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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第10話 迷宮接続

「それで、次元遺跡っていうのはどういう場所なんだ?」


 冒険者ギルドから屋敷のリビングへと場所を移して迷宮核(ダンジョンコア)から情報を聞き出す。

 初めて行く場所なのだから色々と準備が必要になる。だが、俺たちは準備に何が必要なのか知らないどころか目的地についての情報を何も持っていなかった。


 通常なら何日も前から冒険者ギルドで情報を集めて準備をしたいところではあるのだが、生憎と準備に費やせる時間は今日しかない。


 リビングにあるテーブルにパーティメンバー全員が着くと頭の中に響いてくる声と会話をする。


『先に断っておくけど、次元遺跡については僕も知っていることは少ないよ』

「お前にしては珍しいな」


 初代の迷宮主(ダンジョンマスター)の頃から何百、何千年と存在してきた迷宮核は偏りがあるものの様々な知識を所有している。


『次元遺跡はちょっと特殊な場所でね』

「特殊、ですか……」


 メリッサが呟く。

 パーティの頭脳役である彼女としては未知の場所が気になるのだろう。

 ルーティさんも別の空間と繋がっていると言っていた。

 普通の場所でないことだけはたしかだ。


(マスター)の住んでいた村の近くにある森が魔物を長期間放置すると異常発生する場所なのと同じように、長期間空間に滞留した魔力が遺跡のような特殊な場所にある魔力と共鳴することによって別世界にある遺跡と一時的に空間が繋がる。それが次元遺跡の発生だよ』


 やっぱり行き先は別世界になるらしい。


「別世界って言っているけど、移動はどうしているんだ?」


 改めてギルドでルーティさんからもらった地図を確認するが、俺の知識ではそこは何もない草原だったはずだ。

 迷宮のように空間を移動する為の魔法陣でもあるのだろうか?


『その時によって繋がった向こう側の世界は違うけど、世界の行き来は空間を繋ぐ光の膜を通ることによって行われるよ。特に害のあるような物ではないから普通に歩くといいよ』


 世界の行き来に関しては実際に見てからでないとよく分からない。


「遺跡はどういう場所なんだ?」

『それこそ、僕は実際に見たことがあるわけじゃないから知らないよ』

「実際にどんな場所なのか分からないと準備のしようがないんだけど……」

『アイラにも分かりやすく説明するなら迷宮の遺跡フィールドを思い出してみるといいよ』

「あそこか」


 レンガのような物による壁に囲まれた迷路を進むことになる地下66~70階。

 草原や海フィールドのような開放感のある場所ではなく、壁にある松明による灯だけが頼りの広い通路を進んで行く迷宮。途中で出てくる魔物も動く(リビングアーマー)包帯男(マミー)が中心になっており、構成は墓地フィールドと似ていた。ただし、その強さは遥かに強くなっており、魔物は進化していた。


「あそこは次元遺跡を参考に造られた迷宮だったのか」

『そうだよ』


 それならある程度イメージはしやすい。

 実際に足を踏み入れたことはないが、迷宮についての情報は全員がイメージで受け取っていた。


「遺跡フィールドは特に制限とか設けられていなかったけど、次元遺跡の方は何か能力が制限されたりするようなことはないのか?」

『ううん。ないみたいだよ』

「普通の魔法やスキルは問題ないとして迷宮に関連するスキルで使えない物があったりしないか?」


 ここが重要だ。

 俺たちが強者でいられる最大の理由が圧倒的なステータスと迷宮から得られる特殊なスキルにある。

 もしも、迷宮操作や迷宮魔法が使えなくなれば単純に剣で戦うしかなくなる。俺たちのステータスならそれでも対応できるかもしれないが、できることとできないことの確認は大切だ。


