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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第40話 見えない思惑

 階段を上がり、行き止まりになっていた天井を押し開ける。どこかの倉庫みたいな場所に繋がっており、頭を出すと床を見ることができた。

 事前に危ない気配がないことは分かっていたため安心して地下から出る。

 俺に続いてパーティメンバー、さらに他の人たちも続く。


「ふむ……どうやら、城の地下にあると言われるアムシャス皇帝の私物を保管した倉庫みたいです」


 部屋を見渡したホランド将軍が教えてくれた。

 階段から出た足が自然と倉庫内に収められていた台座の上に突き刺さった光り輝く剣の前へと向かう。


「私も絵姿で見ただけですが、間違いなく戦場を駆けていたアムシャス皇帝が手にしていた剣です」


 刃に宝石までついているせいでゴテゴテして、キラキラ輝いているので実用性があるようには思えない。

 ただ、皇帝であり迷宮主だった男が使っていた剣、何かしら特殊な効果があるのかもしれない。


「げっ……!」


 【鑑定】が使えた。

 迷宮の力を使って用意した剣で、刃が触れた相手を一時的に恐慌状態に陥らせることができるらしい。しかも、威力は強力で戦闘中に受ければ確実に戦闘の継続が不可能なほど。


 実用性があるとは思えない剣で敵を次々と倒した。

 その光景を見ていた人の中には、アムシャス皇帝の気迫に怯えて戦意を喪失してしまった、と思ってしまう者がいるほどだった。

 しかも、スキルの効果で以後は本気で屈服してしまうからタチが悪い。


「まずは状況を確認して安全を確保することにしましょう」


 空から監視する限りは魔物がいるようには見えない。

 けど、城の内部まで監視できる訳ではないため確認する必要がある。


「その後、入口を完全に封鎖してしまいます」

「いいんですか?」

「……将軍としては、城を使い物にならなくしてしまうのは心苦しいところですが、魔物に占拠されてしまうよりはマシです」


 その後、ホルクス将軍に頼み込んでグレンヴァルガ軍に動いてもらい、外との出入りが可能な場所が完全に塞がれる。

 城には多くの財宝がある。心が惹かれるところがあるが、今は体を休めることを優先させて食堂へと向かう。


「わたしたちは手伝わなくていいのですか?」

「いや、仕事ならお前が率先して引き受けているだろ」


 キッチンに立って一人で全員分の食事を用意しようとしているシルビア。

 軍の人たちは保存食でも口にして戻るつもりなのだろうが、まともな食事を口にせず帰るのは辛い。


「今日の食事で使った食材は地下の備蓄庫にある食材を後で補充させてもらうとして、今後の予定だ」


 明日の朝までは城で休ませてもらう。当初の予定通りに、その間の警戒は軍に完全に任せてしまい、俺たちは休養に努める。

 そして、イルカイトまで一気に駆け抜ける。

 距離的には問題ないが、現在の状態が問題だった。


「これが現在の状態だ」


 空中にイルカイトの状況を映し出す。

 相変わらず、迷宮都市から魔物が溢れ出している。そんな状態が続いているせいでイルカイトとウィングルの間は魔物によって飽和状態になっている。

 もう、共食いが始まっているほどで、状況を分かっていて向かうなど正気の沙汰ではない。


「どう頑張っても魔物との戦闘を回避することはできない。軍も当初ほどの規模が残っているなら肉壁にもなったかもしれないけど、今の規模で連れて行ったとしても足手纏いにしかならない」


