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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第9話 遺跡攻略依頼

「あ、やっと来ましたねマルス君」


 冒険者ギルドを訪れると俺を待っていたらしいルーティさんが迎えてくれた。

 まあ、1週間ぶりの冒険者ギルドだから久しぶりと言われても仕方ない。


「何かあったんですか?」


 いつもと変わらずに騒がしい冒険者ギルド。

 いつかあったように緊急依頼が出されたような慌ただしさもない。


「あ、緊急事態というわけでもないので安心してください」

「なんだ」


 ホッと一息吐いたところでルーティさんが俺の左右にいるパーティメンバーを見る。そして、最後に俺を見て一言。


「皆さんおめでとうございます」

「え?」


 ルーティさんにお祝いを言われるようなことに覚えがなかった。


「マルス君は平静を装っていますが、他の3人は少女から大人の階段を上ったことが分かります。これまで冒険者ギルドの受付嬢として様々な女性冒険者を見てきた私が言うのですから――」

「ちょっと!?」


 俺たちの間に何があったのか一目で見抜かれてしまった。


「冗談です」


 舌を出しながら冗談だと謝罪してきた。


「ただ冒険者になりたての頃のマルス君を知っている身としては弟のように思っていた相手が3股もかけてしまうのが少し残念です」

「えっと……」

「これも冗談です。彼女たちが今の状況を受け入れていることは、彼女たちの顔を見れば一目瞭然ですから」


 左右にいるパーティメンバーを見ると恥ずかしさから誰も俺と視線を合わせてくれなかった。ちょっと寂しい。


「1週間もギルドに来てくれなかったことなんて今まで1度もありませんでしたけど、一体何をしていたんでしょう」


 ルーティさんが訝しんで俺を見てくる。

 いや、7日間の内4日はルーティさんの想像通りのことをしていたけど、残りの3日間は疲れた俺が心を癒す為に夕陽の見える迷宮で黄昏れて過ごしていた。その間、シルビアたちはリーダー不在の状態で依頼を受けるわけにはいかない、と思い思いに過ごしていた。


 とにかく、この話はそろそろ切り上げないと危険だ。


「それで、俺たちを待っていたみたいですけど何か用事でもあったんですか?」

「そうでした!」


 本当に忘れていたみたいでカウンターの引き出しから1枚の依頼票を取り出して笑顔になる。


「マルス君たちにお願いしたい依頼があります」

「俺たちに?」


 これまでにも依頼を紹介してもらった経験はあるが、今までとは少し事情が違いそうだ。


「内容は『次元遺跡の調査』です」

「次元遺跡?」


 聞いたことのない名称が飛び出てきた。

 シルビアたちを見ると彼女たちも聞いたことのない名称なのか首を傾げていた。メリッサまで知らないとなるとあまり知られていないことなのかもしれない。


 だが、俺たちにはもっと頼りになる知恵袋がいる。


『そのイベントが来ちゃったか……』


 迷宮核は知っているのか『次元遺跡』という言葉に反応していた。

 彼は、歴代の迷宮主の行動もしっかりと把握しているので俺と同じように迷宮主をしながら冒険者として活動していた者についても覚えている。


 ルーティさんの前では話を聞く余裕はないので、屋敷に帰ってから詳しく聞いてみることにしよう。

 今は、ルーティさんの依頼内容の説明の方が優先だ。


「マルス君はアーカナム地方が辺境と呼ばれる理由を知っているかしら?」

「土地に宿った魔力が原因ですよね」

「その通り」


 アリスターの街があるアーカナム地方には潤沢な魔力があり、魔力を糧に生きている魔物の多くが引き寄せられるようにアーカナム地方へと集まって来ていた。さらに大地に宿った魔力が強い魔物を生み出し、魔物の脅威がある危険地帯へと変えていた。


 とはいえ、デメリットばかりではない。

 魔力が一種の防壁の役割を果たしてくれるおかげでアーカナム地方は周囲からの環境変化を受けにくくなっていた。それによって気候が安定している。また、魔力の影響により大地が肥沃なので農業は盛んになっており、辺境の魔力で育った魔物の肉は美味しくなっている。


