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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第38章 迷宮防衛
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第21話 亡者の支配する世界-中-

 後ろへ跳ぶゼオンたち。

 自然とテュアルが前に立つ形になり、彼女の前にいるアンデッドの大群が上から強い力によって潰される。


「重力の魔法です。このまま圧し潰します」


 アンデッドの能力は生前の能力に影響を受ける。全てのアンデッドに共通しているが、生者から不死者へなった時にステータスが弱体化してしまう。

 元騎士のアルバも剣技を覚えていただけで、超重力に耐えられることなく体を残すことなく潰されてしまう。

 数百体もいたゾンビが一瞬で消え去った。


「無駄だ。どれだけの数を用意したところで……」

『第二陣』


 再び地面を突き破って先ほどと同数のゾンビが出現する。


『先ほども言ったように大量の素体が手に入った』


 大勢の人間が亡くなった光景を目にしたアンデッドエンペラーはマルスに頼んで単独行動をさせてもらっていた。

 その間、少しでも多くの死体を回収して自らの身の内へ吸い込んでいた。


 ローブの内側は髑髏になっており、骨の内側には真っ黒な闇が広がっている。そこへは自らアンデッドへと変えた者を収納することができ、必要に応じて出すことができる。

 出す時は自分の傍へ出すことになる。そのため軍隊を瞬時に出現させるには向いていないため、事前に迷宮の地下に埋めておいた。


 新しく出現したアンデッドの中には騎士服に身に纏った者もいる。


『貴様たちにとっては雑魚同然の奴らだろう。今のように数百人を用意したところで、たった一発の魔法によって消されてしまう。ならば簡単な話だ』


 数百人で足りないと言うのなら数千人、数万人と用意すればいいだけの話だ。

 それだけ大勢を用意してもゼオンを倒すには足りない。しかし、こうして逐次投入していけば次々に向かわせることができる。


『戦力の逐次投入は相手を倒すことを考えているなら愚策だが、お前たちを相手にするなら問題ない』


 消耗するばかりで本当に対処しなければならなくなった時には必要な戦力が足りなくなっている。

 だが、アンデッドエンペラーは全てのアンデッドを動員したところでゼオンには敵わないと分かっている。

 だから消耗を最低限にして最大の効果を得る事を選んだ。


『最奥まで辿り着けることを祈っていよう』


 黒い靄になって消える。

 残されたのは数百人のゾンビ。数百メートルがゾンビによって埋め尽くされており、向こう側がどうなっているのか見ることができない。先ほどのように魔法で一掃したとしても補充される。また、ゾンビを無視して先へ進んだとしても行く手を阻むように補充されるのは目に見えている。

 アンデッドエンペラーには数万人規模の戦力がある。


「こいつらを潰すのは簡単だ」

「はい。10回ぐらいなら連発が可能ですし、少し休憩を挟んでいただければ再度放つことも可能です」


 余裕のあるうちに連発できるよう準備を終えていた。

 だが、それでも消耗は無視することができない。


「あいつらに付き合ってやる必要はない」


 本能に従っただけの行動でゼオンたちへ狙いを定めて駆け出す。

 自分たちが死ぬことになったきっかけを作りだした彼らを恨まないはずがなかった。


「リュゼ、【聖】属性の魔剣を出せ」

「あんまり消耗したくないんだけどね」


 手を振ると白銀色の魔剣がリュゼの手に現れる。

 【聖】属性を持つ魔剣。触れるだけでもアンデッドは浄化され、振る度に剣からアンデッドを浄化する光が放たれて動きを止めざるを得なくなる。


 対アンデッド用の魔剣。

 しかし、魔剣は【聖】属性の魔法効果とは相性が悪い。

 アンデッドを浄化する能力が付与された魔剣も使う度に消耗していき、しばらくすると朽ちてしまう。


 リュゼのスキルは魔剣を召喚しているだけ。瞬時に手にすることができる、という利点はあるが保管されている魔剣を使用している。そのため使っている魔剣が朽ちるようなことになれば二度と使うことはできなくなる。

