第85話 死神VS悪魔
*第85話 死神VS悪魔*
「マジかよ…」
三体の悪魔が咆哮する。
辺りに響く爆音と、それが作り出す波動が地を揺らし空気を振動させる。
奴らの能力は不明。
しかし、新を一撃で吹き飛ばすだけのパワーと、スピード、新と同レベルの殺気を放てることは間違いない。
そして、奴らがこの世界のモノでは無い決定的な証拠。
“命”が奴らには存在していなかった。
だから、新は不意打ちを直撃したのである。
普段、何もせずとも感じるはずの生命、その命が無い存在が急接近していることに気づかなかったのである。
九尾との戦闘に気を取られていたとはいえ、不覚をとった。
奴らの黒光りする筋肉はぐにゃりぐにゃりと動き続け妙なオーラを放っている。
それを見ているだけで吐き気がしそうだ。
恐らくだが、そのオーラの正体は高濃度の殺気と魔力の混合物。
魔力で殺気を具現化させているのだろう。
未知なる敵を目の前にして、新は気を引き締め、デスサイズを強く握る。そして、奴らに対抗するように殺気を放つ。
その瞬間、新の青く輝く瞳から僅かに蒼炎が零れる。
ガチャっと新がデスサイズを構え、鎌を後ろへ引き終えた瞬間、奴らは地面に亀裂を生みながら地を蹴り、四足歩行で突撃する。
その姿は大地を駆けるバッファローの如く、それでいて神速を持ち合わせていた。
一瞬にして、新との距離はゼロとなる。
その直後、奴らの頭から生える一対の角が巨大化し、新を突き刺さんとする。
新はそれを上に回避しながら、奴らの背をデスサイズ斬り裂く。
___硬い。
まるで、魔力で強化された鋼でも斬っているような感覚だ。
斬った反動を自分の手で噛み締めながら、新は着地し、更に奴らの方へ飛ぶ。
未だ奴らの姿は新たに対して背を向けている状態で、攻撃をするには好機である。
しかし、奴らにはあのスピードがある。
間違いなくカウンターが来るだろうが、そんなものに怯えていては入れられる攻撃も入らない。
迷わず、新は奴らへデスサイズの刃を向ける。
そして、予想通り、後ろ蹴りのカウンターが目の前へ突き出される。
しかし、新はそれを辛うじて奴らの下を掻い潜るように避け腹を斬る。
腹を斬られた一体の悪魔が呻き声が聞こえるが、そこで驚いたのは新の方であった。
斬った瞬間の“感覚”がなかったのだ。
先程とは正反対の感覚。
その代わり、奴を斬った切り口から魔力の塊がドロっと溶けだし、血のように地面に滴り落ち、バタりと倒れた。
(まず一体…)
それに目を取られているうちに、新は隣の一体の横殴りを食らう。
衝撃を緩めるため飛ばされる方向に軽く飛んでいたが、それでもその衝撃を緩和したとは言えないほどの激痛が新を襲う。
肉を抉られるような感覚というのは正にこの事を言うのだろう。
どうしようもなく吐き気が遅い、空気を吸うことが出来ない。
口から魔力を含んだ血反吐が漏れ、地面に撒き散らしながら2度3度地を蹴り、何とか着地する。
しかし、奴らの攻撃は終わらない。
すぐさま、もう一体が新の上空へ出現し、両手で作った岩石の様なハンマーを新の脳天に打ち込む。
それを両手で持ったデスサイズでガードするが、両腕の皮膚が裂けて血が飛び散り、受け止めた衝撃で地面にクレーターが形成される。
そして、受け止めることで精一杯の新にもう一体が手加減を知らぬ拳を打ち込む。
(まずい!)
