山谷の本気
「はぁぁぁぁい、おはよぉぉぉございます。」
「おはようございます。」
朝の挨拶があった。しかし、いつものような熱気に包めれたような挨拶ではなく、とてもやる気のしない挨拶だった。
なぜならば、担任が変わり、コンピューター部の顧問の白崎朋美になったからだ。朋美は何と言っても全てのことにおいてやる気がないことが有名だ。教師なのにもかかわらず
「ん、これやっといてね。別にやらなくてもいいけどね。」
と、こんな風にいい、本当にやってなくても何も言わないのだ。そして噂によると2年の技術の授業の担当らしいが、宿題は出すけれどだいたいやってあれば五段階評価で4確定、しっかりとやってあれば5確定、やってなくて提出をしなくても3確定らしい。絶対に2や1はつけないらしい。
素晴らしい。この先生が担任なんて、願っていたことが現実になった。嬉しすぎて目から血が出そうだ。
「はぁぁい、山谷くぅぅん、泣いてないで席に着こうか。」
「え?あ、はい」
挨拶をした後に感動をしていたらいつの間にか泣いたまま立っていたらしい。出てきた液体が血じゃなくてよかった。
朋美先生は適当にSTを終わらせ、一時間目の音楽に間に合うように音楽室に向かうように言った。
山谷は音楽の用意を抱え、音楽室に向かおうとする。一時間目から嫌いな教科は本当にだるい。テンションが下がる。今日はダルすぎて友達と一緒に音楽室に行きたくない、そう思っていたら後ろから声が聞こえてきた。でも、なんか後ろを振り返って見るという行動が面倒臭い。誰か代わりに見てくれないかな?誰か代わりに俺の目になってくれないかな?するともう一度声がした。仕方がない、振り返るか、あぁぁメンドイ。
「山谷君?一緒に音楽室行かない?」
「あぁ、なんだ、溥儀子か、ああ、いいぜ。ちょうど誰とも一緒に行く予定なかったし。」
「本当に?」
「あぁ、なんか最近お前、俺に関わってくること多いな、気をつけたほうがいいぞ、俺の近くにいると先生がよってくるからな。」
「ふえ?そ、そうかなぁ?そ、そんなことないよ。は、早く音楽室にいかないと。ね。」
そう言って山谷を急かした。
(よかった、山谷君が恋愛に関して鈍感で、)
山谷と山田は少し急ぎ足で音楽室へ向かい、チャイムの鳴る2分前ぐらいに席に着いた。
そして山谷にとっての地獄のチャイムが鳴り響いた。
「はーい、授業をはじめまーす。起立、気をつけ、礼、お願いします。着席」
流石に音楽の教師だけあって声がバカ大きい、さらに声が高いからもっと大きく聞こえる。音とは厄介なものだ。
「はーい、今日は音楽の歴史について学びます。教科書38ページのこの人は誰でしょう?」
音楽教師の金春香の授業は当てられて答える授業のやり方ではなく、挙手制だ。なのでぼーっとしていても成績以外気にすることがない。しかし、
「あっ、ごめんね手を挙げてもらった子達、今日は先生が当ててみるね。いっつも答える人が固まっているから。」
なん、だと?んなバカな、
「はい、では山谷君」
「、、、、、、、」
しばらく沈黙の時間が経った。
「山谷君?当たってますよ?」
そんなことはわかっている。しかし、教科書が無いため答えがわからない。なぜなら一週間前の授業で先生の態度に切れて教科書をライターで燃やしたからだ。
俺が教科書を持っていないことぐらいわかっているはずなのにわざと当てやがった。
「ぷっザマァみろ。」
みたいな顔面をしてやがる。こうなったら感で答えるか?適当にベートーベンとか言っときゃなんとかなるだろう。
「べ、ベートーベン?」
「ごめんねぇ、この人はバッハよ。」
くそ、やっぱ無理か。
「はい、では有名な作品を言ってみよっか。さっきできなかった山谷君、答えることができるまで当てちゃうよ〜」
は?ぜってー生徒へのいじめだろ。教育委員会に訴えるぞ?と、とりあえず答えねえと、なんだろ?国歌か?
