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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第38章 迷宮防衛
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第24話 復活の皇帝-後-

 アンデッドエンペラーの問い掛けに思わず戸惑ってしまう。


「出来栄、え……?」

『何十年も前に死んだ人間の鎧に残された残留思念であそこまで自我が強いリビングアーマーを作り出せる訳がないだろう』


 残留思念からリビングアーマーを用意することは可能。ただし、アムシャスだと思っていた存在ほど自我の強いリビングアーマーを作り出すことはできない。


 本気でリビングアーマーがアムシャスだと思い込んでいたゼオンたち。

 アンデッドエンペラーによる再限度もあるが、それ以上に彼らの心の奥底にあるアムシャスを憎む心が不満をぶつけたいという衝動のままに動いて本物だと思い込んでしまっていた。


「私は分かっていましたよ」


 開いた本のページを眺めていたテュアルが呟いた。

 彼女が持つ本にはリビングアーマージョーカーがどのような存在なのか記載されていた。


「どうして言わなかった!?」


 聞かれなかったから、などという理由では済まされない。


「ゼオン様にも不満を解消する必要があります」


 どれだけ忘れたつもりでいても憎しみが完全に消えることはない。それが、こうして現れることになった。


「たとえ偽物であっても精巧に作られた偽物なら不満をぶつける対象にはなり得ます。せっかく、あのような存在を用意してくれたのですから有効利用させてもらいました」


 自分たちで用意することもできる。しかし、自分たちで用意してしまっては最初から偽物だと分かっている。

 精巧に作られた偽物であっても本物なのか偽物なのか分からないからこそ憎しみの対象とすることができる。


『あのリビングアーマーは鎧に宿っていた残留思念、さらに主が集めたアムシャスの情報から「それっぽく」作り上げただけの人格に過ぎない』


 本物のアムシャスがどのような考えを持っていたのか知っている者はこの場にいない。リュゼにしても深く関わりを持っていた訳ではなかったためアムシャスが本当はどのような思いを抱いていたのか分からない。

 だからこそアンデッドエンペラーに作り上げることができた。


『もしかしたら本当に正義心だけで動いていたのかもしれない。それに何かしら特別な事情があった可能性もある』


 だが、そんな事情は誰も知らない。

 迷宮核が最も知っている可能性が高いが、ゼオンはアムシャスの行動を表向きの目的しか聞いたことがなかった。


「だったら、どうしてあんな言葉を……」

『あのように言えばお前たちは無視できないだろ』


 それっぽいアムシャスが現れたことでゼオンは力を発揮した。

 リビングアーマージョーカーが強かったのは事実。苛立っていたゼオンは無駄に強い攻撃をして倒してしまった。


『儂の目的はあの攻撃で成就されたと言っていい』


 余裕綽々といった様子のアンデッドエンペラーを睨み付ける。


 直後、神気を纏った剣で斬り掛かる。

 神気を纏った状態での斬撃はアンデッドエンペラーの存在そのものへダメージを与えることができ、直前には靄になっていたにもかかわらず悲鳴を上げたくなるほどのダメージを与えていた。



 ☆ ☆ ☆



「何をやっているんだか……」


 地下57階での出来事を思い出して思わず溜息を吐いてしまった。


「いやぁ」

『面目ない』


 作戦を考えたアイラが殊勝にして、アンデッドエンペラーが頭を下げている。最後にダメージまで負ったので看過できない事態だ。


「最初の作戦だと関わりの深いアムシャス皇帝と会話させることで時間を稼ぐのが目的だったよな」


 本物である必要はない。あくまでもゼオンたちを足止めできるぐらいに「それっぽい」存在を用意することができれば良かった。

 アンデッドの中でも最上位に位置するアンデッドエンペラーの協力もあって彼らを騙せるぐらいに本物そっくりのリビングアーマーを作り出すことには成功して、会話によって時間を稼ぐことに成功した。


「誰が煽れなんて命令した」


 ゼオンたちのトラウマに相当する部分を刺激した。おかげで猛り狂ったゼオンたちは凄まじい勢いで攻略を進めている。

 あれから数分しか経っていないのに地下58階の攻略をすぐにでも終わらせてしまいそうだ。


「お前の提案があったからゾンビだけでなくグールやゴーストまで動員して襲っているんだぞ」


 せっかく手に入ったのだから利用しているのだが、今となっては壁にすらなっていない。


「思い付いた時はいい案だと思ったんだけど……」

『逆に挑発し過ぎたせいで攻略速度を速めてしまっているな』


 もうやってしまったものは後悔したところでどうしようもない。


「俺も案が有効なのは納得している」


 効率を考えて納得した。

 ただし、個人的な感情としては反対だった。


「人のトラウマを刺激するような真似はしたくなかったな」

「あたしだってやりたくないわよ。それでもやった甲斐はあったでしょ」


 ゼオンを消耗させることには成功した。

 アイラだって心情的には提案したくなかっただろうが、俺たち全員の事を考えて提案してくれたんだ。許可まで出したんだから俺が後悔する訳にはいかない。


 今は先の事を考える方が優先だ。


「あと1時間ほど時間を稼げれば俺たちの賭けは完了する。賭けたことでゼオンをどうにかできるのか分からない」


 それでも賭けに頼るしかない。もう頼れるのは他にない。

 だから猛り狂って突撃を繰り返している彼らを足止めする必要がある。最下層まで到達するのは不可能だろうが、これ以上は進めたくない。


「責任は取れるな」

『儂は大群を生み出し、率いることに特化した魔物。だからと言って儂自身が弱い訳ではない。この身がどれだけ役に立つか見せてやろうではないか』


 靄になって消えるアンデッドエンペラー。

 地下60階で迎え撃つべく移動した。


「残った全戦力を地下61階へ投入だ。予定通りにここで決着をつける」

総力戦の前にアンデッドエンペラーには頑張ってもらいます。

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