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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第62話 協力する神

 リオからの報告は衝撃的なものだった。

 たしかに実戦から離れて久しいため衰えているのは間違いない。それを理解していることもあって俺たちに危険な依頼をお願いしていた。

 それでも、Sランク冒険者相手なら圧倒できるだけの力を備えている。


「ま、俺たちと競争した時ほどの力はないだろう。だけど、負けたのはお前たちの弱体化よりも奴らの強さに秘密があるように思える」


 同じ迷宮主と迷宮眷属。

 条件は同じだが、途中から纏うようになった白い光に強さの秘密があるように思える。


『あの白い光は神気ってやつだ』

「やっぱり……」

『俺たちは扱える訳じゃないからはっきりとは断言できない。けど、お前たちから見せてもらった神気と似ていた』


 リオには頼まれてノエルが神気を纏う姿を見せている。

 『巫女』であるノエルだけが扱うことができ、【迷宮同調】によって俺たちも譲り受けることのできる力。

 特別な力は切り札となるはずだった。


『向こうも同じように使えるなら切り札にはならないかもしれないな』


 神気は人間の扱う魔力を遥かに凌駕するエネルギーだ。

 神気を身体能力の強化に利用し、強化された能力に耐えられるだけのステータスを持っているのならリオたちを歯牙にも掛けなかったのも頷ける。


「そっちは大丈夫だったのか?」

『問題ない。あいつら自身が言っていたけど、「皇帝」だったから見逃してもらうことができたようなもんだ』


 気絶させられている者はいても重傷者はいない。

 もし、眷属の中に犠牲者がいた時には暴走していた可能性も考えられるため、リオが皇帝の執務に集中できるよう眷属のみんなも生かされていた。


「それで、ガルディス帝国は……」

『ユスティオス皇帝と血の繋がりがある人物を10人差し出していた』


 逃げられないよう縄で拘束された状態で平原に並べられる。

 さらに11人目としてクゥエンティ将軍も拘束されて並べられていた。


『差し出された連中の前には固まったままの化け物共が許可を待っていた』


 到着したシャルルが許可を出した瞬間に化け物たちは目の前の相手に喰らい付いて捕食した。


 残されたのは血の跡のみ。

 差し出された者の中には幼い子供もおり、母親と思われる人物が泣き崩れていたらしい。ユスティオス皇帝の孫娘が産んだ男の子。

 皇帝にとっては曾孫にあたる人物だが、どんな思惑があるのか分からないが権力争いの末に選ばれてしまった。母親は、「自分にも犠牲になる資格がある」と言い張っていたらしいが、許可が出ることはなく、自分の子供が犠牲になるところを見ているしかなかった。


「グレンヴァルガ帝国の人間は見ているだけだったのか?」

『……これでも強い事を評価されて皇帝になったんだ。その俺が、成す術なく倒されたとなれば兵士たちは臆するだろ』


 皇帝よりも強い相手には逆らえない。

 本心では犠牲になった人たちを助けたかったが、どうしようもないことをリオが倒される姿を見て理解させられてしまった。


『魔法で治療が終わった姿は見せている。それでも、俺が負けたところは相当ショックだったらしくて士気が落ちている』


 この状況で襲撃が再度あれば危機的に状況に陥ることになる。


『ま、また来ることはないだろうな』

「どうして?」

『帰って行った奴らの顔を見れば分かるさ』


 凄惨な行いの後であるにもかかわらず、シャルルは満足な笑みを浮かべていた。

 そして、ゼオンやリュゼも仲間が目的を果たせたことに純粋な喜びを露わにしていた。


『その姿を差し出された連中の親族も見ていた。はっきり言って、あんな憎しみの籠った顔は見ていられなかったな』

「でも、何かをすることはなかったんだろ」

『ああ、そうだ』


 反逆をしたり、文句を言ったりすればどうなるのか分からない。

 だからこそ、周囲にいた人たちが押さえ付けていた。


『押さえ付けた連中にとっては「皇帝の孫娘」が生きていることに意味があるらしい。まったく……何がしたいのか、さっぱり分からないな。今さら権力をどうこうしようと画策したところで上手くいくはずがないのに』


