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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第3話 魔法の力

1VS1VS1の戦い

 自分の頭部へと投げられたナイフに対してアイラは持ち前の動体視力を活かしてナイフを次々と避けていく。


「いたっ」


 が、横から飛んできたナイフが肩に突き刺さり動きが止まってしまう。そのまま2本のナイフが掠めていく。


 正面から投げられたナイフは全てフェイク。

 本命は、正面のナイフを投げながら同時に放たれた横へのナイフにあった。山なりに投げられたナイフは直進することなく、アイラへと方向を変えて肩に突き刺さることになった。


 一方、同じようにナイフの猛攻を受けたメリッサは平然としていた。


「あれは……」


 メリッサの体の周囲には風が渦巻いていた。

 あの風は、風属性魔法による遠距離攻撃を防ぐ為にある魔法で、名前は矢避けの風。遠距離から放たれた矢や弾丸の方向を逸らすというもの。その効果のおかげでメリッサにナイフが当たることなく、ナイフは全てリングの上に落ちていた。


「では、次は私の番ですね」


 メリッサが杖を持っていない左手を翳すと魔法陣が生まれ、風を圧縮させた弾丸がシルビアとアイラに向かって飛んで行く。威力は低いが、弾数と速射性に優れた魔法による応酬だ。


「冗談」


 肩に突き刺さっていたナイフを抜いたアイラがメリッサに向かって走って行く。

 その間には大量にばら撒かれた風の弾丸があったが、アイラは剣を振るいながら走り全ての弾丸を叩き落としていく。

 アイラに渡した聖剣の耐久力とアイラ自身の技量があるから成せる技だ。


「なんて力業……」


 シルビアも全ての弾丸の軌道を見切り、弾丸を踊るように避けていく。

 あれもシルビアレベルの敏捷値があればできる芸当だ。


「もらった!」


 弾丸を弾きながら剣の届く間合いまで近寄ったアイラが剣を振り下ろす。


「甘いです」


 だが、剣が届く直前にメリッサの姿が消える。


「うそっ!」


 目の前から見ていたアイラには、メリッサがシルビア並みの敏捷を見せて移動したように見えただろう。

 メリッサの移動先を見越してアイラが振り返りながら剣を振るう。


 しかし、それよりも速いメリッサの杖による攻撃がアイラの背中を強打し吹き飛ばす。リングの上に倒れたアイラへ追い打ちを掛けるように杖の先端から放たれた風の弾丸が容赦なく襲い掛かる。


「くっ!」


 アイラは風の弾丸を回避するべくリングの上を転がってどうにか回避していく。


 だが、転がる方向を予測していたメリッサによって進行方向にあるリングが砕かれ、穴が開いてしまったところへ落ちてしまい、体勢を崩してしまう。


 が、穴を突いてしまった手に無理矢理力を込めると上へと跳び上がる。


「それは失策です。魔法の使えない貴女では空中で回避する術を持たない」


 空中へと跳び上がったアイラに向けて杖を掲げ、魔法による攻撃ができるようにする。


「それは、あんたの方よ」


 剣を武器にするアイラだが、遠距離への攻撃方法がないわけではない。

 空中にいるまま剣を全力で振り下ろすと魔力による斬撃が生まれメリッサへと飛んで行く。


 あれが魔法への適性がほとんどないアイラの編み出した遠距離攻撃。

 魔力を剣の斬撃に乗せることによって、魔力による斬撃にその軌跡をなぞらせて飛ばすという方法。明鏡止水を会得して、斬撃がより鋭くなったアイラだからこそできるようになった攻撃。


 メリッサへと斬撃が飛ぶ。


「……!」


 それと同時にシルビアも忍び寄り短剣を振るっていた。

 直前まで全員が意識から弾いていた。それだけシルビアの隠密能力が高くなっているという証拠でもある。


 2つの斬撃がメリッサに届く。


「危ないですね」


 しかし、メリッサの周囲1メートルに囲うように展開された光り輝く盾によってアイラの斬撃は当たった瞬間に霧散され、シルビアの短剣も弾き飛ばされていた。


 あの盾は、光属性魔法による光の盾(シャインシールド)

