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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第76話 亡者の館

長くなっている迷宮攻略ですが、残りは『亡者の館』編と『鬼住まう洞』編で一区切りつけられることになります。

……50話あればいけるだろうなんて考えていた時期がありましたわ。

 イルカイト迷宮地下51階。

 雪原にあった転移魔法陣を利用して移動した先に広がっていた光景は、今にも雷が落ちてきそうな真っ黒な雲に覆われた荒野。


 だが、荒野を攻略する訳ではない。

 荒野には巨大な館がある。


「やはり、空間が操作されていますね」


 館の外から確認したメリッサが報告してくれる。

 館の外観は、左右に100メートルずつ延びている5階建ての古風な館といったところだ。ただし、古風なイメージを抱かせる見た目だが、手入れがきちんと行われている壁をしている。まあ、館内にいる者が手入れをしている訳ではなく、迷宮の力によって最適な状態に保たれているだけだろう。


 外から見ただけでも広いことが分かる館。けれども、魔法によって内部の空間が歪められているため内部がどれほどの広さを持つのか分からない。


 その時、遠くで雷が落ちる。

 雰囲気からして明らかに危険な場所。

 だからと言って避けることはできない。


「転移魔法陣は館の中にあるんだよな」


 改めて地図を確認する。

 と言っても、館以外の反応を捉えることはできないことから館の中に転移魔法陣があると判断しただけ。そして、空間が歪められているせいか外からでは内部の様子を確認することができない。

 入るべきか、入らざるべきか討論している状況ではない。


「先へ進むなら館へ入らなければなりません」

「そうだよな」


 気は進まないが、メリッサから言われて館の門を押す。

 門から入った先は、1階と2階が吹き抜けになったエントランス。ただし、見える範囲に2階へ上がる為の階段は見つからない。

 跳んで届かない高さではない。ただし、迷宮がそんな簡単に攻略できるはずもないと分かっていた。

 イリスが氷柱を生成して飛ばす。しかし、2階へ到達したところで見えない壁に阻まれてしまったように砕けてしまった。


「諦めて素直に奥へ進むべきですよ」

「仕方ないか」


 エントランスの左右には扉の並んだ廊下がある。等間隔に扉を並べられた廊下だが、扉と扉の間にある間隔が長い事から扉の向こう側に広がっている部屋が広い事を窺うことができる。

 もう一つの目的地は目の前にある大きな扉。

 この時点で、外から見えた館の広さを上回っている。


「で、どこから手を付けるべきかな?」

「普通の冒険者なら館内にある財宝を探索するようです」


 事前の攻略情報で地下51階から55階がどのような場所なのか知っている。

 館内には不死者(アンデッド)系の魔物がおり、魔物の襲撃を掻い潜りながら館内の探索をして財宝の入った宝箱を探す。


 厄介なのは出現する魔物がアンデッドだということ。探索に夢中になるあまり、魔物への警戒が疎かになると致命傷を負ってしまう。そして、アンデッドの中には致命傷を負わせた相手を自らと同じアンデッドへ変えてしまう者もいる。

 そのため、冒険者の探索は慎重になっていた。


「財宝には興味あるけど、今日中には60階までは進めてしまう予定だから先へ進む事を優先しよう」


 地図から転移魔法陣の位置を確認する。

 右側にある廊下の奥から2番目の部屋にあることが分かった。

 外からでは内部の地図を表示させることができなかったが、こうして中へ入ったことで内部の構造も手に取るように知ることができた。


「目の前にある大部屋は食堂兼セーフティゾーンなんだ」


 地図から安全を確認したノエルが扉を開け、顔を覗かせて内部を確認していた。

 大きな部屋は食堂になっており、様々な食材が適切な状態で保存されている。調理する設備も整っており、食堂には魔物が寄り付かないよう設定されているため、これまでの探索で疲れた体を休ませることができる。