渾身の力を振り絞り、頭上の拳を弾き返し、目の前へ襲い来る拳をデスサイズで地面に叩きつける。
しかし、その拳は止まることを知らず、直進する。
そんな事は予想ができていた。
だから、叩きつけた反動と、鎌を押し返す拳の力を利用し、拳と接触するデスサイズを中心に円を書くように体を動かし、回避する。
奴らの姿を見送りながら着地する。
瞬間、土煙と共に新の体は正面から地面を抉る。
頭を潰す勢いで掴まれ、そのまま顔面で地面を抉りながら加速していく。
そして、すくい上げるように中へ投げ飛ばされた。
体を翻し、奴らの姿を確認する。
奴らは、顎を外したような口から光を生み出し、その口を浮遊する新の方へ向けていた。
“ブレス”だ。
直ちに命をアテナを“100%”にするが、間に合わない。
次の瞬間、新はその三本の光のブレスに飲み込まれた。
高濃度の魔力が体を外側から焼き尽くすように襲い、ブレスの中でやっとアテナの命へと変化させることが出来た新は何とか一命を取り留める。
無抵抗に地面へ落下した後、すぐさま体の再生が始まる。
その時の新の姿は、顔は普段の新だが、その姿は死神である新の姿とは全く異なるものだった。
胸と腕だけが元々の武装をそのまま形を変化させたような漆黒の鎧を付けており、肩のに付いている金具で固定されたマントが全身を包む、手にはデスサイズではなく、巨大な透明な盾が握られていた。
そもそも、新が変えたアテナという神。“盾神”は未だ生まれていない。
恐らくだが、新の今の姿は何れ生まれてくるであろう盾神の姿なのだろう。
(そんなことはどうでもいい)
ミシミシと全身が悲鳴をあげながら、無理矢理立ち上がり、命を通常状態へ戻す。更に命を雷神49.5%%、風神49.5%へ変える。
攻撃防御以前に、あの攻撃を一度でも喰らえば致命傷だ。
ただでさえ、慣れない敵との戦闘。周囲に気を張り巡らせ、敵の一体一体の存在を見落とすな。
新は奴らの動きに対応するため、デスサイズに魔力を流し込み、小型にし、“刃を消した”。
この方が神速型の魔力を使う時には便利であることを最近知ったのである。
小回りが利くし、大きいと風などの抵抗を受けやすく、一撃のスピードが落ちてしまう。
また、小型にすると一撃のスピードは上がるが、攻撃力が下がるため、無刃にする。
あの硬い皮膚には攻撃力の少ない状態のデスサイズの刃は通らない。
だから、打撃で攻める。
新はコシューっ…と口から長いブレスを吐く。
息が全て吐き出された瞬間、両踵を持ち上げ、弾丸の如く血を蹴る。同時に一閃、奴らの姿を横目で捉えながら、一体につき20発以上の打撃を与えながら静止したの世界を通過する。
ザザザザッ!!!!と地面にブレーキをかけた瞬間、奴らは弾けるように衝撃が後からやってくる。
ボコボコと変形する奴らの体を確認しながら、体を180度回転させ、再び地面を蹴る。
怯む奴らに、今度は下から打ち上げるように容赦なく打撃の雨を降らせる。
最後に大振りを打ち込んだ直後、溜まった衝撃が一斉に奴らの体を抉り、天高く打ち上げられる。
天高く打ち上げられた奴らの隙を逃さない。
奴らの飛んでいった真下で新はデスサイズを回転させ、風神の力で風を纏わせる。
回転と共に風の力が強まり、やがて竜巻の如く吹き荒れる。
そこまで強まった後、勢いよく体をグリッと回し、その竜巻を大きくし、奴らを飲み込む。
風に仰がれ、グルグルと回転しながら更に天高くへと押し上げる。
魔力が混じった暴風に巻き込まれ、音速の弾丸と化し、強化された竹片が奴らに突き刺さる。
徐々に傷を増やしながら奴らはやがて、竜巻の外へ吐き出される。
新はそれを待っていた。
両掌に集めた魔力製の雷がバチバチと弾け、周囲に電光を飛ばす。
そして、奴らが吐き出された瞬間、両手を奴らに向かって突き出し、両手を開く。
「“雷撃”!!!!」
雷が一気に膨れ上がり、奴らの方へと放出される。
光速の雷撃は、一瞬にしてその距離をゼロに変え直撃。
奴らを飲み込み、轟っ!!と音を立て爆ぜる。
煙が荒がり、僅かに焦げた匂いがした。
(やったか…)
すると、煙を突き抜け、何かが落下した。
それは3つの黒い塊。
恐らく奴らだろう。
しかし、それは原型を止めていなかった。
ドロドロとした塊。ヘドロのような物体が落下していた。
数秒後にドシャリ、と地面にヘドロがぶちまけられる。
新はそれに恐る恐る近づく。
奴らは元々命が無かったせいで、倒したのか倒してないのかが分かりづいのだ。
摺り足で近寄り、気づいたことがある。
まず、奴らには骨がなかったということ。
木っ端微塵に吹き飛んだという訳でもなく、骨があったという痕跡が一切無い。
そして、そのヘドロは魔力で出来ていたものであるということ。
しかも、それは未だかつて見たことの無い種類の魔力である。
命が無かった事から察するに、奴らは機械のような存在だったのだろうか?