 それよりも自分の目で現状を見た者を帰す事こそ、これからの事を思えば意義がある。


「基本方針は、俺が迷宮都市まで辿り着く。そこまで行く事ができればどうにでもなるからな」


 俺が辿り着けば遅れている者がいたとしても【召喚】で呼び出すことができる。

 最悪の場合には足止めさせる事になるのを男として心苦しく思うところはあるが、今はそこまで言っていられるような余裕はない。

 それだけ魔物の数が多すぎる。


「遠くで空からサファイアイーグルの目を通して見るのと、近くで魔物の気配を感じるのとでは全然違うな」


 都市の周囲には魔物が大量にいる。

 もし、人が戻って来た事を魔物たちが知れば城へ一斉に襲い掛かって来るかもしれない。対処はできるだろうが、大量の魔物に包囲される状況は精神的に疲れる。避けられるなら俺たちでも避けたい事態だ。


「……ん、どうした?」


 ふと、視界に何かを考え込んでいるメリッサの姿が映った。


「大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だろ。数こそ多いけど、所詮は烏合の衆。足手纏いがなくて一点突破に集中すれば辿り着けるはずだ」

「いえ、そちらは心配しておりません」


 なら、何を心配しているのか?


「ここまで犠牲こそ出し、私たちも消耗こそ少しばかりしていますが大きな怪我などありません」

「そうだな」


 敵――迷宮眷属が単独で行動していたのと、本気で俺たちに敵対するつもりがなかったのが大きな理由だ。


「向こうにも私たちの目的が分かっているはずです。迷宮を失う事は、彼女たちにとっても自分の命を失うに等しいはずです。それぞれが復讐を目的に動いていて、自暴自棄になっているのなら納得できるのですが……何か別の目的があった時は取り返しのつかない事になるかもしれません」


 俺たちの手で迷宮核を破壊する。

 迷宮を失った瞬間に迷宮主は主でいられる資格を失い、迷宮主を失ったことで眷属も道連れになる。

 本来なら、何をしても阻止しなければならない事態。


「お前は、あいつらに何か別の目的があると思っているのか?」


 俺の問いにメリッサが頷く。


「根拠は城の地下にいたテュアルさんです。彼女は、あんな場所で何をしていたのでしょうか」

「それは--」

「証拠書類を渡す為に私たちを待っていた訳ではありません。あんな場所で渡す必要などないのですから」


 もっと安全な場所――それこそ城へ向かっていることが分かっていたのだから城で待っていた方が安全だ。


「お前は、地下で彼女が何をしていたと思うんだ?」

「それは分かりません」


 テュアルが現れた瞬間から警戒していたメリッサ。

 地下での行動を監視していたが、何か怪しい行動をした様子はなかったらしい。


「既に必要な作業を終えたのか、それともこれからするつもりなのかは分かりません」


 それでも、メリッサがキッパリと宣言する。


「彼女に何か別の目的があったのは間違いありません! 私の勘がそのように言っているのです!」

「勘かよ……!」


 メリッサらしくない。

 けれども、それが最も分かっているのはメリッサ自身のはずだ。

 自分でも気付くことのできない何かに気付いてしまっている。


「でも、結局のところは迷宮をどうにかする以外の選択肢がないんだよな」


 迷宮の供給を止めなければ、魔物の討伐など絶対に不可能となってしまう。

 そして、それは早ければ早いほどいい。と言うよりも、早いうちに対処しなければ飽和状態がひどくなる。


「せめて敵の狙いが分かっていれば対策をした上で、攻め入ることもできたかもしれないのですが……」


 そこまでしていられるほどの時間的余裕はない。

 そこが分かっているからこそ、敵も俺たちの前に堂々と姿を晒すことができているのだろう。


「今は攻略に集中しよう。何か罠があるかもしれないと分かっていて、それをしないといけないのは気分が悪いけど、他の選択肢がない」


 メリッサとイリスが頭を悩ませる。

 こういうのは二人の領分だ。


「それより難しい話は後にして、美味しいご飯にしましょう」


 ドンッ!

 テーブルの上に置かれる重たい鍋。俺たちの話に耳を傾けながらも調理を続けていたおかげで、鶏肉と野菜を煮込んだスープ、特製のタレが塗られた鳥型魔物の肉が並べられる。


「お肉は外を探せば一杯ありますからね。たくさん食べてください」


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