第100話 宣戦布告
ついに100話です。
ここからしばらく過去回です。
*第100話 宣戦布告*
数年前
死神は、国連総会会議場にて“宣戦布告”した。
「俺に仕事を寄越せ。さもなくば“世界を滅ぼす”。」
各国の代表が会議を行う最中、なんの前触れもなく議会の中央現れたその男は言った。
何を言っているんだ?どこから入ってきた?どうやって気づかれずにその場所に立っている?
様々な疑問が浮かび、代表達がどよめく。
1人が「どこから入った、つまみ出せ!!」と声を上げた。その声と同時に扉が開き、複数の警備員が突入、議会の中央にいる謎の男に拳銃を向けた。
「どこから入った!抵抗すれば発砲する!!」
警備員の1人が男に言った。中央の男はゆっくりと斜めに首を傾けながらその警備員を見た。
瞬間、とてつもない悪寒と、圧迫感が会場を包み込み、異様な恐怖が全身を駆け巡る。人の力では到底出せないほどの殺気。死そのものを感じさせる殺意。全身の筋肉がこわばり、奥歯がカタカタと震え、冷や汗が止まらない。口の縁から泡を吹いている者もいる。
たった一人の存在だけで、皆が死を覚悟した。
男が警備員に向かってゆっくりと歩いていく。1歩1歩近づくたび、警備員への圧力が強まっていく。あまりの恐怖に耐え兼ね、警備員が叫びながら拳銃を発砲した。1発の銃声に連鎖するように、ほかの警備員達も発砲。
銃声が鳴り響いた瞬間、男が自身よりも巨大な大鎌を持っていた。何処から取り出したのか?いつから持っていたのか?疑問が解決する前に、男はその大鎌を振るい銃弾と大鎌が激突する。甲高い音を放ちながら銃弾が両断、弾き飛ばす。更に押し寄せる弾丸を、歩みながら、まるでバトンを振るかのように、両断し弾き飛ばす。連射された拳銃の残弾が全て無くなるまで発砲は続いたが、男には1発も命中する事は無かった。
そして、警備員の握る拳銃の数センチ先まで近づき、止まった。気絶寸前の警備員の持つ拳銃を男が右手で掴んだ。いや、“握りつぶした”。男が握った瞬間にグシャリと拳銃が変形し、破片がはじけ飛んだ。
それを見た警備員は限界を迎え、膝から崩れ落ち気絶した。
その光景を目の当たりにした他の警備員達には、戦意など無かった。残弾は無い、拳銃を握りつぶすような男と戦っても、勝ち目が無い。それでも、奥歯をガリッと噛み締め、恐怖を掻き消すかのように叫びながら拳を振り上げ突撃する。そして、男に向かって拳を振るう。男はそれを軽々と片手で受け止め男の拳を掴んだ。そのまま、警備員の体ごと引っ張り、押し寄せる警備員に向かって投げ飛ばす。ドミノ倒しのように数人の警備員が吹き飛ぶが、間をぬけて次々と男に向かって駆け出す。
次々と振るわれる拳、その全てを男は去なしながら警備員達の顔に手を触れる。すると、警備員の頭に直接異常な量の恐怖がなだれ込み脳が耐えきれず、意識を手放した。
たった数分で、全ての警備員が気絶し、戦闘不能となった。
「……わかった、何とかする。だから時間をくれ。」
勇気ある1人がそう答えた。
男は「わかった」とだけ言い。音もなく、“姿を消した”。