 迷宮核が低いテンションで答える。


『……迷宮操作で壁を造ったり、迷宮魔法で攻撃魔法を使ったりすることに関しては問題ない』


 まるで、他には問題があるみたいな言い方だ。


「では、具体的に何が問題なんですか?」


 メリッサも魔法使いとして使用制限のある魔法は気になる。


『……迷宮魔法ならダンジョンへ戻って来る「転移」。それから遺跡内部にいる味方との迷宮同調は使用可能だよ』


 ああ、迷宮核のテンションが低い理由が分かってしまった。


 転移と迷宮同調。

 両方とも遺跡の外に対して使われることになる魔法とスキルだ。


「もしかして、遺跡の中だと世界が違うせいで外との直接的な移動や通信が制限されることになるのか?」

『……そうだよ』


 俺たちにとって弊害はない。

 世界の行き来は特殊な力が必要だったりするわけではなく、簡単にできるみたいなので普通に出入りすればいい。


 問題は、迷宮の最下層で留守番することになる迷宮核だ。


「おまえ……俺たちのことを覗き見することができないからって拗ねるなよ」

『だって!』


 そう、迷宮核は俺たちの冒険を覗き見することができないことに対して拗ねていた。

 普段は迷宮同調を利用して俺たちの感覚と同調することによって外の様子を見ることができる。しかし、遺跡の中に入ってしまうと迷宮同調の接続が切れてしまうために覗き見ることができなくなってしまう。


『永い時を存在している僕にとってようやく現れてくれた迷宮主のプライバシーを覗くことだけが楽しみだったんだ!』


 迷宮核は同調してくれる相手がいなければ迷宮の内部しか把握することができない。なまじ人だった頃の感覚まで転写してしまっているせいで退屈な時間というものが苦痛だった。

 そう言われては納得せざるを得ない……


『だから君たちの冒険譚を一緒に体験したり、初体験を覗いたりするという僕の楽しみが次元遺跡だとできないんだよ!』

「ちょっと待て!」


 前半は、まあいい。

 後半から何をしているって言った。


「俺は迷宮同調をオフにしていたはずだぞ」


 こっちから拒絶すれば迷宮核から覗くことはできないようにすることができる。

 さすがにプライバシーな部分まで覗かせるつもりはない。


『ははっ、分かっていないな。君はたしかに迷宮同調を拒絶していたけど、シルビアはどうだったかな?』


 シルビアへ視線を向けるとサッと視線を逸らされた。


「シルビア……」

「だって、あの時は一杯一杯だったので……」


 迷宮同調のことまで気が回らなかったか。

 それは、気遣うことのできなかった俺に責任がある。


 次いでアイラに視線を向ける。


「あたしは言われたから切っておいたわよ」

「私も切りました」


 2人ともきちんと気付いてくれたようだ。


『うん。3人ともしっかりと対策をしてくれていたよ。だけど、対策をしていたのは「迷宮同調」だけで、「迷宮接続」にまで手が回っていなかったようだね』

「迷宮接続?」


 アイラが聞きなれない名前のスキルに首を傾げている。

 迷宮接続は俺のレベルが急激に上昇したことによって新しく得たスキル。どんな経験によってレベルが急上昇したのかは考えないようにしている。


 気付いたのは地下39階で夕陽を眺めながらのことだったので俺も簡単にしか確認していない。


「たしか、迷宮の外に置いた拠点と迷宮を繋ぐスキルだったな」


 俺の場合ならこの屋敷が拠点になっている。


 スキルを確認した時は、これで迷宮の行き来が楽になるぐらいにしか考えていなかった。実際、転移先に屋敷が登録されている。


『その通りではあるけど、迷宮接続の本質は屋敷も迷宮化させてしまうところにある。つまり、この屋敷すら僕の認識下に置くことができるんだ』

「「「「え?」」」」


 迷宮核の言葉を聞いていた全員が声を上げる。

 つまり、俺が迷宮接続を手に入れた瞬間から屋敷も迷宮核の監視下に置かれるようになった。


『君が迷宮接続を手に入れたのはシルビアのステータスを上げた後だよ。いくら迷宮同調を拒絶しようとも屋敷で行われていたことは僕が全て把握している』

「どうにかして遮断する方法を考えましょう!」


 シルビアがいつになく声を上げる。

 俺も同意したいが、どうすればいいのか方法が今のところ分からない。スキルの使用に慣れれば自然と分かるだろうが、今は転移先が増えた便利な能力ぐらいにしか思っていなかったためできない。


 だが、人の行動を覗いてくる奴には罰を与えないといけない。


「次元遺跡の調査は決定事項。人のプライバシーを覗いてばかりの奴にはちょうどいい罰だろ」

『そんな!』


 シルビアたちも特に反対するつもりがないのか意見は出てこない。

 とりあえず色々とあったが、普段通りの探索向けの準備をしておけばいい。


 シルビアと俺で食糧や日用品、アイラとメリッサにはポーションや探索に必要な消耗品の買い出しを頼んだ。俺たちには道具箱や収納リングがあるので賞味期限を考える必要がないので、10日分もあれば十分だろう。


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