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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第38章 迷宮防衛
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第2話 岩に覆われし世界

 アリスター迷宮地下25階。

 地下21階から続く鉱山フィールドの最奥にはボスがいる。時々によって出現するボスは違うが、最も出現率が多いのは土から造られた柱を繋ぎ合わせたような姿をしたゴーレム。


 硬いものの一点集中の物理攻撃や、魔法を浴びせることによって破壊が可能であるゴーレム。時折、ミスリルが含まれるゴーレムが出現することもあり、希少金属であるミスリルを狙った冒険者が何度も挑戦することもある。


 倒しやすいのは岩のように硬い鱗を持った蜥蜴型の魔物など。体内は硬くないため、口内のように体内へ攻撃を当てることができれば一撃で倒すことができる。


 だが、今いる魔物は全く違う。全長20メートルという巨大な岩を中心に、同じく岩で作られた前脚と後脚を持つ四足歩行の魔物。体の至る所からは尖った岩が突き出ており、正面についた目を侵入者へ鋭く向ける。

 先ほどボスの姿を目撃した男は、ボスから視線で射貫かれただけで逃げ帰ってしまった。


狂岩亀(クレイジーロックトータス)――普通の冒険者にどうにかなるようなレベルの魔物じゃないぞ」

「少なくとも地下25階で出てくるような奴じゃないわね」


 クレイジーロックトータスもボス部屋に侵入が現れたことに気付く。

 ボスとして召喚された身にあるのは、侵入者の徹底的な排除。


『グモオオオォォォォォォ!』


 吠えるクレイジーロックトータス。

 敵を威嚇すると同時に周囲に自らの魔力を与えることを目的としている。


 ボス部屋は広い円形の部屋で、壁や地面、天井の全てが硬い鉱石によって構成されている。

 これまで以上に価値のある鉱石が手に入り易い空間。だが、ボスとの戦闘を行いながら採掘ができる訳もなく、倒した後も一定時間が経過すると転移魔法陣が消えてしまうため採掘に費やせる時間は少ない。

 冒険者の中にはボスと戦って時間を稼ぎ、採掘専門の者を連れてきている場合もあった。ただし、近くで戦闘が行われている状況での採掘は危険極まりないため引き受けてくれる者は極少数だ。


「向こうは、私たちの事を相当警戒しているようですね」


 魔力が浸透した周囲を調べるテュアル。


 彼女が持つ本には様々な情報が記載されており、順次更新されるようになっている。事前に得ていたアリスター迷宮の情報も記載されている。しかし、現在は凄まじい勢いで地下25階にあるボス部屋の情報が更新されていた。

 【地図】と同様に情報を得られるのは現在いる階層のみ。

 ボスと対峙したことによって正確な情報が得られるようになった。


「一切の財宝を与えるつもりがないようです」


 現在のボス部屋は硬い岩盤のみ。

 ただの岩であるため希少な鉱石どころか、鉄鉱石の欠片すら手に入らない。


「問題ない。財宝には興味がないからな」


 ボコ、ボコッ!

