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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第6章 没落貴族
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第17話 アジト制圧

「邪魔」


 出会い頭にいた兵士の眉間がメリッサの指先から放たれたレーザーによって撃ち抜かれる。

 倒れた兵士を無視して砦の中をどんどん奥へと進んで行く。


 俺たちが目指しているのは財宝が保管されている部屋だ。

 第3王子が略奪によって得られた財宝を将来に使うつもりだったのなら使うこともなく、どこかに財宝を隠しているはずだった。隠す場所は見つかった時のことを考えれば表向きの仕事をしている場所の近くには隠せない。となれば、裏の顔である盗賊団に預けておくほかにない。

 とりあえず砦の中にいる盗賊を倒しながら奥へ進んで行く。


「お?」

「む?」


 奥から現れた兵士8人と鉢合わせてしまう。


「お前たちは何者だ?」


 兵士の1人が砦に現れた侵入者である俺たちに尋ねてくる。


「俺たちは街道を利用中に盗賊から襲われてしまった冒険者です。その盗賊を締め上げてアジトの場所を聞き出したので、盗賊が貯め込んでいる財宝を狙ってアジトに強襲を仕掛けているんです」

「そ、そうか……」


 俺の言葉を聞いて兵士の頬が引き攣っていた。

 命令に従って正しい行動をしていると信じていた彼らは自分たちが逆に襲撃されることなど予期していなかったのだろう。


「あなたたちは? 見たところ兵士のようですが?」


 現れた兵士はきちんと兵士に支給される鎧を着ていた。


「われわれも、盗賊退治だ」


 思わず盗賊の前でどもってしまった。

 本当は兵士であるということを知っていたせいだろう。

 だが、この状況でそこを指摘するような真似はしない。


「その人数で、ですか?」


 砦には200人近い盗賊がいる。

 それをたった8人で討伐しようなど自殺行為に等しい。


「いや、他にも仲間がいるのだが、この混乱の中ではぐれてしまった。良ければ君たちも討伐に協力してくれないか?」

「もちろんです。兵士の皆さんが協力してくれるなんて助かります」


 兵士が先導し、その後を俺たちが続く形で歩いて行く。


『よろしいのですか、ご主人様?』

『面白そうだから、ちょっと話を合わせてみた』


 果たして盗賊と鉢合わせた時、どんな反応をしてくれるのかとても楽しみだ。

 お、ちょうど盗賊6人が姿を現してくれた。


「む? 盗賊が姿を現したぞ。早速協力して――」


 兵士が俺たちと一緒になって盗賊を討伐しようとするが、俺たちは逆に3歩後ろへ下がる。


「何をしているんだ?」

「いやだなー。兵士8人に対して盗賊は6人ですよ。皆さんだけで問題ない人数差じゃないですか」


 兵士の魂胆としては俺たちが盗賊と戦っている間に隙をついて俺たちを斬り殺すという考えだったのだろうが、俺たちが下がったことによって兵士だけで盗賊に対抗しなくてはならなくなった。


 兵士たちがお互いに「どうする?」といった感じで目を合わせていた。

 そんな反応をしている時点で兵士ではないと言っているような状態だ。

 盗賊たちも行動を何も起こさない。


「どうしました? どうして、盗賊を討伐しないのですか?」

「はぁぁぁ!」


 兵士が気合を上げながら剣を振るう。

 もちろん相手は盗賊ではなく、俺。

 ま、相手の力を考えると不意を突かれても簡単に受け止めることができる。兵士の剣を片手で持った神剣で受け止めると空いていた手で目を覆い、芝居掛かった口調で告げる。


「どうして盗賊を討伐に来た俺たちを攻撃しているんですか? さては、兵士だというのは嘘で、あなたたちは盗賊なんですね!」

「ち、違う……! 俺たちは本当に兵士で――」

「まだ言うか!」


 兵士の剣を弾き飛ばすとそのまま両断する。


「ひっ……!」


 リーダー格だった兵士があっさりと斬り捨てられてしまった光景から逃げ出そうとするが、シルビアの手によって頭部にナイフが突き刺さり、メリッサの生み出した風の刃によって斬り裂かれた兵士の死体が次々と積み上がっていく。


「ったく、どれだけいるんだよ」


 砦に到着してから100人以上の盗賊を斬り捨てているというのに尽きる気配がない。


「よくこれだけの兵力を維持することができていましたね」


 兵力と言うのは維持に膨大な費用が必要になる。


 どこから、それだけの資金を調達してきたのか?


