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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第63話 海中の電気ウナギ

 潜水艇の前に現れたのは巨大なウナギ。潜水艇と同じくらいの幅があり、後ろへ30メートル以上は胴体がある。

 海上にある島を覗き込めばボスと思われる亀の魔物がいる。


「おそらく私たちみたいにインチキをして進んだ人を倒す為に用意された魔物」

「だろうな」


 魔物のレベルは300。いくらなんでも地下40階にいていいような強さの魔物ではない。


「どうする?」


 イリスが尋ねてくるが、俺たちのやることは変わらない。


「戦闘は避けられそうか?」

「無理です。明らかにこちらへ敵意を向けています」


 海中で尾が振るわれ、水流が発生する。

 潜水艇も流されそうになってしまうが、逆方向に噴射させることで耐える。


「なら、倒すしかないな」

「以前よりもパワーアップさせていますから問題ありません」


 メリッサの心強い言葉を聞きながら腰を深く落ち着かせる。

 ポチっと。手元にあったボタンが押される。


「……ちなみに今のボタンは?」

「特殊ミサイルの発射ボタンです」


 潜水艇の側面から2発のミサイルが発射される。

 まだ距離があると思って待ち構えていた巨大ウナギは突然の攻撃にギョッとする。想定していた敵は海上を進む船。それが海中を進む潜水艇を前にして戸惑っていたこともあってミサイルの直撃を受ける。


 ガ―――ン!


 海中でミサイルが直撃したことによってハンマーで叩かれたような衝撃が伝わってくる。


「……こちらまで衝撃が伝わってくるのは改良が必要みたいですね」


 爆発することで対象へ衝撃を叩き付けることを目的としたミサイル。

 これは、ゴーレム遺跡から得られたデータからメリッサなりに再現させた物で、使うのは初めてだったため試験もしていなかった。


「おい、向こうは怒っているみたいだぞ」


 攪拌された水流が晴れた向こう側にいるウナギの体から電撃がバチバチと爆ぜていた。普通のウナギではなく電気ウナギだったらしい。


 電気ウナギから電撃が槍となって放たれる。


「ほい」


 ノエルが床を錫杖で叩くと潜水艇の周囲にトゲのついた球体が生み出される。

 潜水艇へと真っ直ぐに向かっていた電撃が球体へと吸い込まれるように引き寄せられる。


「これでいい」

「ごくろうさん」


 【天候操作(ウェザーコントロール)】を付与された球体。

 嵐の中であろうと気象による影響を飲み込むことができる。安全に航行ができる為に用意した方法だったけど、予想以上に役立ってくれた。


 電撃が通用しないと判断した電気ウナギが突っ込んでくる。


「こっちへ行って」


 イリスの指示に従ってアイラが潜水艇を操縦する。魔法道具の潜水艇なら操縦桿を握って軽くイメージするだけで操縦することができる。

 案内されたのは海底にある渓谷。左右を断崖に囲まれ、前後に進む以外に選択肢がない場所。

 そんな場所へ潜水艇を突っ込ませていく。

 すると、電気ウナギも後ろから追って来る。


「はぁ、こんな場所で追いかけっこをするなんて正気ではありませんね」


 潜水艇の後部から網が発射される。

 ただの網ではなく、迷宮にいるデーモンスパイダーから採取した強力な粘着力を持つ蜘蛛の糸で作られた網。左右の断崖に張り付き、広がると電気ウナギの動きを封じて捕獲する。


 その隙に電気ウナギの頭上へ潜水艇を移動させる。

 バタバタと足掻く電気ウナギから電撃が放たれ、潜水艇を攻撃しようとするがノエルの避雷球によって逸らされる。

 今の電気ウナギはガムシャラに攻撃しているだけだ。


「では、お願いします」

「開けばいいんだよな」


 眼下にいるはずの電気ウナギへ狙いを定めながら神剣を掲げる。

 そのまま頭の先から尾の先端まで斬るつもりで剣を振るう。神剣の軌道の先に魔力によって生み出された斬撃が生まれる。海中での使用、水を割く感覚に阻害されながらなため剣を動かし辛い。

