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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第36章 防衛構築
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第11話 量産ゴーレム襲撃

「なんだ、これは!?」


 酒場の入口をこじ開けて姿を現したのは人型のゴーレム。人と同じような事をさせる為に似た姿をさせているものの、強靭性を求めた結果一般男性の中でも大柄な人と同程度の大きさになっていた。

 そんな相手に入口を塞がれれば誰もが不安になる。

 酒場にいた人間を代表してリシャルレット家の執事が声を荒げる。


「修理が間に合った量産型のゴーレムだ」

「……お前は!?」


 ゴーレムとは反対方向――酒場の裏口から聞こえてきた声に振り向くと執事も俺の姿を認識した。

 酒場にある出入口は二つ。

 どちらもゴーレムと俺に封じられた。


「どうして……」

「アレだけ衝突しておいて監視の一つもつけられないと本気で思っていたのか? 冒険者ギルドで忠告されていたのに何も思わなかったのか」

「そこまで……」


 周囲を警戒していた執事。尾行されることを最も恐れていた。

 ただ、相手が悪かった。俺は屋敷で子供たちと遊びながらでもリシャルレット家の関係者全員の言葉を盗み聞くことができる。

 そして、最良のタイミングで訪れると捕縛に動いた。


「こっちは人手が足りないんだから敵対行為はしないでほしいところだな」


 女性陣は全員屋敷に置いてきた。

 子供たちを放置してまで出張るような問題でもない。


「ま、最小限の費用で人手を賄うことができるようになっていたからちょうどよかったけどな」


 両手を広げたゴーレムが入口から酒場へと足を踏み出す。

 重量のあるゴーレムは歩くだけで重たい音を響かせる。幸いにして、ここは秘密の会談を行えるように改造された酒場。近所には振動と音が僅かばかり伝わる程度で済む。もっとも、僅かに伝わるはずの音も必要最小限の結界で防がれている。外では騒ぎを察知することもできない。


「こ、こんな事が許されると思っているのか!?」

「こんな事?」

「そうだ! 彼らはたしかに褒められた人たちではないかもしれない。だが、私たちは夜遅くに会って話をしていただけだ。このように襲われる謂れなどない!」

「ああ、そうだぜ! こんな事をして許されると思っているのか?」


 証拠はない。

 たしかに証拠もなく人を襲うような真似をすれば力を持っている冒険者は重罪に処されることとなる。


 だが、それは証拠がない場合の話だ。


『動かせるのは何人ですか?』

『40人は動かせる』

『結構。その者たちを使って彼らを捕えてもらいます』


 ……!?

 酒場にいた連中の顔が驚愕に歪む。


 俺の持っていた箱から聞こえてきた言葉は、先ほど酒場内でやり取りされた執事とゴロツキの会話だ。


「証拠なら用意した」


 襲撃がこんな時間になったのは、致命的な尻尾を曝け出すまで待っていたからだ。


「これは周囲の音を記録する魔法道具だ。この会話の前後も録音しているから、お前たちが何を企んでいたのかは分かっている」

「チッ、やるじゃねぇか」


 ずっと疑って監視していた。

 相手のプライバシーを考えれば咎められることだが、生憎と彼らがしようとしていた事を考えれば糾弾する方が優先される。


「俺たちを騎士団に突き出すつもりか」

「そんな生易しいことをするつもりはない。そっちの執事だけじゃなくて、お前らも俺の庇護下にある子供たちを誘拐しようとしていたんだ。相応の覚悟はできているんだろうな」


 酒場にいた全員に向かって殺気を向ける。


「ぁ……」


 小さく呻く男が一人。

 酒場にいたゴロツキたちの中では小柄な方で、未だに少年といった感じが抜け切れていない男だったのだが殺気を向けられただけで腰を抜かしてしまった。


「クソッ……!」

「こ、こんな奴を相手にしていられるか!」


 最低限の気力を振り絞った連中が俺から逃げる。

 しかし、唯一の逃げ道である酒場の入口ではゴーレムが両手を広げて待っている。


「やってやる!」


 ゴロツキの一人がナイフを手にして斬り掛かる。


 キィン!