 ゴツゴツとした岩肌だったが、平らだった壁や天井。


 至る所から岩が突き出て、先端を鋭くしながら形を変える。

 これがクレイジーロックトータスのスキル――ロックエッジ。

 触れることすらなく岩を刃のように変形させることができ、敵に向かって飛ばすことができる。


 いつしかボス部屋を埋め尽くしてしまう岩の剣。

 クレイジーロックトータスの命令に従って一斉に飛び出すとゼオンたちへ全方位から襲い掛かる。


「リュゼ、道を作れ」

「はいはい」


 前へ出て走るリュゼ。

 彼女へクレイジーロックトータスのいる方向から飛んできた岩の剣が飛来する。

 一度に何十本と飛んでくる岩の剣。ただの岩を剣の形にしただけではない。マルスの手によってボス部屋の岩盤は通常よりも硬く、頑丈にされている。

 もちろん、その程度の事はテュアルも知っており、リュゼに伝えられている。


「あははっ、そんな事をしたってむだむだ!」


 両手に持った二本の魔剣を振り回しながら走る。

 今のリュゼが使用しているのは破壊力を増強する魔剣。魔剣に叩かれた岩の剣がボロボロに崩されている。


 正面からの攻撃はリュゼが全て捌いている。

 だが、全方位から迫る攻撃。残った岩の剣が殺到する。


「オネット」

「あら、(わたくし)でよろしいのですね」


 オネットの手から垂れる糸。

 左右へバッと広げられる腕、巧みに動かされる指の動きに合わせて糸が生き物のように動き、岩の剣を絡み取ると弾き返す。

 弾き返された先には別の岩の剣がある。


「数が多すぎるのも考え物だな」


 岩の剣と岩の剣が衝突して砕け散っている。

 ゼオンたちの元まで届く岩の剣は1本もない。


「あまり時間を掛けるつもりはないんだ」

「そういうこと!」


 クレイジーロックトータスの元まで辿り着くリュゼ。

 持っていた二本の魔剣を放り捨てると1本の長い魔剣を取り出す。


「斬!」


 魔剣から放たれた斬撃がクレイジーロックトータスの左前足を斬り飛ばす。


「ありゃ、後ろも斬り落とすつもりだったのに」


 左前脚を斬り落としただけでは止まらなかった斬撃が左後足を僅かに斬ったところで消えてしまった。

 防御力が飛躍的に上昇したことで耐え切れた。


「【鉄壁】か。そんなものまで持たせているなんて随分と力を注いだな」


 クレイジーロックトータスが持つのは、岩のような力に、岩のように頑丈な体、周囲の岩を操る能力。

 さらに防御力を向上させるスキルは持っていない。


「おっと」


 無事だった右前脚が飛び出てくる。

 リュゼが回避すると硬くされているはずの岩盤の地面に大きな穴を開けている。

 脚の1本を斬り落とされてもクレイジーロックトータスは諦めていない。というよりも何も考えていない。ただ、本能の赴くままに目の前の敵を殲滅する。それがクレイジーロックトータスの生き方と言っていい。


 目が怪しく光る。

 直後、天井が崩れて岩が雨のように落ちてくる。

 落ちてくる岩は操られている訳ではない。自然に落とされているため、ゼオンたちは落ちて来ない場所を見極めると体を滑り込ませるようにして回避する。


 だが、当のクレイジーロックトータスには直撃している。

 そもそもが移動することが苦手なクレイジーロックトータス。自らにも落石によるダメージがある自爆技とも言っていい攻撃。そんな攻撃をするのも相手を倒すことだけを考えており、自分がどうなるのかは考えられていないからだった。


「で、どうやって倒そうか」


 落石を回避しながらゼオンに確認するリュゼ。

 ゴーレムのように岩だけで造られたクレイジーロックトータス。体内に弱点である魔石はあるが、硬い岩によって守られている。

 体内のような弱点を抱えていない硬い魔物。


「何の為にスキルを使わせたと思っているんだ」


 スキルを使用するにあたって魔力を消耗したクレイジーロックトータス。

 その際、魔石が強く反応している。本来なら捉えるのが難しい反応。シルビアでも硬い岩に囲まれた状態では正確に捉えることができない。


「捉えました」


 しかし、テュアルの本には魔石の位置が正確に表示される。


「穿て――神の矢」


 【迷宮同調】によって魔石の位置情報を共有したシャルルの持つ弓から神気から作られた矢が射られる。

 真っ白な光を放ちながら飛ぶ矢がクレイジーロックトータスの胸に突き刺さり、貫通して背中から飛び出してくる。


 直後、立っていたクレイジーロックトータスが力を失って倒れる。


「たしかに硬い。けど、そういった魔物ほど硬い防御の内側に致命的な弱点を抱えているんだ」


 動きが遅い……全く身動きがなかったため狙いを定めるのは非常に容易。

 問題は、岩の体を貫けるだけの攻撃力と魔石の位置を特定することができる能力を備えていること。


「今回はこれが手っ取り早かったから魔石を破壊したけど、次からは可能な範囲で魔石を回収しろよ」


 魔石が破壊されたことで内包されていた魔力が迷宮に回収された。

 これではゼオンの目的を達成することができない。


「奴らはボスを用意して俺たちを攻めてくる。魔石を奪って奴らに迷宮の魔力を使わせろ」

ビジュアルの元ネタは、ギガイ〇スです。

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