 真っ白なテーブルクロスが敷かれた長いテーブルがいくつも並び、天井から吊るされたシャンデリアによって照らされている。

 迷宮を訪れるのは冒険者であるため、これまでに味わったことのない場所で休憩することができる。

 まあ、俺たちには必要のない場所だ。


「こっちじゃないからな」


 ノエルの手を引いて廊下のある方へ向かう。


「ひぃ!」


 廊下へ入ろうとした瞬間、小さく悲鳴を上げたシルビアが俺の背に隠れる。


「どうした?」

「あ、その……」


 廊下の奥の方を指差すシルビア。


「そういうことか」


 雪精のように見ることはできない。

 だが、地図には反応が表示されていたためシルビアが何に反応したのか分かった。


「お前には分かるんだな」

「……」


 俺の言葉にシルビアが頷く。

 彼女が指差した先には幽霊(ゴースト)がいる。俺たちみたいな侵入者に触れることで相手の生気を奪い取ることを目的としている。

 巧妙に隠れていて意識を集中させないとシルビア以外には気配を捉えることができない。けれども、敏感なシルビアは近付いただけで察知してしまったようだ。


「ゴーストって苦手だっけ?」

「アンデッドは平気です。わたしが反応してしまったのは、ゴーストが抱いている怨念の強さです」


 地図に表示されているのは『怨念の集合体ゴースト』のみ。

 どれほどの怨念が集まった結果、ゴーストとして存在を維持させているのかまでは表示されていない。表示されなかったとしても、これから倒すのなら必要ないので問題ない。


「あのゴーストを形成しているのは迷宮に挑んで亡くなった冒険者たちの魂です。わたしたちの事が羨ましいのか、すごく恨めしそうに見てきています」


 廊下へ入り、少し進んで油断したところを後ろから攻撃するつもりでいる。

 ゴーストから発せられる敵意を強く感じ取ってしまったシルビアは怯えてしまって俺の後ろから動けなくなってしまった。


「いいか、見ていろよ」


 シルビアを後ろに張り付けたまま廊下へ向かう。

 ゴーストはシルビアが館の雰囲気にやられて怯えてしまっているとでも思っているのか、自分の存在が気付かれているとすら思わず近付くのを待っている。


「こういうのは、こう!」


 すれ違う瞬間、手を伸ばしてゴーストの体に触れる。本来なら振れることの叶わないゴーストの体だが、聖気を纏った状態ならゴーストの体にも干渉することができる。

 手の中でバタバタ暴れるゴースト。俺の感覚では首を掴んで絞めている状態だ。

 そのまま握り潰すように手を閉じるとゴーストの体が霧散して消滅する。


「相手がどんな怨念を抱いていたとしても関係ない。むしろ消滅させてやることこそゴーストにとっては最良なんだ」


 最前列で待ち構えていた仲間が消されたことに気付いたゴーストが何体も出てくる。ただし、実体がないため壁や扉をすり抜けて廊下へ現れている。


 シルビアが目を閉じる。ゴーストから与えられる情報を意図的にシャットアウトして振り下ろされた短剣がゴーストを斬っていた。

 他の場所でもゴーストを相手に奮戦していた。


「今までは一方的に襲い掛かるだけだったんだろうけど、俺たちは室内の廊下でも容赦なく倒していくぞ」


 途中にある宝箱のある部屋も無視して転移魔法陣のある部屋へと辿り着く。

 その部屋はバーになっており、円形のテーブルがいくつも並べられていた。


「あ、宝箱発見」


 アイラがテーブルの下に隠された宝箱を見つけて引っ張り出している。

 部屋の入口で注意深く探れば見つけられる位置にある宝箱。残念ながら罠だ。


「それ、絶対に開けるなよ」

「……わ、分かっているわよ」


 俺から注意を受けたことで冷静になったアイラも地図を確認して、目の前にある宝箱が罠だと気付いた。

 宝箱の蓋を開けた瞬間、宝箱の中に詰め込まれていた霊体が押し寄せて開けた者の生気を奪う罠。普通の冒険者なら掠っただけで生気を全て奪い尽くされてしまう威力がある。俺たちなら開けても耐えられるだろうけど、罠だと分かっている物を自分から開ける必要はない。


「それにしても意地の悪い場所に置かれた魔法陣だな」


 バーの奥にある酒瓶の並べられた棚。

 酒瓶によって隠されていたが、移動することによって現れる仕組みになっていた。


「ここまで来られる冒険者は稀みたいだから、攻略情報は古いものしか手に入らなかったから細かい所までは分からなかった」

「別に責めている訳じゃないさ」


 大きな棚に入った瓶を移動させて転移魔法陣を利用できるようにする。

 魔力を流すことで光を放つようになる。同時に部屋の壁をすり抜けて大量のゴーストが現れる。


「チッ、壁が意味を成さない!」


 相手をする必要はない。

 慌てて転移魔法陣で階層を移動すると目の前の景色が一転する。


「ふぅ」


 息を吐いて休憩する。

 しかし、すぐに休憩している場合ではないことを察して剣を掲げる。


「マルス!」


 すぐ後ろにいたアイラが背中を押さえて支えてくれる。

 だが、咄嗟の防御では完全には間に合っていなかったらしく、後ろへ大きくアイラと共に吹き飛ばされる。


「……大丈夫か?」

「あたしは平気。それよりも待ち構えられていたのが問題じゃない?」

「そうでもないさ」


 壁をすり抜けることのできるゴースト。

 その気になれば階層を越えることができたとしても不思議ではない。


 目を凝らし、元いた場所で剣を振り回してシルビアたちを襲っている魔物へ【鑑定】を使用する。


亡者の鎧(リビングアーマー)真紅(クリムゾン)



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