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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第7章 遺跡探索
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第2話 ルール説明

『ルールは簡単。最後までリングの上に残っていた者が勝者。そして、勝者には景品が与えられます』


 ガチャン、とどうやって浴びせているのか分からないスポットライトが俺に落ちてくる。


『というわけで分かったかな? 審判及び進行は、このボクが務めさせていただきます』

「分かりました」

「もちろん」

「問題ありません」


 迷宮核の言葉に3人が答える。


「いや、ちょっと状況を整理しよう」


 俺たちが今いる地下57階は、円形のリングが中心にあって、周囲には階段状の観客席がある。資料で見たことがあるだけだが、どこかの国にあるコロシアムという物に似ている。


 その中心にあるリングに三角形の頂点のように3人が端に残っている。


「質問があります。最後までリングの上に残っていた者が勝者だと言っていましたが、禁止事項は?」

『そんなのないよ』

「それを聞いて安心しました」


 普通、『最後までリングの上に残っていた者』という勝利条件なら相手をリングの上から落とすことを優先に考えるところだが、このリングにはちょっとした仕掛けが施されている。


 それは、致命傷を受けた瞬間にリングの上でそれまでに受けたダメージを全てなかったことにして場外に転移させる、というものだ。


 元々は思い付きで造られた階層で、地下57階へとやって来た冒険者は1人ずつリングの上に残って迷宮側から出てきた強力な魔物を倒すことによって地下58階へと進むことができるというものだった。

 その際、負けた冒険者が何度でも挑めるようにということでリングに付与させた能力が転移能力だった。


 迷宮の目的は、多くの冒険者に挑んでもらい、長時間いてもらうことによって魔力を得ることにある。


 何度でも挑める、という要素が冒険者を訪れさせる。


 ……そのはずだったのだが、最到達階層が地下55階で、結局誰も訪れることがないまま冒険者相手には使われることがなかった機能だ。地下57階は、歴代の迷宮眷属たちが手加減なしで訓練する為に使用されてきた。


「つまり、致命傷を与えて場外扱いにしても文句を言われることはないっていうことよね」

「わたしもそれで構いません」


 3人には迷宮について一通り説明してある。

 その時に地下77階にある宝箱エリアや37階にあるリゾートエリアのような、なぜそんなエリアを造ったのか? と首を傾げざるを得ない階層に興味を示していたのを覚えている。


 そして、この地下57階にも同じように興味を覚えていた。


『さて、質問がないならそろそろ始めようか』

「ちょっと待て!」


 質問、というか色々言わせてほしいことがある。


「まず、俺が景品ってどういうことだよ!?」

『口論の内容は聞いていたから覚えているよね』

「たしかプリンがどうとか……」

『そっちじゃなくて最後の方だよ』


 ……最後?


「たしか俺が手を出していないとかどうとか言っていたな」

『そう、その通り。君が手を出していないことにも原因がある。彼女たちを眷属にしてから何カ月も経っているのにどうして手を出さないんだい?』

「……」


 何も言えない。

 単純に恥ずかしいのとどうすればいいのかが分からないからだ。


『ま、君が手を出さない理由については分かっているつもりだよ』


 さすが元は普通の男性だっただけはある。

 きちんと童貞の思考を理解してくれている。


『ただ、これだけ長い時間一緒にいるうえに今後も一緒にいることになっているのに彼女たちに我慢させているのはいただけない。というわけで、そろそろ君にも決意してもらおう。大丈夫。1人に手を出せば自然と他の2人にも手を出さざるを得ないから』