 何かが触れるまで不可視の状態であるため不意打ち対策に効果的な盾である。


 ただし、常に展開させておくと魔力をガンガン消費してしまうので普通の魔法使いでは不意打ちがあると警戒している瞬間にしか使うことのできない魔法。そんな魔法もメリッサの膨大な魔力があるおかげで使用し続けることができていた。


 シルビアがメリッサから離れ、リングの上に着地したアイラがメリッサを警戒して剣を構える。


「2人は勘違いしているようですが、私は普通の魔法使いではありません。眷属となったことで得たスキルによって膨大な魔力と全属性という破格の魔法適性を得た魔法使いです。戦い方次第では近接戦闘も可能になります」


 メリッサの体を3種類の魔法陣が包み込む。


光現透明(インビジブル)虚ろの幻影(ミラージュ)風の加速(ソニックアセラレイト)


 光魔法による透明化の魔法が発動しメリッサの姿を消す。

 だが、2秒後には全く異なる場所にメリッサの姿が5つ出現する。

 魔法によって作り出された幻影なので、どれか1つだけが本体だ。その本体さえ叩けば残りの幻影も消える。


 問題は、どれが本体なのか分からないということにある。


 通常、ミラージュをそのまま使用すれば自分の周囲に複数の幻影を生み出すことになる。だが、インビジブルによって1度姿を消してから使用したことによって本体がどれなのか分からなくなっていた。


(ま、一番右端にいるのが本物なんだけどな)


 視覚だけでなく嗅覚や危機察知能力が高いのが当たり前の魔物相手には使用してこなかった魔法のため、この場にいる全員が初見となる魔法だった。

 だが、落ち着いて見極めれば本体からしか足音が聞こえてこないことが分かる。


 メリッサも色々と考えて魔法を使用しているようだが、実戦で初めて使う魔法にはどうしても想定が足りていなかった。


 足音のような本体が放つ特徴にアイラは気付いていないようだが、シルビアは既に気付いているらしく本体に向かって駆け出す。


 しかし、その行動はメリッサと対するには遅過ぎた。

 凄まじいスピードで駆け出した幻影も含めたメリッサが杖でシルビアの胴を突く。加速された状態で放たれた突きは、シルビアにダメージを与えるには十分な威力を持っていた。


「今の速度は、わたしと同程度……!? けど、メリッサにそこまでの敏捷値はなかったはず!」


 パーティで活動している間は、それぞれの役割を考えてメリッサは後方から固定砲台として魔法を撃っているだけだったから近接戦闘をしている姿は見たことがない。

 俺にとってもメリッサがここまでできるのは意外だった。


「ステータスに現れる数字が戦闘における全てではありません。魔法を使えばステータス差を埋めることなど簡単です」


 ソニックアセラレートは敏捷値を上昇させる魔法だ。

 シルビア以上の敏捷値まで上昇させることは奉杖を持ったメリッサでも不可能だが、それに迫れるだけの速度を出すことが可能になる。


 4人という少数のパーティで戦うのならわざわざ魔法を使ってまで敏捷値の高い者を2人も用意する必要はない。メリッサは今までパーティ全体のことを考えて不必要にステータスを上げるような魔法を使用してこなかった。


 だが、このような1人で戦わなければならない状況なら話は違ってくる。


 先ほどアイラの剣を回避した時も上昇させた敏捷値によって加速することによって回避することができていた。


「ふぅ……いつものように固定砲台として戦ってくれるなら簡単に終わると考えていたけど、どうやらそれだけじゃなかったみたいね」


 固定砲台として動かなければ、シルビアの敏捷値やアイラの剣技を活かせば魔法の嵐を突破することができた。だが、相手は固定砲台などではなく近接戦闘もできる移動砲台だった。


「始まる前はあたしとシルビアの一騎打ちで終わるだろうと思っていたけど、そう簡単にはいかないみたい」


 アイラがシルビアのことを見る。

 シルビアも同じことを考えていたらしくお互いの視線が交わる。


 ――共闘してでもメリッサを先に倒す。


「私はそれでも構いません」


 笑みを浮かべているが、余裕なわけではない。

 それでも自分の魔法を存分に使える状況をメリッサは楽しんでいる。


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