 それでも、振り切ると電撃を発生させる為の鱗すらも切り裂いて真っ二つにする。



 ☆ ☆ ☆



「いただきます!」


 島の上へ移動すると特製のタレが塗られて蒲焼にされた電気ウナギの魔物だった食材を口へ運ぶ。

 柔らかくされた鱗を食べた瞬間、辛さとも違うピリッとした感覚が迸る。


「これは、これで美味しいな」


 数の少ない白米と一緒に食べれば美味しさは倍増する。


「こちらもどうぞ」


 シルビアが差し出してきたのはスッポンの出汁が効いた薄めのスープ。

 潜水手の中にいたから濡れることなんてなかったけど、数十分もの間海中にいたせいで寒くなったようなイメージがある。温かいスープがちょうどよく体を温めてくれる。

 食材になった亀は、ボスとして君臨していた魔物だ。島へ上がった瞬間に敵意をぶつけてきたため倒させてもらったので、せっかくだから有効利用させてもらうことにした。


 スープと合わせて一気に飲み干すと全員の食事が終わるのを待つ。


「それにしても、本当に魔物の多い迷宮だな」


 近くにあった転移魔法陣が光り出す。

 近寄って足を上げると転移魔法陣の上に現れたトカゲの魔物を踏み付ける。茶色いトカゲでゴツゴツした岩を纏っている。剣や槍といった刃物が通らない魔物なのだが、上から踏み付けられたことで変な鳴き声を出しながら倒れる。

 迷宮の糧となる魔物なので道具箱へ収納する。


 さっきから、こんな調子で事ある毎に下の階層から魔物が出てくる。


「でも、地上にいる魔物の数を思えば少ない方なんじゃない?」


 ウナギの切り身を串刺しにしたものを手にしながらアイラも転移魔法陣を覗き込む。


「本来なら、先を急ぐべきところなのでしょうが、何かあってからでは問題ですから次の階層について考えておいた方がいいですね」


 メリッサの言葉に全員が賛同する。

 地下41階からも10個の階層を繋げた広大な階層で、岩肌の山を下りて行くことになる。大型の鳥やドラゴンの生息する場所で、空を飛ぶ相手へ攻撃する手段が必要になる。


「次はショートカットなんてできませんからね」

「分かっているよ」


 山で考えた方法が飛び降りる方法。

 しかし、ドラゴンのいる状況を思えば危険過ぎて採用するのを躊躇ってしまう方法だ。


「ねぇ、下の階層にいる魔物は、この転移魔法陣を使って上へ行っているんだよね」

「それはそうだろ」


 先ほど見たように暴走状態にあるせいか魔物も転移魔法陣に触れるだけで階層を移動することができる。

 それは、これまでの攻略で何度も見た光景。


「で、地上には迷宮から出てきたと思しきドラゴンもいる」

「そうだな」

「どう考えてもドラゴンの方が魔法陣よりも大きいんだけど」

「……それも、そうだな」


 そもそもがドラゴンの移動を考えていない転移魔法陣。

 そんなに巨大な魔法陣を用意する必要がない。


「どうやって外へ出ているの?」

「思い出してみてください。地下8階で遭遇したハイタンクワームも体の一部が触れるだけで上の階層へ移動することができましたよね。それと同じでドラゴンも体の一部が触れるだけで移動することができるんですよ」


 メリッサの言葉にノエルが納得しかける。

 だが、ポロッと疑問を口にする。


「ドラゴンが迷宮を逆に攻略? ……なんだか腑に落ちないような」


 ノエルの言葉を耳にして初めて疑問に思った。

 知能の高いドラゴンなら迷宮を逆攻略できるだけの力はある。けれども、同時に高潔な魔物であるドラゴンが飽きることなく迷宮を攻略しようとするのか疑問にも思ってしまった。


 改めて地上に残してきたサファイアイーグルと感覚を同調する。

 すると、ドラゴンの数が迷宮攻略日よりも増えていることに気付いた。今となっては群れを作り始めたドラゴンまでいる。


「俺たちドラゴンと遭遇していないよな」


 眷属たちが頷く。

 もちろん迷宮から離れていた時間や全ての場所を見ていた訳ではないため遭遇していないだけかもしれない。しかし、ドラゴンほど目立つ魔物を見逃すはずがない。


「考えられる可能性があるとすれば一つだけです。地上への直通の転移を可能にする魔法陣が下の階層にはある」

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