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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第38章 迷宮防衛
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第6話 灰色の風渦巻く世界-前-

 アリスター迷宮の地下31階から35階は高山フィールドとなっている。

 高い山を頂上から下っていく。高山でしか得られない素材などを入手することができるため、素材を必要としている薬師から頼まれた冒険者がいるため人の出入りが多く、長閑な雰囲気の漂う場所だった。


 だが、今は普段とは全く状況が異なる。

 阿鼻叫喚といった様相を呈しており、長閑な山での採取活動を想定した装備をした冒険者たちが逃げ惑っていた。


 彼らが逃げる先には転移結晶がある。今は一刻も早く迷宮から離れたくて仕方ないといった様子だ。


「おい、何があった?」


 ゼオンが逃げていた男の一人を捕まえる。

 しかし、捕まえられた男はゼオンに構っている場合ではなかった。


「あんたらも早く逃げた方がいい。さっさと逃げないと奴が来るぞ!」

「奴……?」


 その時、断崖の向こうから空を飛ぶ魔物が姿を現す。

 現れたのは灰色の毛をした鷲の魔物。翼を左右に大きく広げた体は30メートル近くあり、体を起こした状態で山の頂上にいるゼオンたちと高さを合わせ、鋭い目で睨み付けている。


「こんなものまで隠し持っていたのか……!」


 【鑑定】を行ったゼオンには鷲の魔物の名前が見えていた。


 風禍鷲(フレスヴェルク)。全てを朽ちさせることのできる風を生み出すことのできる、禍を齎すと言われている魔物。

 既に現れることのなくなった強大な魔物で、もう普通は見ることのない魔物。そんな魔物であっても迷宮にはデータさえ残されていれば再現することが可能だ。


 神話にしか存在しない魔物が敵意を剥き出しにしている。


「ひぃぃぃっ……!」


 それだけで頂上まで逃げてきた数人の冒険者が怯えて腰を抜かしていた。

 地下30階以降で活動することができるのだから中級以上の力を最低でも持っている。そんな彼らでも睨まれただけで戦闘不能になってしまった。


「こんな……マルスたちがいない時に来るなんて……!」


 若いのに迷宮の深い階層で活躍するマルスたちは、同じように迷宮で活躍する冒険者たちに有名だった。

 実際は迷宮主で確認の為に迷宮で活動しているだけなのだが、そんなことは普通の冒険者でしかない彼らに分かるはずがない。

 フレスヴェルクが大きく羽ばたく。叩き付けるような風が巻き起こり、山にいた人々を吹き飛ばしてしまう。吹き飛ばされなかったのはゼオンたちぐらいで、多くの者たちが風に巻き上げられて頂上の中央まで運ばれていた。


「そういうことか」


 運よく全ての冒険者が転移結晶の傍まで落とされ、必死に手を伸ばすと階層を移動する為に魔力を流す。

 下の方から巻き上げられた者たちも含めて十数人もいたのに全員が同じ場所に墜落する。そんな都合のいい話があるはずがない。


『彼らを巻き込むのは本意ではない』


 全てはフレスヴェルクの意思によるもの。


「随分と優しいな」

『これでも紳士なつもりだ』


 普段は力を抑えて、姿も普通の鷲と見分けがつかないよう偽装して高山フィールドで生活している。

 ボスの役割も迷宮が生み出した魔物に任せている。


『しかし、迷宮主からの命令となれば聞かない訳にはいかない』


 ゼオンを全力で排除するよう命令を受けている。

 恐ろしい力を持っているにもかかわらず好戦的ではないフレスヴェルクは気乗りしなかった。だが、マグマグランドドラゴンの最期を聞いて気が変わった。


『あれだけの覚悟を見せた者がいたのだ。ワシも相応の気概を見せなければ奴に合わせる顔がなくなる』


 今のフレスヴェルクは全力だ。

 再び風を発生させる。ただし、今度は灰色に澱んでいるのがはっきりと見える。


「あの風に触れるなよ」

「分かってる!」


 全員が山の頂上から退避する。

 駆け抜ける一陣の風。その風が通り抜けた場所には草が生え、岩も転がっていたのだが瞬く間に風化して消えてしまう。

 これが禍と言われた鷲の魔物の力。


『ワシの起こす風はあらゆる物を朽ちらせることができる。死にたくなかったのなら早々に帰ることをおススメする』

「戦わないのか?」

『ワシは戦いが嫌いでな。可能なら帰ってもらえると助かる』

「そういう訳にはいかないんだよ」

『そうか』


 フレスヴェルクの目が怪しく光る。

 次の瞬間、ゼオンのいた山が灰色の渦巻く風に包まれる。


「これは……」


 試しに落ちていた石を投げてみる。

 すると、風の障壁に当たった瞬間、石が風化してしまった。

 強烈な風に当たったことで吹き飛ばされてしまった、ということもある。しかし、それ以上にフレスヴェルクの放つ灰色の風が原因になっている。


 完全に閉じ込められたゼオンたち。しかし、山を囲むように展開されているため灰色の風の檻を避けて下層まで進むのは可能だ。


「飛び降りて一気に進むつもりだったんだけどな」

「無理をすれば出られるかもしれないけど……」

「今のところ無理をする必要性も感じられませんね」


 リュゼとテュアルが風の檻を見ながら呟いた。


「「……!?」」


 その時、風の檻の向こうから灰色の光が線になって飛んでくる。

 逸早く気付いたリュゼが幅の広い魔剣を出現させて光を叩き落とす。


「バカ……それに触れるな」

「おっと……」


 魔剣の刃が風化してしまう。

 リュゼが叩き落としたのは、フレスヴェルクの放ったブレス。ドラゴンのように広範囲を攻撃することを目的にした攻撃ではなく、灰色の風を圧縮させた貫通力に特化した攻撃。

 それでいて風化する能力は失われていない。


 リュゼが防御している間にテュアルが本から魔法を発動させて反撃していた。

 咄嗟に発動させた【火球(ファイアボール)】の魔法。火の球が風の檻へ飛んで行く。


「あら……」


 火の球が当たったのは、ブレスが飛んできた場所のすぐ隣。その場所の力を一時的に弱めたから突破できたのだと思い込んでいた。

 ところが、石と同じように火の球も消えてしまった。


 本を見て状況を確認するテュアル。


「檻の力は弱めておりません。ただ、あのブレスに風の檻を貫通することができるだけの力が備わっているだけの話です」


 同じ灰色の風が備わった檻とブレス。

 ブレスが貫通に特化しているなら風の檻を突破できないはずがなかった。


『言っただろ。ワシも本気を出させてもらう』


 決して風の檻に閉じ込めて簡単には階層を突破できないようして終わり、という訳ではなかった。

 本気でゼオンたちを排除しようとしている。


『そこから出るつもりなら覚悟をしてもらおうか』


 灰色の風が円形の刃のようになって飛び出してくる。

 回転する刃に斬られた地面が消し飛ばされる。今の攻撃はゼオンの10メートル隣を通り過ぎて行った。


『コツは掴んだ』


 風の檻の中にいる相手へ向かって攻撃を放つのはフレスヴェルクにとっても初めての体験だった。風の檻を突破する時の衝撃まで計算に入れることができておらず外してしまった。


『次は当てよう』


 灰色の風の刃が何十本と突破して来る。

フレスヴェルクのビジュアルは、灰色のどデカいウォー〇ルですね

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