「は、え……?」


 全力で叩き付けられたナイフ。少しはダメージがあるかと思っていたが、傷をつけることが叶わないどころかぶつかった瞬間にナイフの方が砕けてしまった。

 戸惑ううちに男の体がゴーレムに捕まる。


「は、放しやがれ!」

「放してやれよ」


 俺の言葉を受けてゴロツキを掴んでいたゴーレムが床に男を叩き付ける。


「が、ぁ……」


 床へ叩き付けられた衝撃、さらに上から重たいゴーレムに押さえ付けられたことによってゴロツキが一瞬で意識を失う。


「おい……」


 仲間が呼び掛けるものの気絶したゴロツキが意識を覚ます気配はない。


「そんな呆けていていいのか?」


 裏口の近くにいたゴロツキの一人が俺に蹴られて意識を失う。

 仲間が蹴られた光景に怒ったゴロツキが剣を手に斬り掛かって来るものの剣を持つ手を掴まれ、顔を殴られると同じように意識を手放す。


「ブロード家との抗争に負けてアリスターまで逃げてきたのは半数。もう半数は、以前からアリスターのスラム街にいた連中だな。悪いが、冒険者として活躍することを諦めた連中に俺が負けるはずないだろ」


 過去の自分たちと今の俺を比較させることで戦意を完全に挫く。

 彼らは挫折してしまったからこそ、逃げた先で再び高すぎる壁を前にしたことで現実を受け入れざるを得なくなる。


「どけっ!」


 呆然とするゴロツキたちを押し退けて、ゴロツキたちのリーダーがゴーレムの前に出てくる。リーダーの手には大剣が握られていた。


「残念だったな。俺は、他の負け犬連中とは違うぞ」

「俺には敵わないと判断してゴーレムを相手にするつもりで負け犬だ」

「へっ、ゴーレムぐらいが何だって言うんだ」


 リーダーがゴーレムへ大剣で斬り掛かる。

 上段から振り下ろされる鋭い斬撃。戦闘力に自信があるのは本当の事のようだ。


「そん、な……」


 問題は、それほどの攻撃でも傷ひとつつけることのできないゴーレムに高すぎる耐久力にある。


 リーダーの手にあるのは、半ばからポッキリと折られてしまった大剣。

 対してゴーレムの体は無傷。


「クソッ、化け物が!」


 リーダーに残された抵抗手段は折れた大剣で殴り掛かることのみ。

 殴られたところで傷付くはずがないのだが、攻撃を煩わしく思ったゴーレムが額をチョコンと押すとリーダーが気絶する。


「ロレンさん!」

「おい、どうするよ」

「どうするって言われても……」


 頼みの綱だったリーダーであるロレンが倒された。

 ゴロツキたちに反抗するような意思は残されておらず、武器を放り捨てて降伏する意思を見せるゴロツキたち。

 残念だけど、その程度で許すつもりはない。


「これまでに見せしめをさんざん行ってきたのに未だに馬鹿な真似をする奴らが絶えない。自分たちならどうにかできる、そんな風に思っているからだろう。申し訳ないけど、そういう奴らに容赦するつもりはない。道を踏み外したらどうなるのか理解していたのに行動を起こしたんだ。この後どのような目に遭ったとしても、それはお前たちの選んだ結果だ」


 全員へ【迷宮魔法:睡眠(スリープ)】を掛けていく。

 次々と意識を失っていく男たちを見て執事が青褪め、最後には彼だけが残された。


「リシャルレット家と本気で対立するつもりか!?」

「先に対立してきたのはそっちだ。俺に断られて苛立って、身内を捕える真似をしようとした。しかも、部下からの提案を否定するどころか賛成していた。そして、お前がここまでの行動に出た時点で敵対関係は成立した」

「こうなったら……!」


 一目散に俺へ背を向けて逃げ出す執事。

 しかし、振り向いた先では重たいゴーレムが逃げ出した時に備えて構えており、ゴーレムの体へ正面からぶつかってしまったことで気絶してしまう。


「意識を失わせる手間が省けたのは嬉しいけど、こんな幕切れか」


 気絶しているロレンのステータスを確認する。

 冒険者で言えばCランクにはなれそうな筋力をしているものの他の数値がダメだ。それでも、筋力に特化した男の攻撃を受けても無傷でいられたゴーレム。


「これで今までのゴーレムの半分以下の費用だって言うんだから上出来だな」


 ゴーレムの完成度に満足しながら気絶した全員を迷宮へ運ぶ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴーレムですが、広義で人型ロボットだからロマンです。敵だと厄介だった存在が、味方になって頼もしい仲間になるという展開は大好きです。 [気になる点] シルビアさんと対峙したゴーレムのように、…
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