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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第38章 迷宮防衛
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第18話 砂に埋もれた世界-中-

 オネットの異様な雰囲気に鎌となった杖を構えるグランドメデューサ。


「……!?」


 オネットから目を離していなかった。それでも気付いた時には側面へ回り込まれており、背後を取られようとしている。

 凄まじい速さ。地面が砂で駆け抜けた時の音がなければ完全に見失っていた。


 音を頼りに後ろへ鎌を振り回す。


「残念。見失っただけです」


 振り向いたグランドメデューサの後ろ――正面だった方向から声が聞こえ、蹴り飛ばされ砂の上を跳ねる。


「なるほど。音はブラフだったっていうことかい」


 見上げながら呟く。

 上へ大きく跳び上がったオネット。彼女の体には糸が絡み付いており、特に右足へ厚く絡まって脚甲のようになっている。


 右足の狙いを地面にいるグランドメデューサへ合わせると一気に速度を上げて落ちる。

 脚甲はランスのように先端が尖っている。そのような物に上から貫かれればひとたまりもない。


 左右へ逃げても追って来る可能性がある。

 そこで、グランドメデューサは体から力をフッと抜く。


「いない!」


 脚甲で砂漠を貫いたオネットが慌てる。

 砂へ沈み込んでいったのを見ており、一瞬だけ間に合わなかったことを悟った。


「いったい、どこへ……」


 その時、オネットの背後で砂が吹き飛ばされる音が響く。

 砂を押し退けて現れたのはグランドメデューサ。先ほどの背後から襲われた意趣返しをする為に砂の中を移動して背後へと回り込んでいた。


 伸びた下半身の尾。下半身をバネのようにして跳び上がったのは見た者の誰もが分かる。

 けれども、オネットは顔を向けることすらなくグランドメデューサの状態を把握していた。

 ただし、そんな事は関係ない。グランドメデューサは背へ向けて鎌を振りかぶる。


「……!?」


 だが、そんな体へ大量の砂が掛けられて攻撃が中断させられてしまう。

 グランドメデューサが砂の飛んできた方向を見れば網のように編み上げられた糸が見えた。


「よそ見をしている暇はありませんわよ」


 足下に違和感を覚えて上へ跳ぶ。しかし、その頃には砂漠はグランドメデューサの支配する世界ではなくなっていた。

 砂の下から幅30メートルの板が飛び出してくる。


「違うさね。これも糸だわ!」


 固められた糸は、板かと思うほど固められていた。

 跳んでいたグランドメデューサが糸の板に着地する。足をつけた時の感触は地面に立った時とほとんど変わらない。


 そして、下が砂でなくなったことでグランドメデューサにとって不利になった。


「さあ、決着をつけましょう」


 糸が絡まりオネットの手にランスと盾が作られる。

 糸の上を真っ直ぐ走りグランドメデューサへランスを突き出す。

 体を傾けてランスを回避するとグランドメデューサも負けじと鎌で応戦するが、盾に受け止められ再度突き出されたランスに体が斬られる。


「この……!」


 糸の板の向こうから砂が飛び出してオネットへと向かう。

 しかし、オネットのいる位置まで距離がある。叩き付けるように飛ばした砂の塊は後ろへ跳んだことで回避され、操ることのできた少量の砂も盾によって弾かれてしまう。

 これが不利になった結果。


「随分と苦戦させられているようですわね」

「そうさね。よくもまあ、こんな方法を思い付くものだよ」

「誉め言葉として受け取っておきますわ」


 糸の板の下にある砂を先ほどから操って突き破ろうとしている。けれども、頑丈な糸の板を突き破るには至っていないため砂を利用することができない。


 それに砂の補給ができないのは近接戦においても致命的だ。

 悟られないよう自分の持つ鎌を見る。


「分かっておりますよ。その鎌に使われている砂は時間の経過と共に消耗されていく。最初のような威力を保つ為には定期的に砂を補給する必要があるのですよね」

「……よく気付くじゃないかい」

「これぐらい見ていれば分かります」


 消耗など関係ないオネットが突撃する。

 突き出されるランスを鎌で応戦して弾き返すが、防御する度に鎌を形成している砂が削り取られていく。

 このまま打ち合いを続けていれば数分と経たずにグランドメデューサから武器が失われてしまう。杖は残されることになるが、オネットの糸を打ち破れるほどの威力を出すことはできない。


 それぐらいなら、いっそ……


「ふんっ!」


 鋭く振り下ろされる鎌。

 刃の軌跡に沿って砂が斬撃となって飛ぶ。


「これは厳しいですわね」


 盾で受け止めるのが難しいと判断したオネットが盾を砂の斬撃に向かって投げ捨てる。想像した通り、盾はあっさりと両断されてしまう。

 だが、オネットの目的は片手を自由にすることにあった。

 砂の斬撃に向かって左手を伸ばすと、溢れるように飛び出した糸が斬撃との間に分厚い壁を形作る。


 最初は斬ることができていた砂の斬撃だったが、2メートルほど進んだ所で動きが完全に止まり、ついには斬撃の形を失って崩れてしまう。

 糸の壁の中にただの砂だけが残されている。完全に力を失った状態ではグランドメデューサでもどうすることもできない。


 しかし、斬撃を防げたことで安堵したオネットの足を止めることには成功した。

 オネットの側面と斜め後ろに地面から浮かび上がった砂が球体となって現れ、口から吐き出されるように飛び出した砂の砲弾が高速で迫る。先ほどまでのように圧倒的な量の砂で圧し潰そうという目的の砂ではない。オネットを撃ち抜く為に発射された砂。

 安堵していたオネットでは全ての砲弾へ対処することができていない。


「見えていますよ」


 もちろんグランドメデューサにも分かっていた。

 編み込まれた糸にはオネットの魔力が大量に含まれており、感知器官の役割を果たしている。

 だから、そこら中に張り巡らされた糸を通してオネットはあらゆる出来事を知覚することができる。


 罠を設置しても糸を通して感知されてしまう。だからこそ、グランドメデューサは一瞬の間に攻撃手段を用意し死角を作ったうえで攻撃することにした。

 砂の砲弾が用意されてから到達するまでは3秒。その間にできる事は……


「私の力を過小評価してしまいましたね」


 オネットへ向かって飛んでいる最中のまま空中でピタッと止まっていた。

 砂の砲弾にはオネットの手から伸びた糸が刺さっている。


 砂の砲弾にはグランドメデューサの魔力が込められている。発射された後からでも魔力を通して操作することが可能だ。


「……動かない!?」


 ところが砂の砲弾はピクリともしない。

 まるで別の者に支配されているようだった。


「何をしたんだい」


 該当する人物は一人しかいない。


「これが私のスキルです。糸を通して魔力を送ることで対象の動きを操作することができる。たとえ相手が砂の砲弾であろうとも糸さえ刺されば、このように操作することも可能です」


 オネットへ向かっていた砂の砲弾が方向を変えてグランドメデューサへと飛んでいく。

 防御に使える砂も周囲にはない。下が糸であるため普段とは違う感覚に蛇の体を活かして回避することもできない。


「ぐ……ぐふっ!」


 腕と胸に砂の砲弾が当たったことで腕が砕け、胸の骨が折られてしまう。


「これで終わりですわ」


 グランドメデューサの胸に深々とランスが突き刺さる。

 心臓を貫かれたことでグランドメデューサの体は動きを完全に停止させた。

ネタバレになるので、どうしようかと思いましたがタイトルは-中-です

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