 そうなるのは明白だ。


 俺は序列を付けるつもりはない。

 それは3人を平等に扱う、ということでもある。


 1人に手を出した状態で他の2人に手を出していない状態は不平等とも言える。そんな状態が続けば2人は不満に思うのも間違いない。


 それに、そういうことをするということは、致した相手のステータスが1割上昇から2割上昇へとなる。

 そうなれば、仮にシルビアとアイラのどちらかのステータスが倍近くになった状態で喧嘩をすればどちらかが勝つかなど明白だ。そんな決着の付け方も俺も彼女たちも望まない。


『ま、色々と理由を考えているみたいだけど、3人ともにそういうことをするのが不誠実だって考えているんでしょ』

「まあ、そりゃ……」


 普通に考えて3股だ。


『けど、彼女たちはそれぞれに理由があっても君といることを選んだ。だったら君も主として受け入れてあげるべきだよ』

「分かった」


 とりあえず俺がいけなかったのは理解できた。


「問題は、どうして俺を景品にしたのかっていうことだ」

『だって普通に考えて「初めて」は貴重な経験だよ。3人は自分の「初めて」を捧げることはできるけど、君の「初めて」は1つだけだよ。それを誰がもらうのかで揉めているんだから何らかの方法で決着を付ける必要はあるでしょ』

「まあ、そうだな……」


 少なくとも俺に3人の中から誰かを選べる度胸はない。

 誰を選んでも揉める。


「じゃあ、もう1つ質問だ。リングの機能は生きているんだよな?」

『もちろんだよ。じゃないとこんな命懸けの喧嘩なんて面白そうだからって理由だけでさすがに許可するはずがないよ。ここの使用申請を出してくれたメリッサには感謝しないといけないね』


 俺も地下57階の存在についてはすっかり忘れていた。


 メリッサは、街に被害を出さずに済む場所として地下57階を選んだ。

 だけど、それだけじゃない。

 地下57階で戦えばダメージは全てなかったことにされる。街への被害もそうだが、それ以上にメリッサが気にしていたのが戦う自分たちが負傷することによって俺が責任を感じてしまうことだ。


 どうやら色々と気を遣わせてしまったらしい。


「なら、いいんだけど……」


 どうしても迷宮核ではなく、皆に確認しなければならないことがあった。


「なあ……みんな目がマジなんだけど……」


 シルビアは普段のにこやかな表情が消え、眉間に皺を寄せて目を閉じて集中している。


 アイラも魔剣と対峙した時のような雰囲気を発しながら剣を振って準備運動をしている。


 メリッサに至っては持っている杖に魔力を流し、いつでも魔法を発動させられる状態にしているだけでなく、そのまま杖を突いたり払ったりしている。彼女が使用している杖は、俺が迷宮の魔力を使って生み出したSランクの杖で魔法の威力増強と打撃時に相手の魔力を奪い取る効果がある。名前は、奉杖フォルトゥーナ。


 はっきり言おう、全員マジだ。


「わたしたちは相手を倒すつもりで戦います」

「だから、この地下57階まで来たんでしょ」

「もう、後には引けないのです」


 ダメだ。主である俺に殺気まで向けてくる始末。

 もう何を言っても無駄らしいのでそそくさとリングから下りる。


「もう、好きなようにやらせよう」


 そうするしかなさそうだ。


『じゃあ、主からの許可も得たところで始めようか』

「ちょっと待って下さい」


 シルビアから待ったがかかる。


「メリッサ、あなたの準備は大丈夫?」

「どういうことですか?」

「わたしとアイラはさっきまで体を動かしていたから問題ないけど、あなたは準備運動もなしに始めるつもり?」

「ああ、そういうことですか」


 あの喧嘩を準備運動と言っていいのか迷うところではあるが、本人たちがそういう認識でいるのなら間違いないのだろう。


「魔法使いに準備運動など不要です。それに体の調子など――」


 メリッサの体から金色の光による鱗粉が溢れ出す。魔力による肉体の強化だ。可視化できるほど大量の魔力がメリッサの肉体を強化している。


「魔法を使えば簡単に整えることができます」

「そういうことなら」


 シルビアとしては対等な勝負を望んでいるらしく、メリッサの調子を気にしていたらしい。


「わたしの方は問題ありません」

「こっちも」

「私も準備は万端です」

『それじゃあ、1回限りの大勝負だからお互いに悔いの残らないような戦いを期待しています――ファイ!』


 どうやって鳴らしているのか分からない鐘の音が響き渡る。


 直後、シルビアが収納リングから何本ものナイフを取り出してアイラとメリッサの2人に向かって投げる。

 しかも狙いはまともに当たれば致命傷になりうる頭部だ。


 やっぱり本気で勝ち(殺し)に行っている。


三つ巴の戦いの景品

・主の童貞

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