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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第81話 オーガの大軍勢

 雷獣が跳び込んでいったのは大軍勢の左側。


「では、反対は私が対応することにしましょう」


 人型になっている海蛇。

 水がなければ蛇の姿で活動することができない。この水がない洞窟で戦う為には人型で活動する必要があるが、蛇でないからといって弱くなる訳ではない。むしろ水の扱いに対する集中力は向上する。


「【水爆符】」


 突如として発生した水の壁が大軍勢の最前列にいたオーガに叩き付けられる。

 とても水とは思えない威力を発揮し、水によってペシャンコになっている。

 さらに弾けた水を利用し、形を矢のように鋭く変えて飛ばすとオーガたちの脳天へ突き刺していく。


 扇を手にした美女が悠然と立つ。

 その姿にオーガたちの本能が刺激されている。


「あれらは私が引き受けます。貴方たちはアレをどうにかしてください」


 視線だけをオーガマスターへ向ける。


「ぐぬぅ……」


 一方、オーガマスターは悔しそうに歯を食いしばっている。


「何をしておる! さっさと倒せ!!」

「あら……」


 海蛇の水の矢を弾くオーガが現れた。

 全身を鎧で守ったオーガナイト。頭部も兜で守られているから水の矢も弾かれてしまった。


「それだけでありませんね」


 オーガたちの体を薄く赤い光が纏うようになった。

 その光がオーガの体に何かしらの強化を与えている。


「マスターらしく部下を強化するスキルってところか」

「ですが、多少の強化です」


 扇をオーガナイトへ向ける。すると、頭上に浮かぶ水が螺旋を描いて集まる。


「――貫け」


 水の矢よりも貫通力の上がった攻撃がオーガナイトの頭部を貫く。

 攻撃した海蛇は平然としているが、緻密な水の操作に消耗させられていた。疲労を露わさないよう扇で口元を隠している。


「何度もできるような攻撃ではありません。行動に移すなら早めにしていただけるとありがたいです」

「こっちこそありがとう」


 海蛇を置いて6人で走る。

 向かう先は、ゴーレムが押している正面部分だ。雷獣と海蛇が暴れてくれているおかげで左右には余裕ができた。その分の戦力を中央部分へと集めることでオーガを押し返せている。


 一体のゴーレムの後ろへ向かう。同時に命令を出してゴーレムの出力を限界まで引き上げると、肉弾戦をしていたオーガが投げ飛ばされる。さらに後ろにいたオーガまで巻き込んでゴーレムが突撃する。

 孤立してしまうゴーレム。四方をオーガに囲まれた状況で孤立すれば、そう遠くないうちにボコボコにされてしまう。


「お前の犠牲は忘れないよ」


 直後、オーガに囲まれたゴーレムが自爆する。

 爆発によりゴーレムの突っ込んだ場所が開くことになる。


「各々、分かっているな」

「オーガの間を縫うぐらいなら大丈夫ですよ」


 爆発により密集陣形が崩れる。

 シルビアがするするとオーガの間を突き進んでいく。オーガたちは、自分たちに比べれば小柄な女性であるシルビアの存在に【隠密】も含めて気付くことができない。


 だが、オーガマスターは別だ。


「何をしておるッ! 敵はそこだ!」


 オーガマスターにはシルビアの位置が分かる。

 命令を受けたオーガが地面を潰す勢いで腕を振り下ろす。オーガたちの気分は、人間で言えば虫を叩き潰すようなもの。しかし、シルビアには一切の攻撃が当たらず、当たるはずだった攻撃も全てすり抜けられてしまっている。


