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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第37章 暴走迷宮
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第20話 軍事都市前の奇襲

ガルディス帝国攻略編開始です。

ここまで10話ぐらいかな、なんて思っていた時期がありました。

「全員、揃っているか?」


 整列した数万人による軍勢を前にリオが二人の将軍に尋ねる。

 グレンヴァルガ帝国のホルクス将軍とガルディス帝国のホランド将軍。

 両者が軍勢を率いることとなる。


「はい、問題ありません」


 気勢良くホルクス将軍が応える。

 対照的にホランド将軍は俯いていた。


「……申し訳ございません。全員を集めることはできませんでした」

「いや、いい。十分な数は集めてくれた」


 目の前にいるのは約十二万の軍勢。

 内訳はグレンヴァルガ帝国が二万にガルディス帝国が十万。ガルディス帝国軍の方が圧倒的に多いのは、戦闘をメインに行うのが彼らでグレンヴァルガ軍はサポートや監視の側面が強いからだ。


 国中の戦力がオネイロス平原に集まったおかげでガルディス帝国の戦力は二十万になろうとしていた。ガルディス帝国からの要請により、避難民を鎮める為に十万は戦力が欲しいと言われたため残すことにした。

 当初の予定では十万が集まるはずだった。


「報告は聞いている。何人か逃げ出したらしいな」


 昨夜のうちに数十人の脱走があった。

 夕方のうちにガルディス帝国へ戻ることが伝えられたことで一部の兵士は覚悟が決まらず恐慌状態に陥ってしまった。どの部隊が作戦に参加するのかは、既に決定事項でありオネイロス平原にいたままだと強制的に参加させられてしまう。


 北へ戻ることができないとなれば、南へ向かうしかない。

 しかし、グレンヴァルガ帝国側では軍による厳戒態勢が敷かれている。生活基盤を失った避難民が押し寄せることになれば治安が乱れてしまうのは必至。

 だから、侵入を全力で阻む。


「こちら側へ来ようとした者は可能な範囲で捕縛させてもらったが、大多数はその場で処分させてもらったが構わないな」

「……はい」


 本当は文句の一つでも言いたかった。

 だが、将軍である自分が文句を言えば軍全体へ責任が追及されることが分かっているから何も言えない。


「減った分は現地で活躍してもらえれば十分だ」

「もちろんです」



 ☆ ☆ ☆



 軍事都市モンストン。

 グレンヴァルガ帝国との戦争における重要な都市で、戦争に消費される物資があちこちから供給される。そのため南側には行軍ができるほど大きな街道が一本あるだけだが、北部方面には様々な場所からの街道が繋がっており、出入りをスムーズにする為の門がいくつもある。


「軍事都市でありながら、あの都市が陥落したのは当然かな」


 ガルディス帝国建国後に改築された都市。

 そのため基本的には南側からの襲撃しか想定しておらず、北側に対する防御は手薄だった。


「そう言ってあげないで下さい。寄せ集めて作られた帝国であったので、モンストンの領主を信用できていなかったのです」


 戦力が集められる都市。万が一、反乱が起こってしまった場合でも速やかに鎮圧できるよう内側からの攻撃には弱くしていた。

 今回は、それらの対策が全て裏目に出てしまっている。


 そんな軍事都市が遠くに見える。


「――密集陣形!」


 馬に乗ったホランド将軍の声に応えて街道の左右へ大盾を手にした兵士が並び立つ。

 彼らの役割は奇襲を防ぐこと。


 ――ヒュンヒュン!


 離れた場所にある草むらから矢が飛んでくる。それも同時に何百本という数だ。


「な、なに……!?」


 ホランド将軍が予想外な事態に驚いている。

 大盾部隊が大盾を上に掲げて矢を防ぐ。


「何かいる気配には気付けたが、まさかこんなにいるとは……!」


 今回、斥候は出していたものの長距離を偵察することはできない。整備された街道の上に魔物はいないみたいだが、少しでも外れれば魔物の大軍と簡単に遭遇してしまう。

 だから、街道付近の偵察しか行えていない。

 見晴らしの良い場所だから、それでも問題がなかったはずだ。だが、人間の腰ぐらいの高さしかない草原の中から大量の弓矢が放たれている。何かしらの脅威が潜んでいるのは間違いない。