 略奪によって得られた財宝に手を付けていないのだとしたら彼らの表向きの仕事から得ていた可能性がある。


「まったく、住民から得た税金をなんだと思っているのか?」

「さっさとこんな場所での仕事を終わらせることにしましょう」

「けど、財宝が見つからないことには帰るわけにはいかないぞ」


 どこに隠しているのか分からないので虱潰しに探していくしかないのだが……


「見つかりました」


 廊下を歩いていただけなのにシルビアがあっさりと見つけてしまった。


「どこにあるんだ?」

「こちらです」


 隣にあった扉を開けて中に入って行く。

 シルビアが空けた部屋は資材を置いておく為の部屋らしく、部屋の隅に木が積み上げられていた。

 だが、財宝のような物はどこにもない。


「こちらです」


 シルビアが今度は床を指差す。

 ああ、そういうことか。


「地下室か?」

「はい。わたしの探知が地下に広い空洞があることを感知しました」


 問題は地下室への入口らしい物がどこにもないこと。

 ただ、俺にも歩いた時の感触から床の下に空洞があることは分かった。


「面倒ね。あたしが斬る」


 そう言うや否や床が細かく斬り刻まれ、俺たちは地下室へと落とされる。


「お前な、やるなら一言言ってからやれ」

「この程度の高さなら全員無事なんだから平気でしょ」


 アイラは剣を鞘に納めると地下室の中にある財宝を検める。


「よく、これだけの金銀財宝を集めたわね」


 地下室は砦の部屋を3つ分ほど使っている広い部屋で置かれている物がどれも光り輝いていた。

 換金すればいったいどれだけの金額になるのか予想もできない。

 普通に金貨が箱に詰められている。それだけでも1000枚近くはあるはずだ。


 これらは、全て盗賊を退治した者の所有物となる。

 つまり、まだ退治はしていないが俺たちの物になる。


「けれど、どうやって回収しますか?」


 収容能力に関しては、道具箱があるので問題はない。

 問題は、手に持って箱の中に入れていく作業が面倒だということだ。

 だが、人は常に成長するものだ。


「回収は俺がやる」


 砦を囲む壁を出現させた時と同じように足元から魔法陣を出現させると部屋と同じ大きさまで広げると部屋の中心に道具箱(アイテムボックス)が出現する。

 広がりが止まったところでさらに魔力を流すと部屋を埋め尽くしていた財宝が全て消える。


「よし、回収完了」

「いつの間にこんなことができるようになったんですか?」

「なんか、色々と試行錯誤している内にできるようになった。道具箱を使用すると魔法陣と箱が出現するけど、大切なのは魔法陣の方だったんだ。道具箱を出し続けるよりも魔力は多く消費するけど、力の使い方次第では魔法陣の上にある物を道具箱の中に収納できるようになった」


 財宝のなくなった部屋は寂しく感じられた。


「出るか……」


 せっかくなので本来の出入口から出て行く。

 地下室の奥の方にあった階段を上ってドアノブを捻ると、向こう側には砦の廊下になっていた。だが、振り向いてドアがあった場所を見るとドアノブがなく、模様も壁と同じになるように偽装されていた。


 どうやら、見つからないようにきちんと偽装はされていたようだ。


 ただ、この場所は盗賊たちにとっては守りたかった場所らしく、すっかり囲まれてしまっている。


「さて、砦内でやるべきことも終わったし、制圧作業に移るぞ」

「はい」

「りょーかい」

「分かりました」


 そこからは一方的な虐殺になった。

 俺たちを囲んでいた20人ほどの盗賊は見るも無残な姿になってしまっている。


 屋内では狭いせいで1度に動ける人数が制限される。

 そのため、どうしても個人の技量が物をいう。盗賊たちも数を揃えてはいるが、本来なら戦闘を行わない砦内での戦闘なため数の利を活かせていない。もっとも彼らレベルが何百人と集まったところで俺たちには敵うはずがないのだが……。


「で、最大目標はどこにいる?」

「少し待って下さい」


 振り子を使用して第3王子の位置を確かめたメリッサが眉を顰める。


「どうやら砦から脱出しようとしているようで、壁の近くに反応があります」

「まさか、部下を放って自分だけさっさと逃げ出すつもりなのか?」

「大丈夫でしょうか?」

「問題ない。お前がさっき使ったレンズ魔法並の威力がある魔法を何十発と撃ち続けて初めて小さな穴が開くほど頑丈に造ってある。普通の騎士や兵士に壊せるような壁じゃないんだよ」


 とはいえ、もう1つだけ出口が存在する。

 それが地中だ。

 壁の近くで穴を掘って壁の向こう側まで繋げれば外に出ることは可能だ。閉じ込められて焦っている彼らがその事に気付ける可能性は低いが、一応壁の方へ向かった方がいいだろう。



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