 貴族だからこそ画策する意味はある。

 しかし、これからの彼らは全ての権力を失って平民の中でも底辺の生活を余儀なくされることが決まっている。


『もしかしたら、連中はこうして無駄なことをさせたかったのかもな』


 差し出す人間を決める過程で数万人の死者が出ている。おまけに多くの無関係な人たちまで巻き込まれてしまったせいで怪我人だけなら数十万人。


「お前がゼオンに向かって行ったのは、その状況を少しでもどうにかしたかったんだろ」


 グレンヴァルガ帝国の人間がガルディス帝国の揉め事に首を突っ込んだところで事態をややこしくするだけ。

 せめて、ゼオンが恐れる存在でないと証明できれば話し合いの余地が生まれる。


『……そうだ。連中を落ち着かせる為にも何かしらの根拠が必要だった。もっとも、失敗して逆効果になったみたいだけどな』


 体を押さえたリオの顔が苦痛に歪む。

 傷は癒すことができたが、斬られた時の痛みは体に残っている。


『だから、少しは俺たちの情報を役立てろ』

「もちろんだ」


 神気まで扱えるようになっていたことが知られたのは助かった。

 もしも、何も知らずに戦っていた場合には突如として強くなった力に対抗できなかった可能性が高い。


「それにしても、まさか女神セレスの復活がこんな風に影響するなんて」


 人間が神気を扱う為に必要不可欠な条件。

 『協力してくれる神』と『神に仕える巫女』。

 おそらく、ゼオンたちに協力している神は女神セレスだ。そして、キリエなら神に仕える者としての資格を十分に満たしている。


『それに、ゼオンは無敵みたいな存在だ』


 リオの攻撃は当たらなかった訳ではない。どれだけ傷を付けたとしてもゼオンの体からスキルを使用されるだけで消えていた。


「【自在】――移動に便利なスキルだと思っていたけど、そこまで厄介なスキルだったのか」


 体の傷すら自由自在。

 上限はあるのだろうが、強さも自由自在なのだろう。

 どういった対処をすれば全く想像つかない。


「だから、正攻法じゃない方法での倒し方を急ぐ必要があるんだな」


 俺の確認にリオが頷く。

 驚異的な力を誇っているゼオンだが、眷属も含めて力は迷宮の主でいるからこそ得られている。迷宮さえ機能を停止させてしまえばゼオンの力は失われる。

 迷宮の完全攻略をする必要がある。


『で、お前らはどこまで探索が進んだんだ?』

「今、どの辺りだっけ?」

「もうすぐ地下40階に相当する場所にあるボス部屋へ辿り着きます」


 潜水艇のレーダーを観測していたシルビアが教えてくれる。

 報告を聞いている間も探索は続けていた。それというのもイルカイト迷宮の地下31階から40階は、10の階層の空間を繋げて巨大な海を作り出し、大きな島が浮かべられていた。

 それぞれの階層に一つの島。最初は北にある島からスタートし、島内にある転移魔法陣を見つけることで時計回りに配置された次の島へ移動することができる。そうして9つの島を攻略することによって中央にある島へ移動できる。


 島は互いが見える程度にしか離れていない。泳いで渡ることで転移魔法陣の探索をする必要はなくなるが、海中には危険な魔物が大量にいる。そんな場所を泳ごうなんて考える者はいない。また、船を利用しようと思ってもここまで運ぶ必要があるため島の探索を行う以外に先へ進む方法はない。

 ……はずだった。


「便利な道具があるなら使うべきだろ」


 俺たちに運搬する必要はないため潜水艇を出して進んでいた。

 大きな潜水艇へ向かって攻撃をしてくる魚型の魔物がいる。しかし、メリッサが魔法で生み出したミサイルによって悉く撃ち落とされている。

 潜水艇の通った場所には魚の死骸が漂っている。


「来ました、ボスです!」


 シルビアの声に潜水艇内に緊張が走る。

 島の上にはほとんどの魔物が残っていなかった。地上を目指して上の階層へ向かったのだろう。

 だが、海中には多くの魔物が取り残されている。彼らは地上を移動することができないため本心では外へ出たいと思っていても、迷宮内にある広大な海から出ることができずにいた。

 そして、取り残されたボスも待望の獲物を見て喜んでいる。


「さっさと倒して先へ進むぞ」

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