「ぐ、ぅぅ……」


 呻き声をあげて何人かの兵士が倒れた。

 見れば倒れた兵士の周囲は血で真っ赤に濡れており、切断されたせいで腕を落とした兵士までいた。


「妙、だな」

「はい」


 俺の呟きにシルビアが同意した。

 襲撃が始まる直前まで俺だけでなくシルビアまで潜んでいることに気付けなかった。今は襲撃が始まったせいか草原に大量の魔物が潜んでいることを察知することができる。


「ゴブリンですね」


 気配は弱々しく、ゴブリンのもので間違いない。


 ゴブリンアーチャー。自然にある物で弓矢を作成する能力を生まれた時から保有しているゴブリン。

 その能力から予想できるように飛んでくる矢は、木の枝の先端に尖った石を括り付けただけの物。鎧を着た兵士なら当たっても無事だ。ただ、どこかで拾ったのか兵士が扱うようなしっかりとした矢も飛んでくるため油断はできない。


 ステータスが低いため離れた場所ならゴブリンを見落としても仕方ない。

 しかし、ゴブリンの後ろにいる魔物を見逃すのはあり得ない。


「オーク……」

「しかも、ハイオークまでいるぞ」


 荒い息を吐く紫色のオーク。

 手斧を持っているオークまでおり、彼らが矢を防御する為に無防備となった胴体へ手斧を投げて兵士を攻撃していた。


「クソッ、モンストンの門は見えているというのに……」


 唐突な奇襲。

 魔物が相手であるため奇襲を想定しなかったホランド将軍が苛立つ。


「ホランド将軍」

「なんですか、ホルクス将軍」

「こちらは奇襲によって完全に劣勢に立たされています」


 馬を寄せたホルクス将軍が進言する。

 作戦においてガルディス帝国になれているホランド将軍に指揮権がある。しかし、最終的な決定権はホルクス将軍にある。ホルクス将軍は、一応は進言という体を取っているが、ほとんど命令に近い言葉だった。


 ――グゥアアッ!

 ――グゥゥッ!


 その時、街道を囲んでいたハイオークが雄たけびを上げながら襲撃を仕掛ける。


「ひぃ、向かって来たぞっ!」

「どうするんだよ!?」


 兵士の中には突っ込んで来るハイオークの姿を目にして怯えている者もおり、早急な対応が必要だった。


「まずは状況をどうにかしましょう。囲まれた平原で戦うよりも都市の中で戦った方が人間にとって有利です」

「あ、ああ……そうだな」

「では」


 ホルクス将軍がグレンヴァルガ帝国軍を指揮してモンストンへ先行する。

 残されたガルディス帝国軍の役割は、左右から迫るハイオークへの対処と殿。


「進めッ!」

「あ、おい……!」


 馬に乗った兵士が駆ける。

 その光景を見てガルディス帝国軍の兵士が声を掛けようとするが、近くにいた同僚の兵士から止められる。


 危機的な状況に陥った場合にはグレンヴァルガ帝国軍の生存を優先させる。

 最初から決められていたことであり、一切の反論を受け付けてもらえる状況にはない。最悪の場合には軍事審問に掛けられて処罰される可能性もある。


 俺たちもグレンヴァルガ帝国軍の後ろに続く。

 真っ先に逃げているように見えるグレンヴァルガ帝国軍だが、逃走先であるモンストンに脅威がないか確認する役割を担っている。最悪の場合には自分たちから犠牲を出してでも俺たちを守るよう言われている。


「――いた!」

「お、見つけたか」


 前を向いたまま走りながらシルビアの意識は別の場所へ向けられていた。


「ガルディス帝国軍を助ける為に離れたいと思います。よろしいですか?」

「ああ。こんな出発したばかりで戦力を大幅に奪うなんて困るからな。彼らで対処できない脅威があるなら対処してこい」

「はい」


 シルビアの姿が隣で、すぅと消える。


「大丈夫かな?」

「シルビアのことだから自分一人で対処できると思ったから単独行動を取ったんだろ」


 不安から呟くアイラ。


「そっちもだけど、モンストンの方も何かいるんじゃない?」

「まさか--」


 アイラの考えを否定しようとしたが、足を止めて意識をモンストンの方へと向けるとすぐさま【跳躍(ジャンプ)】で跳び、


外壁の上へ着地すると同時に蹴りを入れる。

 すると、目の前の人物は悠然と弓を掲げて受け止める。


「少し数を減らそうと思ったんだけど気付かれた……」

「シャルル・サクリーナ」

「……名乗った覚え、ないけど」

「お前の事を知っている人物がいたんだよ」


 モンストンの外壁の上にいたのはリオと対峙したことのある弓士――シャルル・サクリーナだった。

☆書籍情報☆

活動報告にてキャラデザ公開しています。

表紙はヒロインのシルビアが大きく描かれていますよ!

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