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第110話 目覚め 3

*第110話 目覚め 3*


魔法の発動を失敗してから、数時間が経過した。

新は、人間が使っていた“パソコン”を模して生み出した機械を弄りながら、1号機から得られたデータを整理していた。


下界に降りてから、まだ半年も経ってないが、下界の多様な文明は新を虜にしつつあった。

パソコンは、指名手配2、3人を捕獲して得られた資金で購入した。そのパソコンをベースに、魔力で拡張、グレードアップを繰り返し、魔力で起動等出来るよう自身の使い易いように改造したものである。


ベースになったパソコンは、人間が言うには良いものらしい。個人で使うにはどうとか言っていたが、良いものに越したことはないので、それにした。

1cmの紙の束を4、5束ほど渡したが……。


「……死神。」


「何?」


ふと、1号機が話しかけてきた。

1号機は覚醒したばかりということもあり、天界の新の自室で面倒を見るという形になっている。アラクネにも手伝ってもらっていたが、現在は物品収集のため出かけている。

つまりは、部屋の中には1号機と新の2人きりということになる。


「何故、助けた…。」


「ん?」


「お前は、私の(ターゲット)のはずだ。お前を殺すことが、私の使命だ。何故、助けた?何故敵視しない?」


現在、1号機には新に訪ねたい事が3つ程ある事が“見えている”。

どれを先に聞いてくるか、新は考えていたが……


「………あー、それを最初に聞いてきたか。」


含みのある新のつぶやきに、1号機は気づいていたが、追求はしなかった。今は、疑問の返答が欲しいという思考を優先したようだ。

だから、あえて他の疑問に関わる質問で返した。


「お前は、“まだ俺と戦うつもりなのか?”負けるとわかっているのに。」


「…………答えろ。」


1号機は、新の質問には答えなかった。

予想はしていた。迷いがあるのも見えている。


死神である新は、心や思考がデフォルトで読めてしまう能力を持っている。便利そうであるが、日常的に相手の思考が見えるのは、誰であろうと客観的に捉えがちであり、なにより疲れる。厄介な能力だ、捨てられるなら捨ててしまいたいと常嘆いている。


1号機の思考を読んでも、疑問を追求する意志を変える気は無い判断した。

だから、答えた。


「正直に言うと、“興味が無い”。」


「……は?」


「人間がどこで何をしようが、心底どうでもいい。だが、個人的な目的があったから宣戦布告した。

負けが無いと分かっている試合に出てきたお前達機械も、どうでもいい。お前達がその後どうなろうが、興味も無かった。」


新は、1号機を優しさなどで助けた訳では無い。復活後の新は、慈悲や、慈愛、他者を思う気持ちが欠落していた。

現在の新の行動力は、使命と興味それだけであった。

1号機は、困惑したように顔を歪めた。本当の新の本性が、垣間見えた気がしたからだ。

新は、そんな1号機を気にせず続けた。


「だが、お前は違った。俺との戦いで、まさかの覚醒。“無生物がどうやって覚醒したのか?”条件は?興味が湧いた。」


「……覚醒?」


「普通なら有り得ない事だ。だが、俺が干渉した事によって奇跡が起きた。そんな事が有り得るんだと…。」


1号機の疑問には答えず、新は続けた。


「だが、それだけじゃない。覚醒してしまったからには、関わらないわけにはいかない。助けないわけにもいかない。

だってお前は、“神として生まれ変わってしまったから”。」


【覚醒】

それは、神として生まれた者以外の種族が、神になる手段のうちの一つである。

“現在確認されている”覚醒に至る方法は2つ。

1.歴史上伝説になりうる偉業を成し遂げる

2.種族から逸脱する進化


確認されているという言葉は、間違っていない。

親父であるゼウスは、この世界に神になれる手段を設けた。

だが、その手順や手段は断言しなかった。

『概念に司る』、もしくは、『理りから外れた者』。このどちらか、もしくは両方を持つものが神となる可能性を得る。


1号機が、覚醒となった条件はまだ不明だが、これだけは言える。




1号機は、歴史上初めて“無生物”から覚醒した。




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