも早く聞こえてきた声に雷獣とメーンが跳ぶ。


「……チィ!」


 魔力の高まりを察知して雷獣よりも優先すべきだと判断したゼオンが攻撃を止める。

 入口から離れた場所に立つ魔物が魔力を集中させている。


「ブレスだ!」


 警戒態勢に入るゼオンたち。

 しかし、同時に放たれたブレスが彼らを一気に飲み込む。


「ほう、やったか……?」

「この程度で死ぬような奴らかい?」


 ブレスの射線から離れた雷獣とメーンの近くに一人の美女が現れる。

 20代にしか見えない若い女性で、魔法使いが好むような黒いローブととんがり帽子を身に着けている。

 賢竜魔女(ワイズドラゴンウィッチ)。魔法の扱いに長けたドラゴンで、太古に失われてしまった魔法の手解きをメリッサにしたこともある。


 ドラゴンの姿でブレスを放った賢竜魔女。【人化】によって人の姿へ変わると、ゼオンたちがどうなったのか気にしていた。


「どうやら無事みたいだぞ」

「アンタも来たのかい」

「嬢ちゃんに呼ばれたからだ」


 新たに現れたのは炎鎧。既に【人化】しており、ミノタウロスの姿から屈強な大男へと変えている。


「随分と協力的だね」

「……今は迷宮の魔物だからな」


 以前のような戦闘狂らしい荒々しさはなく、穏やかに迷宮で過ごしていた。


「これで鍛えるのさえ控えてくれたらモテるんだろうけどね」

「いいだろ別に」


 体が鍛えるのが趣味な炎鎧はとにかく体を鍛え続けていた。

 そのせいで迷宮にいるミノタウロスの雌とも交流を持っているのだが、暑苦しさを嫌悪されて遠くから眺められていた。


「それよりも、あいつの方が問題だろ!」


 賢竜魔女のブレスが消え、糸の繭に包まれたゼオンたちが見える。


「ありがとう」

「いえ、これが私の役目ですから」

「次はこっちからいこうか」

「はい」


 オネットの糸で耐え切ったゼオンたち。

 テュアルが本を掲げると空中に魔法陣が現れ、魔法陣の向こうから真っ赤なドラゴンが首から先のみ現す。

 赤いドラゴンの口に魔力が集まる。


「……! マズい、さっさと離れた方がいいよ!」

「気にするな。ここは草原だろうから全て焼き尽くしてやる」


 正しくは地下61階から65階にある沼地フィールド。

 水気を多く含んだ地面の上に植物が自生しており、奥の方へ行けば森も存在するのだが入口近辺にはない。そのためゼオンは草原だと勘違いしていた。

 今から放たれようとしているのは魔法で再現された火を司るドラゴンのブレス。いくら水分の多い場所とはいえ、あっという間に燃え広がる。


「――いいえ、都合がいいので撃たせましょう。そこから動かないでください」

「お前は……」


 新たに現れた存在に気付いたゼオンだったが、テュアルの魔法は止められる段階にない。

 ドラゴンの口から炎のブレスが放たれて周囲一帯を燃やし尽くす。


「……ブレスに耐えた俺たちへの意趣返しのつもりか?」

「そんなつもりはない」


 4人の前に立っているのは、茶色い髪を角刈りにした大男。鍛え上げられた筋肉で大男よりも大きな盾を掲げ、盾から放出された光の障壁によって後ろにいる雷獣たちも守り切った。


「面倒臭がりのアンタが【人化】してここに来るなんて珍しいね」

「ノエルから要請を受けた。だから来ただけ」

「亀の姿はどうしたんだい?」

「……こっちの方がいい」


 盾を掲げている大男は【人化】した極限盾亀。普段は立った亀が甲羅のような盾を持っているのだが、今は人の姿をしていた。亀の姿のままでは移動が遅く、敵の攻撃に対処し切ることができないためだ。


「防御は俺がする。お前たちは自由に戦え」

「そういうことなら――こいつはワシが受け持つ!」

「まったく……一番強い奴を持って行くなんて」


 帯電された斧を叩き付け、回避したゼオンが剣を突き出す。雷獣の体に当たる直前、最低限の動きだけで回避すると斧から放たれた電撃がゼオンを襲う。ダメージはないが雷撃に押されて後ろへ移動する。

 さらに押されたゼオンへ向けて斧を投げる。不安定な姿勢だったゼオンは剣で弾いて倒れないようにするのが精一杯。上へ弾き飛ばされた斧を跳んでキャッチした雷獣が落下してくる。

 雷撃を纏う斧。防御せず、無防備に背中を向けると後ろを向く。


「【跳躍】」


 緊急離脱を目的とした移動。

 地面へ帯電された斧を叩き付けた雷獣から離れると背を向けることなく後ろに向かって走り出す。


「むっ」

「付き合ってやる。ついてこい」

「待て!」


 ゼオンを追って離れて行く雷獣。

 今までの戦闘から迷宮の中では最強の自分たちよりもゼオンの方が強い事を彼らは理解している。

 だからこそ雷獣が率先してゼオンを受け持ってくれたことには助かっていた。


「さて、アタシらで残りを倒そうか」


 4人で5人を倒した後にゼオンを残った者で対処する。

 それがノエルからたった今下された指示だ。


「クスクス……随分と舐められたものね」


 リュゼが小さく笑っている。

 そこへ近付く一つの影。


「あら……」


 瞬時に取り出した大剣で攻撃を受け止める。

 すると、受け止めた斬馬刀から炎が放たれて後ろへ跳ばざるを得なくなる。


「見ていてずっと戦いたかったんだ。一人は持って行くからいいよな」

「……一番厄介そうなのを持って行ってくれるのなら構いません」

「そういうことだ」


 二本の大剣同士が衝突し合って熱を周囲に撒き散らす。


「じゃあ、残りの4人をアタシたち3人で……」

「こっちにも付き合ってもらうよ!」


 黄金の鬣の正面から殴り掛かるキリエ。

 既に神気を纏っており、本気で殴り掛かっているのが一目で分かるようになっている。


「随分と直線的な拳だ」

「ありゃ」


 キリエの拳を手の平で弾いて受け流す。

 だが、キリエにとっても想定内の行動。後ろへ回り込んで着地すると拳を突き出す。


「む……」


 鍛えられた黄金の鬣の肉体すら貫ける拳。

 背後へ着地されてしまったことにより拳で対応することができるほどの余裕がない。


「へ?」


 黄金の鬣が振り向くよりも早く体に届いたキリエの拳。

 しかし、後ろへ伸ばされた金色の髪がキリエの拳を受け止めてしまう。


「あんたこの中で一番強いでしょ」

「いかにも」

「だったらわたしと戦いな」


 自分だけで黄金の鬣へ対処することを決めたキリエ。


「では、私たち3人であの二人を倒すことにしましょうか。その後に他の方々を助けることにします」

「これは参ったね」


 自分たちにやろうとしていた作戦をそのまま取られてしまったことに賢竜魔女が頭を抱える。


「構わないよ。どうせ全員倒すことになるんだからね」

雷獣

炎鎧

黄金の鬣

極限盾亀

賢竜魔女

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