表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/120

第107話 雨

*第107話 雨*


「さて、新。何でここに呼ばれたか分かっているよね?」


「……。」


天界。死神、新の対面に腰掛ける白いローブを纏った青年は、主神であるゼウス。新の父親である。

ASURAとの戦闘後、新はゼウスによって呼び出されていた。

無論、戦闘の件についてだ。


「何故、地上で人間と戦った?」


「……地上での生活が知りたいからだ。その為には人間としての立ち位置が必要だった。俺自身に都合の良い立ち位置が。」


「それが今回の戦いの理由?だからってやりすぎじゃない?」


「いや、コレで。俺が動きやすくなった。どうせ…」


新は、続きを言おうとしたが、口を噤む。


「どうせ…何?」


「………嫌なんでも。」


ゼウスは、新が何を言おうとしていたのか察した。だが、ゼウスはそれに対してあえて追求しなかった。


「はぁ……頼りにしてくれてるのは嬉しいんだけどさ?流石に、虐殺まではやりすぎだよ?最終的に修復する私の労力半端ないんだから?」


ゼウスはため息混じりに、新を叱る事を諦めた。

だが、新はそれを“否定”した。


「いや……“虐殺犯は俺じゃない”。」


「……何だって?」


「まだ終わっていない。戦いはここからが本番さ。」


新は立ち上がり、下界へと繋がる(ゲート)へと歩き始めた。


「ここまでは、俺の立ち位置を作るための戦いだ。」


(ゲート)のドアノブに手をかけ開きながら言った。


「ここからは、俺の為じゃない。“彼奴らの戦いだ”。彼奴らの選択見るために戦う。」




***




ASURA元本部。

死神に敗退後、ASURAは実質的な解散となった。

“解散となるはずだった”。

人気の無い研究所の中、たった一人コンピュータと対面し、青白い光に照らされながら操作し続けていた。


「……クハハッ!あれが最高傑作?笑わせるな。私の最高傑作はあんなポンコツじゃない。」


笑いながら、高速でキーボードを叩き、プログラムを構成していく。死神との戦いで得られた戦闘データ、その間のAndroidの思考を全てインストールしていく。


最高傑作をこの手で作り上げる。

なんて楽しい。なんと美しい。これこそ、これでこそ私の最高傑作。


「あとは、コイツらを…」


Android3機を作業しやすいように吊るし、太いチューブコードにつなぎ、データを解析していた。ただ、欲しかったのはデータだけでは無い。欲しかったのはデータ、そして……。

不敵に笑いながら、コンピュータに組み込まれたボタンを押した。


その瞬間、Androidの皮膚を突き破り、黒い何かが吹き出した。

それは、血のようにも見えた。Androidから黒い液体のような何かが滴る。


「……ん?おかしいな?」


違和感を感じた。視線の先には、3機のAndroidがある。

私はそんな操作などしていないし、命令もしていない。


「……何でお前だけ起動した?“1号機”」


1号機が震えながらコードを掴み、無理やり引き抜き、地面に落ちた。

起動ボタンは押していない。先程解析したデータ上でも異常はない。私の想定内の結果しか見当たらない。ましてや、起動できる状態では無い。

だが、現に目の前で1号機は動いている。地面を這って動いている。向かう方向は出口か?逃げようとしているようにも見える。何故?


“理解不能”


自信で理解できない事ほど恐ろしいものは無い。


「本当は、他にも使う予定だったが……。バラバラにして解析してみるか。」


コンピュータを操作し、1号機を拘束するよう命ずる。

複数のロボットアームが、地面を這う1号機を掴み、押さえつける。

だが、1号機の体が淡い光を帯びた。その瞬間、背中のジェットエンジンが起動し、ロボットアームを引きづり、引きちぎりながら暴走する。


「何!?」


そんな力など1号機には残されていないはずだ。データを解析してもそのような結果しか得られていなかった。

有り得ない。

……アイツだ。……アイツが現れてからだ。

アイツが現れてから、おかしな事が起きる。

私の知能を持ってしても、理解が追いつかない。私を嘲笑っているかのようだ。小馬鹿にされているようだ。手が届かないところが痒い。掻きむしりたいのに届かない、あの気持ち悪さ。


まだ私の分からないことがある。私の理解できないものがある。


「実に、面白い……!!」


闇の中、アーノルドは不敵に笑った。




***




「逃、げ…なきゃ…」


体が重い。自分がどこへ向かおうとしているのか、何故、逃げているのか分からない。

分からないけど、逃げなきゃいけない。

ただひたすら飛び続けた。

何も思考していない。だから、エネルギーが有限である事、当たり前の事すら忘れていた。

エネルギーが尽きて、徐々に落下しているのが分かる。


やがて、地面に直撃する。

地面をエグり、エグられながら、何度か地面を跳ねる。失速するまでそれは続き、取れかけていた腕が引きちぎれ、体内の配線を撒き散らしながら静止した。


なんで、私は動けていたんだろ。体が痛い。そもそもなんで痛みを感じているんだろ?そんなプログラムなんて無いはず。体の再生がされない。


意識が保てない。

まだ、逃げなきゃいけないのに…。


何処へ?


逃げても彼奴は絶対に追ってくる…。


逃げられる場所なんて…?



あるの……?



意識が、保てない。


「だれ、か………」


誰でもいい……


「誰、か……」


誰でもいいから……




「たす、けて……」




意識が……


雨が降り始めた。天気予報は、晴れだったはず。

天候のプログラムまで組み込まれた、この世界最高峰の知能をさずけられていた。

天候を外す事など有り得ない…。


「……やっと見つけたッパ。」


「…………本当だ。死神様、見つけたよ。ケロ。」


「え〜、僕が見つけたのに。パッパッ!」


薄れる視界の中、黄緑色の人影のようなものが2つ。見えた気がした。


「ありがとう。河童、大蝦蟇。皆に目標は見つかったって伝えてくれ。この礼は必ず返す。」


「えへへ、そんなのいいケロよ。」


「そうッパ。死神様の役に立てただけで嬉しいッパ!」


「ありがとう。」


最後に見えたのは、私を倒した……アノ……




「やぁ、久しいな。」



死神だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