「国歌?」
「え?ああ国家ね、山谷君、脳みそ入ってる?違うよ。答えは次のページだからね〜みんな、ここは大事だから。覚えておこうね。」
チクショウ、バカにしやがって。
「おいクソババァ?死…」
「はーいではちょっと聞いてみよっか」
クソババァの声に俺の声がかき消された。そして綺麗な音色が教室内に響き渡る。まぁ、音楽の感じ方は人それぞれなので綺麗な音色だったかどうかわからないけれど。
(それにしてもマジでウザいな、前からウザいとは思っていたがこれほどとは、ふっ、今日のこの瞬間からぶっ潰す教師のターゲットが決まったからいいとするか。最近暇だったんだよぉ。)
山谷はそう思いながら次々と当てられ、どんどんと間違えた。間違えるごとに周りの生徒の目線が山谷に集まる。それを無視しつつ、相手をどうやってぶっ潰すか考えていた。
山谷を除くクラスの人数約30人の目線の中に
「山谷、教科書ないじゃん。確か前の授業で燃やしたんだよな…あいつ何やってんだ?」
と思っているものが多かったが、一人だけ、心配そうに見つめる目線があった。
そう、その目線の持ち主は溥儀子だ。
(山谷君、教科書もってなくてたぶん答えがわからなくて困ってるよね。どうしよう、席が少し遠いけど小声で答えを教えてあげようかな?でも、そんなことをしたら私が山谷君のことが好きなことがみんなにバレちゃう…どうしよう…)
溥儀子は答えを言うべきか、言わないべきか悩んでいた。
結局そのまま何も言わずに山谷だけが先生に当てられ続け、授業が終わってしまった。
そして授業が終わってしまったのと同時に溥儀子も何も言えずに終わってしまった。
(べ、別に今日だけしか音楽の授業がないわけじゃないからいいよね。まだ……終わってしまったわけじゃないもんね。もう少し山谷君と接したほうがいいかな?)
そう思い、溥儀子はまた、山谷と一緒に自分たちの教室へと戻っていった。
音楽の次は数学だった。
もちろん山谷はさぼった。山谷の場合、理科と数学は授業なんて聞いてなくても当てられたら問題を見ただけで答えがわかる。それが理由ではないがさぼった。
なら、理由とはなんなのか。
その答えは……
授業をサボリ、無料通話アプリで学校の奴らと(ほかの奴らも今、授業を猛サボリ中)チャットをしていた。内容は…
「音楽の教師ウザくね?おい、お前ら、俺と一緒に学校でテロ起こさね?」
まさかの教師からのイジメに耐えれなくなって、イタズラではなくテロを起こすことにまで発展していた。
するとすぐに返信が返ってきた。それもなぜか二年生からだった。
「それ、いいな、俺もちょうどウザいと思ってたんだよ。」
もちろん相手は俺の顔、名前なんて知らないのでいきなりのタメ口である。ならなんでお前は相手が何学年か、わかったってか?
その理由は山谷はこんな時のために全学年のチャットアプリ内の仮名を把握しているからだ。
たとえば今しゃべっているこいつ、仮名では「オレンジジュース」となっているが正確には2年1組の阿玉倭離位だ。
チャットと言うものは一人がしゃべりだすとどんどんとそれにつられて他の人までしゃべってくる。
「それな、わかる。なんか正解するまで当ててくんだよ。他の頭いいやつには、しょうがないよね。で済ませるのに俺に対しては何回も当ててくんだよ。」
「でも、ほかにもウザい教師っていることない?」
「確かに。俺にとっては特に家庭科の……誰だっけ?あのババァ。あれさ、なんも俺、悪いことしてないのに怒ってくるんだよ。マジむかつく。」
「みんな俺と同じ仲間か。」
いつの間にか結構の人が話をしていた。逆に考えるとこんなにも授業をサボっている奴がいるのかと思うぐらい。
「てか、この話持ち込んだの誰だっけ?」
最終的にはいつの間にか俺の存在が消されている。もう面倒くさいからここでまとめるか。
「俺だ。」
「誰だよ?ここチャットだから、顔わからんから。名乗ってくれ。」
そうだった、顔と仮名が一致してわかるのは俺ぐらいだったわ(笑)
「すまん、すまん。三年の山谷晴樹だ。よろしく。」
「え?あの悪い方で有名な山谷さんですか?」
「ああ、そうだ。」
「え?マジで?」
なんか俺、有名らしい。しかし、こんな所で油を売っている暇なんてない、さっさと内容を伝えなければ。
「あぁ、マジだ、とりあえずここに集まってもらったお前らにいう、俺は音楽の教師が憎い。だからここで一発大規模なテロをしたいと提案する。」
「ですよね。あいつウザいですよね。」
「いったいどんなことをするのですか?」
「内容はこうだ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おお、なる・・・・・・・・・」
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そんな感じで約45分の授業をすべて計画を練ることに費やした。(ちなみに今日の数学の授業では当たらなかった。)