「オノレッ……」


 オーガマスターの注意が完全にシルビアへ向いている。

 ちょうどいいことに囮になってくれていた。俺たちの位置もバレているはずなのだが、攻撃を掻い潜るシルビアの方が目立っている。


「捉えた」


 目の前にはオーガがいる。しかし、オーガマスターまでの間に障害物がなくなったことで視界に捉えることができた。


 3本のナイフが投擲される。

 正確にオーガマスターを狙った攻撃。だが、シルビアの投擲はオーガマスターの傍に控えた大盾を構えたオーガによって阻まれた。


「どけいっ!」


 オーガマスターの命令によって盾を装備したオーガとシルビアとの間にいたオーガたちが道を開ける。

 盾を手にしたオーガが跳び上がる。着地地点にはシルビアがおり、着地と同時に盾で潰すつもりなのか盾を下に向けている。


 鎧を身に纏い、大盾を装備したオーガ。

 速度を得意としているシルビアには不得手な相手だ。


「そういう訳でよろしく」


 二人の間に割り込んだアイラが剣を盾に叩き付ける。


「硬った……!」


 【明鏡止水】まで使われた斬撃。しかし、盾に特殊な金属でも使われているのか切断するには至らない。

 スキルが通用しなかったことよりも問題なのは盾の強度。何度も打ち合うようなことになればアイラの聖剣でも耐久力の問題から折られてしまう可能性がある。


「持ってて良かったサブウェポン」


 アイラの収納リングから人の身の丈ほどある槌が出てくる。

 人間を相手にしていたなら潰すことを目的にしていた武器。アイラのフルスイングによって叩き付けられた槌が盾にヒビを入れる。


 盾を手にしたオーガがニィ、と笑みを浮かべる。


「何を笑っているのよ」


 一撃で終わらずアイラが何度も槌を叩き付ける。

 盾はどうにか耐えているが、アイラの連撃を受け続けるだけで精一杯といった様子だ。


 それでいい。オーガたちの注目まで集める。


「もらった」

「ぬぅ!」


 オーガの間から跳んでオーガマスターへと近付く。

 完全に意識から外していた奇襲に急いで顔を向けているが間に合わない。


「残念だったな」


 しかし、振り向いた顔には笑みが浮かんでいた。


「これは……」


 オーガマスターの手前10メートルで金色の半透明な壁が俺の攻撃を防いでいた。


「奇襲への対策ぐらいはしているさ」


 オーガマスターが壁から離れようとする俺へ手を向ける。


 ブワッ!

 手から放たれた風によって後ろへ吹き飛ばされる。


「そのまま潰されるがいい」


 吹き飛ばされた先にはオーガの大軍勢。

 囲まれてしまうのを待ち構えていたオーガたちが腕を叩き付けてくる。


「【召喚(サモン)】」


 召喚の余波でオーガが吹き飛ばされる。

 魔法陣から現れたのは巨体のオーガよりも大きなドラゴン。赤、青、黄、緑と4色のドラゴンが同時にブレスを吐き出す。突然の出現に戸惑うオーガたちはブレスの直撃を受けて灰となってしまう。


「なっ……!」

「残念だったな。こっちは戦力を十分に残しているんだ」


 ドラゴンによる蹂躙が開始される。

 大軍勢の前方からは雷獣と海蛇がゴーレムによって阻まれるオーガを蹂躙し、後方からはドラゴンによるブレスの掃討。

 数は明らかに俺たちの方が少ない。だが、個体の強さはこちらの方が上だった。


「数は揃えられたようだけど、圧倒的な力の前では無意味なんだよ」

「おのれ……!」


 その時、ドラゴンのブレスから逃れた1体のオーガが斧を振り上げながら近付いて来る。本能で俺が統率者だと判断した。

 振り下ろされる斧。しかし、盾を装備した亀型の魔物によって防がれる。


 突然現れた魔物に驚くオーガ。呆然としている間に極限盾亀(リミットシードル)が盾で叩くとオーガの体を貫通して絶命させる。


「バカにするのも止めてもらおうか」


 オーガマスターの前に3体のオーガが立ちはだかる。アイラと戦っているオーガと合わせて4体の特別なオーガが、オーガマスターにとっては眷属に相当する存在だった。


「そいつらの事は任せた」


 メリッサ、イリス、ノエルに特別なオーガを任せる。

 俺は俺でオーガマスターの前にある【迷宮結界】をどうにかする必要がある。


「もう一度だけ言ってやる。相手が悪かったな」

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