 危険地帯ではあるが、恩恵の多い土地。

 それが辺境に対する認識だった。


「概ね間違っていませんが、辺境には一般には知られていない問題点もあります」

「そんなものがあるんですか?」

「はい。一般人に対する危険性はないので周知されていないだけです。一般に危険が及ぶ前に冒険者が対処することになっています」


 そんなことになっていたなんてデイトン村にいた頃は知らなかった。

 もしも緊急性のある危険がないにもかかわらず周知してしまったせいでパニックになったり、辺境から人がいなくなったりしてしまうよりは冒険者の方で対処をした方がいいということだろう。

 その辺の機微に関しては分からない。


「その、次元遺跡も一般には知られていない情報ですか?」

「そうです。大体2、3年に1回ほどのペースで発見される施設なのですが、辺境にある魔力が影響して異世界にある遺跡と空間が繋がってしまうことがあります」

「異世界?」

「私たちも異世界がどのような物なのか詳細は理解していません。ただ、こことは違う場所にある空間だという認識だけです」


 それで、いいのか?

 とは思ってしまうものの危険に対処するだけならそれで十分なのだろう。


「この遺跡には入れる人数が限られています。でも、中で得られる財宝に貴重な物があることがありますので冒険者ギルドでは選抜した実力のある冒険者のみを遺跡に送り込むようにしています」


 少なくとも俺たちは冒険者ギルドからある程度の実力を認められたため遺跡調査の話を持ち掛けられた。


「次元遺跡は冒険者が必要な場所なんですか?」

「中にはそれなりの強さを持った魔物が現れます。その魔物は次元遺跡を放置し続けると遺跡の外へと出てくるようになるので遺跡を攻略するまでの間に外へ出ないように討伐する必要があります」

「遺跡の攻略、ですか?」

「遺跡の規模や構造はその時々によって違いますが、共通していることとして最奥にいる魔物を倒し、財宝を得ることによって遺跡は全ての機能を停止させます」


 どうして、そんなことになっているのかは分からないらしい。

 俺も迷宮主としてちょっと興味が惹かれた。


『遺跡関係の依頼はあんまりオススメしないな……』


 けど、消極的なのが迷宮核だ。

 いつもなら普段は受けられないような特殊なイベントが発生すれば喜々として俺に受けるよう言ってくるにもかかわらず止めるように言ってくる。


「マルス君にはこの遺跡攻略に参加してほしいんです」


 ルーティさんが紹介した依頼の内容については分かった。

 迷宮核が気にしている問題点などについては後から確認するとしてパーティメンバーがどのように考えているのか確認しなければならない。


「わたしは構いません」

「他の場所だと受けられない依頼だし、面白そうね」

「純粋に知的好奇心から興味があります」


 パーティメンバーの同意も得られた。


「というわけで俺たちも受けたいと思います」

「ありがとうございます。場所はこちらになります」


 引き出しから今度は遺跡が発見された場所が記された地図を取り出した。

 地図で遺跡の場所を確認すると迷宮とは反対側アリスターの街から北東へ進んだ場所にあるのが分かる。


「ちなみに現地集合になるので明日の正午までに着くようにしてください」

「明日!?」


 ちょっと急すぎる。

 現地までは普通の冒険者なら歩いて3時間ぐらいの場所だ。

 俺たちなら急げば1時間以内には辿り着くとはいえ、あまり時間は残されていない。


「この依頼は本来なら5日前から募集をかけていた依頼で、今日マルス君たちが来なければ依頼の話は見送るつもりでした」


 それは、1週間もギルドに来なかった俺たちが悪い。

 本当に俺たちでなければいけない急ぎの案件だったならば屋敷まで行く選択肢もあっただろうが、遺跡調査の依頼はギルドから厚意によって貰っている話に過ぎない。


「分かりました。明日までに準備をして現地に向かいたいと思います」

「よろしくお願いします。遺跡についての説明は私からするよりも現地にいる先輩冒険者から聞いた方がいいと思います」


 依頼内容は分かった。

 色々と揃えないといけない物はあるだろうが、俺たちの中で唯一遺跡について知っている迷宮核から話を聞く為にも屋敷へ帰るべきだろう。


「では、私の方からも簡単に説明させていただきます――」


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