第104話 ASURAvs死神 2
*第104話 ASURAvs死神 2*
「おい、なんだアレは…」
防弾ガラス越しにAndroidと死神の戦闘を観察していた、アメリカ代表のレオンが呟いた。
「私はあんなモノ作れと言った覚えは無いぞ…」
それは死神を殺し切れないAndroidに対しての怒りでは無い。Androidの“人知を超えた性能に対してだ”。
人間とほぼ同じ体格にもかかわらず、原子力発電を搭載しているのもたいがいだ。更に、異常なパワー、知能。
そして一番問題なのが、自己修復能力。
過去、自己修復能力を所有する平気が存在しなかった訳では無いが、Androidの持つ能力はそれらを遥かに上回る。“再生”に近いのだ。
峰打ちによって損傷した部分から一瞬だけ見えた、機体内部の配線や人工筋肉部分は若干であるがエグれていた。
エグれていた部分が一瞬にして塞がったのである。
死神がこの事に気づいていないとは、思えない。
「---ナノマシンさ。」
30代位の白衣を着た男が、レオンに話しかけた。
ASURAのPI(研究主任)であるアーノルドだ。
ASURA設立後、対死神戦闘ロボットとしてAndroidを作ると立案したのはアーノルド当人である。
Androidの開発、設計、考案、作製の全てはアーノルドの力あってこその最高傑作であった。
「素晴らしい機体だろ?
Androidの機体内の隙間には、自己修復を行う専門のナノマシンが大量に詰められていてね。損傷する度に、ナノマシンがその損傷部分を修理するのさ。
それも、超高速でね。
損傷してなくなった部品は、ナノマシン達の一部から作り修理する。それが外壁だろうが、人工筋肉だろうが、配線だろうが何でもね。
あの程度の損傷だったら5秒もかからないよ。
死神にとっては都合がいいかもしれないが、私の作ったAndroidは両断されても修復する。
私の最高傑作だ。」
落ち着いた雰囲気のあるアーノルドは、淡々とそう告げた。
「まだ、見せてない機能もあるんだ。死神はどこまで抗う事が出来るかな…?」
* * *
----1号機、状況を報告せよ。
----腹部装甲及び、人工筋肉破損。自己修復により完治。自己修復能力残り86%。戦闘復帰します。
----了解。ターゲットの能力は未知数。気をつけましょう。
----2号機、気遣い感謝する。
----現在までの測定結果をかいじする。一般人平均能力を50と仮定。ターゲットの能力。
筋力:110
腕力:89
脚力:85
知能:99
瞬発力:120
速度:154
身体能力:170
ターゲットの能力。一般人の平均値2倍以上有すると仮定。現在時点想定内。目標達成確率95%。解析を続行する。
----了解。
----1号機、2号機、私が弾幕を貼る。その間解析を進め、ターゲットの能力及び、勝利方法を算出せよ。
----1号機了解。
----2号機了解。
----行動開始。
* * *
3号機の狙撃を回避後。3号機はスナイパーライフルを背中のガジェットに固定し、背中に固定されていた2丁の機関銃に持ち替えた。そして発砲。
死神に向け弾丸が乱射される。
死神は天井の機関銃と同様に大鎌を振りながら駆け出し、弾丸を弾きながら回避する。
3号機は、死神を追尾しながら発砲する。
3号機の攻撃は死神には当たらない。命中させ勝利することが本命では無い。死神の能力を計測している。
死神は既にその事に気がついていた。
身体能力を計測し、攻略法を模索しているのだろう。
しかしそれは、あくまでも全ての能力を計測できればの話である。
そもそも、死神は今回の戦闘において、自身に魔力を使わないという縛りを課しているが、いざとなれば魔力を解放することも出来る。
死神は、余裕を持って3号機の弾幕を回避しながらAndroid達の行動を観察した。
すると、弾幕の隙間から、2号機のガントレットが割り込んできた。先程のロケットパンチの連打同様、それを大鎌で去なして回避する。
が、ガントレットを去なした後、2号機の姿は見えなかった。
更に、去なしたガントレットとは全く別の方向。死角からもう片方のガントレットが死神目掛けて飛んできた。
それを今度は手で受け流して回避する。
しかし、そこにも2号機の姿は確認できなかった。
そして、頭上から死神目掛けて機械仕掛けの脚が振り下ろされる。
瞬間、衝撃波で地面に亀裂が入り、破裂音と爆風が闘技場を駆け巡る。
2号機が強化されているのは拳だけでは無い。
肉弾戦における全ての人工筋肉が他のAndroidと比べ強化された個体であり、ガントレットは+αで強化されただけに過ぎない。
「なるほど…ガントレットは単体でも動くことが出来るのか…」
蹴りを避けた死神が、跳躍しながら呟いた。死神の位置を速やかに特定した3号機が再び追従を開始し、死神の動きを制限する。
更に、隙をついてロケットパンチが全方位から飛んでくる。
それら全てを去なし、躱す。
2号機が再び死角から蹴りを繰り出す。これも躱す。が、爆風の影響で一時的に視界が制限される。
3号機が銃を持ち替えた。超電磁砲だ。
一閃。死神目掛けて無音の電磁砲が放たれる。
それを間一髪で回避する。
が、終わりでは無い。
避けた先には、1号機が剣を構えていた。そして、死神目掛けて振るう。
死神は、剣の描く軌道を見切り回避を試みる。
が、何故か剣の軌道が歪む。それどころか剣は、2つの曲線を描きながら死神に迫ってきた。