機会ならばエネルギーさえあれば動くことが出来る。かつ、命を必要としない。
奴らが敵であることは間違い無いのだが、未確認の魔力となると、獣神達の他にも敵がいることになる。
それは厄介だなと、しみじみ思う。
そう言えば…
“4体目”の悪魔はどこから現れたのだろうか…
確か、一体は少し前に倒したはずだ。
確かその時…奴を斬った切り口から魔力の塊がドロっと溶けだし、血のように地面に滴り落ち…………
「あ、そうそうこんな感じに。」
新は目の前のヘドロを見ながらそう思った。
そうだ、その時に見たんだ。
ということは…コレは奴らの“血”か?
ということは、コレは本体では無い…?
となると、まだ奴らは生きている?
カチャッとデスサイズを構え、神経を研ぎ澄ます。
何処だ?何処にいる?
命が無い敵はコレだから厄介だ。
しかし、新が緊張感を張り詰めても奴らの気配は全く無い。
仕方なく、胸にある内ポケットから先日作った“共鳴石”を取り出す。
共鳴石とは、鉱石に魔力を無理矢理集めた魔鉱石に近いが、持っていると魔法が発動するという訳でもなく、ただ、2つ持って、それらを打ち付けると物凄く音が響くという石だ。
それはもう、半径10km圏内なら余裕で響くレベルの音だ。
新は、それらを通常の使用方法通りに強く打ち付ける。
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッッ!!
と耳にツンっとくるような音が鳴り響き、辺りに音波を飛ばす。
耳を塞ぎたいが、堪えてその音を目を瞑って良く聞く。
一秒たりとも聞き逃さない。
全身で音を聞くんだ。
“跳ね返る音”を。
“反響定位”というものをご存知だろうか?
音の反響によって、物体との位置や距離とをはかり、周囲の状況を察知していく能力の事だ。
海豚や蝙蝠が使っている事で有名だが、近年稀にその反響定位を使える人間が存在する。
ならば、命を管理する死神の新が使えてもおかしくはない。
反響を使い、周囲10kmから奴らを探し出す。
数秒後、新は勢いよく後退し、デスサイズを構えた。
奴らが見つかったのだ。
それは思いがけぬ場所であった。
反響定位でやっと気づけた。
奴らのいる場所は、新の足元にあった“ヘドロ”であった。
目を凝らしただけでは気づかないほどの波が、そのヘドロの上で起こったいたのだ。
つまり、このヘドロは動いている。生きているのだ。
新はヘドロに殺気を向け威嚇しながら、命を鬼神99%に変え、デスサイズに魔力を送る。
殺気を向けた瞬間、ヘドロの波は大きくなり、ボコボコと揺れ出す。
デスサイズは徐々に魔力が集まり、紅光と雷を纏っていく。
ソレはまるで…
バコッォッッッ!!!!!!!!!!!!とヘドロが膨れ上がり奴らがその悍ましい姿を取り戻し咆哮する。
『『『フォゥオオォオオオオォオオオオォオオオォォォオオオオオォゥゥヴヴヴンンンッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』』』
「“鬼神流”……」
ソレはまるで、“鬼神”、希里のような……
「………………『鬼雷 斬撃砲』!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
魔力が一気に膨れ上がり、新はその魔力で破裂寸前のデスサイズを一思いに振り抜いた。
光が溢れ出し、その光は奴らを飲み込んだ。
ドゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
爆音と共に辺り一帯の地面を抉り、クレーターを形成しながら、大爆発を起こした。
爆音が京都中を木霊したのは言うまでもなかった…
夜は暑苦しくてなかなか寝付けず、ジリジリと照りつける朝日が容赦なく顔面に直撃し、朝4時前後に強制的に叩き起され寝不足が続く肆季紙でございます。
夏真っ盛り、正に海日和。
ええ、海日和ですとも。
学生であれば憧れるでしょう?
アニメ内でイチャイチャする主人公とヒロイン。
テレビの前の我らオタク共はクーラーの下で羨ましいと思いながら、現実のリア充達に対してリア充ヘイトクラブに入会。
頑張れ非リア、まだ希望を捨てるな非リア(肆季紙)。
希望を捨てたくなくとも、この暑さはヤバいですねマジで。
松〇修造でも増殖したのでしょうか?
クローン実験?
やめたげてください。
さて、いよいよ始まりましたバトルでございます。
ええ、バトルです!!そうですとも!!文字で書くと何気に1番ムズいバトルでございます!!
絶賛冷房病中の肆季紙ではございますが、ギリギリで頑張ります。
【朗報】※そんなに期待しないで?
ただいま、初の総合評価100pt突破記念で短編を同時進行で書いております。
Devil's Horn完結後の学校一のオタクは死神でした MINI ‼︎にて掲載させていただこうと考えております。
お楽しに!!
読んでくれた読者さんありがとう!!
それでは、また次回!!
パ〇パイ!!じゃくてバイバイ!!!!