 喚び出したばかりの魔剣も迷宮の力で生み出した貴重な代物。貴重性を考えれば使いたくはない。


「その程度の消耗は許容範囲内だ。それにお前だって使ってみたいって言っていだろ」

「そうなんだよね。せっかく手に入れた魔剣なのに貴重過ぎて使う機会があっても使えないんだもん」


 転移魔法陣のある方向を見定める。

 アンデッドの大群を配置したアンデッドエンペラーはゼオンたちがどのようなルートを通るのか分かった上で配置している。

 密集している場所を突き抜けた先に転移魔法陣がある。


「任せたぞ」

「りょうかい」


 白銀の魔剣を手にして突撃する。

 阻もうと正面へ殺到したゾンビが魔剣から放たれた光を浴びて浄化され、側面から近付こうとしていたゾンビが顔を斬られて機能を完全に停止させる。


 リュゼの後ろをゼオンたちがついて行っている。

 ただし、ゾンビたちはアンデッドに猛威を奮うリュゼを恐れるあまり彼女を優先して攻撃し、次々と倒されていっている。人間のように理性的な行動ができれば近付くだけでも危険だと判断できたが、低級のアンデッドにはそのように考えることすらできない。


「抜けるよ!」


 ゾンビの大群を抜ける。

 転移魔法陣のある場所までは4キロ以上の距離があるが、墓石のある乾いた大地が続くばかりで誰もいない。


「……そんな事はなかったみたい」


 タイミングを合わせてゾンビの大群が地中を突き出て現れる。


「リュゼ」


 キリエから神気が供給される。魔力や神気の他者への譲渡は難しいが、彼女たちのように同じ主へ仕える眷属同士なら難なく譲り渡すことができる。


「うん」


 神気を得たことで体が軽くなったリュゼが新たに現れたゾンビを斬り倒しながら前へ進む。



 ☆ ☆ ☆



「ちょっと休憩」


 地下57階へと続く転移魔法陣の前で足を止める。

 ゾンビの大群は後ろへ置き去りにしており、転移魔法陣の近辺ではゾンビを潜ませていなかったおかげで少しばかりの猶予が得られていた。


 リュゼが回復薬を飲み干すのを待っている。

 このように待っているのも地下56階へ移動した直後にアンデッドエンペラーから奇襲を受けたのが原因だった。

 転移直後は迷宮の攻略で隙ができやすい状況の一つだと言っていい。同じように奇襲された時の事を危惧して回復するのを待っていた。


「注意だけは怠るなよ」

「大丈夫よ」


 転移魔法陣で移動したことにより目の前の景色が一変する。

 先ほどは暗い墓地にいたが、今度は円形の舞台と舞台を囲む観客席があるどこかの闘技場のような場所へ移動させられていた。


 移動した直後を狙った斬撃。奇襲を警戒していたリュゼの持つ魔剣によって弾かれて奇襲した者も後ろへ吹き飛ばされる。


「そんなに大したことはないかな」


 攻撃してきたのは首のない鎧を纏った男性のアンデッド。

 リビングアーマー。鎧に魂が宿ることで、鎧の中に誰もいないにも関わらず自立して動くことができる。後ろへ吹き飛ばされた時に体が傾き、兜がないおかげで鎧の中身が見えたが中身は空っぽだった。


「あれは--」


 鎧を【鑑定】してもリビングアーマーだと表示されるだけ。

 しかし、見覚えのあった鎧へ【鑑定】をしてみたところ困惑せずにはいられなかった。


「どうして、あんたがここにいる!?」


 頭部のない相手へ尋ねたところで言葉が返って来ることはない。

 代わりに届いたのは念話による言葉。


『マディン家の末裔、それにリュゼ将軍までいるのか……アンデッドにさせられた時は悔しかったが、今がどういう状況なのか聞き、こうして目の前に現れた以上は私がどうにかしなければならないのだろう』


 彼らの前に現れた鎧は、戦争で前線へ出陣する皇帝になる男が纏っていた鎧。

 そして、鎧に宿っている魂も鎧を纏っていた人物のものだとはっきりした。


「アムシャス皇帝……!」

次回、復活の皇帝です。

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