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第99話 義両親になる、そして改変

*第99話 義両親になる、そして改変*




「マスターその子をどうするおつもりですか?」


ふと投げかけられた疑問は嵐からである。

場所は移動し、1度目に来た病院である。

遺体の数は2つ。

時子と時子の夫のものだ。

時子の娘。姪っ子という方が正しいか。姪っ子は新の腕の中で未だ寝息を立てていた。


(自分の両親が亡くなったのによく寝るな…)


姪っ子を抱きながら片手で、時子の肩に触れる。

時子の肌は石のように冷たく硬かった。

死体というのはこういうものなのだろうか。

不思議なことに先程に比べて異様な程に落ち着いていた。


(絶対にこの子は守るから…)


それが新の決意だ。

傲慢だと言われてもいい。自己犠牲と言われてもいい。絶対に姪っ子を守り抜いてみせる。

たとえそれが時子の望まぬ事だとしても。


自分自身、どこかで分かっていたのかもしれない。

自分のしてきた事が自己犠牲から成り立っている事を無意識のうちに感じ取っていたのかもしれない。

誰に望まれたわけでもなく、誰に頼まれたわけでもなく。

ただ、助けたかった。ただ、救いたかった。

そんな傲慢の塊だった。


だけど、自分にはそのやり方しか出来ない。

自分を犠牲にしてでも助けたい守りたいものがある。

そんな時は誰にだってあるはずだ。

それが自分には特別多い。ただそれだけだ。


どれだけ醜くても。どれだけ傲慢でも。

自分の信じてしてきた事を曲げず否定しない。

でないと、今まで出会えた大切な家族さえも否定してしまう気がする。


それも傲慢だろうか?家族ですら傲慢さによって作られたものだろうか?

そうかもしれない。

だけど、それでも皆が大切だ。皆家族だと思いたい。


だから、自分は醜く生きる。汚れて生きる。傷だらけで生きる。

それしか、自分にはできないのだから。

だから、新はハッキリとこう答えた。


「引き取るよ」




* * *




暫くして、背後の扉が開いた。

扉の向こうから入って来たのは時子の夫、その母親だ。


「はじめまして、義兄さんのお母様。俺は時子の弟、新と言います。以後お見知りおきを。」


先に切り出したのは新である。

しかし、彼女は何も答えなかった。

前回と同じように時子の夫の前まで近づき、小声で言った。


「“約立たずには消えて貰うって言ったでしょ”ですか?実の息子に酷い言い方ですね。」


「……。」


ピタリと彼女は動きを止めた。

彼女は横目でチラリと新の顔を覗いた。


「……初対面の人に随分と無礼な事を仰るのですね。“庶民”の知能は猿以下というのは本当でしたか。」


「俺は貴女が言ったことを繰り返しただけだが?」


「何時、わたくしがそのような事を。」


「たった今ですね。3分と26.64秒前ですね。」


「ご冗談が上手いのね。」


「俺の特技は“読唇術(どくしんじゅつ)”だぞ?時間はさっきから時計を見ていたんですよー。」


戯言(ざれごと)を。」


「ハッハッハッハー。初対面で他人をを庶民呼ばわりした上にアサシンの懐に札束放り投げて高みの見物してる阿呆には充分すぎる対応だと思いますが。違いますか?まぁ、俺自身も効率のいいやり方だとは思いますけど。自分の手を汚さず、どこぞのお掃除ロボットみたいに勝手にやってくれるんだから。」


彼女の表情が氷のように冷たくなったのは気のせいではない。

すると、新の背中に何やら硬いものが押し付けられる。

見るとそこには黒スーツの大男が数人。誰にも見えないように新の背中に拳銃を押し付けていた。

拳銃が向けられているのは、嵐達も同様だった。


「…庶民風情があまり調子に乗ったこと言ってんじゃないよ。」


「ほう?ではお言葉を返すようですが、年収が私より低い未だ貴族ズラしている凡人にそんなこと言われる筋合いはない。」


「…庶民が…よく吠えるじゃないの。」


「凡人がよく見栄を貼りますね。」


「その巫山戯た口を閉じないとお友達と一緒にあの世に行ってもらうわよ。」


「ふーん?それって誰がやるの?

もしかして、喧嘩売る相手間違えた後ろで気絶して間抜け面晒してる奴ら?」


新がそう言った瞬間、背後で拳銃を突きつけていた大男達は膝からガクッと崩れ落ち、手から拳銃が転がった。

それを見るなり彼女は「どんな手品を使ったのかしら?」と平常心を保ちながら言った。


「簡単ですよ?ただ、殺気を流し込んでやっただけです。泡吹いてぶっ倒れるくらいの。」


「種は明かさない気ですか……」


「真実ですけど。」


「で、要件は何かしら。」


「要件は2つ。1つ、姪っ子は俺が引き取る。2つ、これ以上姪っ子を含めた俺の家族に手を出すな。さもなくば、アンタらの企業を丸ごと潰す。その時の貴女は庶民ですかね?それとも…」


「できない事は言うもんじゃないわよ。」


「できるから言ってるんですよ。」


「話にならないわ。」


スタスタと扉の方へ向かう彼女を横目で追いながら、新は最後に言った。


「最後に一つだけ、もし仮に貴女の一族の跡取りが途絶えたとした時。その時は姪っ子に貴女の“姓”を与える事を許しましょう。しかし、姓を与えたとしても貴女方にこの子を預ける気も貴女方の一族に入れる気は無い。飽くまで血縁を認めるだけだ。以上。」


「くだらない。」


最後に彼女はそう言い残して去って行った。

バタンっと閉まる扉の音で甥っ子は目を覚ますなり泣き始めた。


「孫の事すら興味無し、か。」


新は姪っ子をあやしながらそう呟いた。


「マスター、その子をどうするおつもりですか?引き取ったとしても私達は元の時代に帰らなければなりません。一緒に連れていく事は…」


「そんな事しないよ。」


「ではどうするのですか?施設に預けるのですか?」


「引き取ったのにそんな事してどうする。」


「では…」


どうするのか、と嵐が言う前に新は言った。


「育てるよ。」


「「「は?」」」


一同間抜けな声を上げたのは言うまでもない。

言うと思っていたからだ。


「この時代でしばらくの間、この子を育てるよ。」


「そんな無茶な!!」


「無茶かもしれないけどやるしかないね。まぁ、少しだけの間、施設には預けるよ。準備が終わるまでは。」


「ですからマスター!!」


「それに、これは必要不可欠なことなんだよ。元の時間に戻すために。」


「どういうことぉ?」


キョトンとしたリーの問いに新は答えた。


「この子は、この子の“名前”は…………


その名を聞いた嵐達の表情は驚きを隠せなかった。

そして、新の言わんとする事の全てを察した。

それが元の時間に必要不可欠であると理解した。

少しばかり嵐はなやんだが、同意した。


「あ、因みに3人の中で出来れば“母親役”をやって欲しいんだけど、希望者います?因みに俺は父親役やるから。」




「「「はいっ!!!!!!!!!!」」」



軽い気持ちで言ったつもりが、半端じゃない勢いと威圧に圧倒されながら希望者多数という事で話し合いが始まった。

しかし、当然の如くまとまる訳はない。

「私は2人より長い間マスターに仕えてきました。なので夫役であるマスターを支えるのに適任かと。」やら「私の方が母性があるわよぉ?ほら1番ん女性的なフォルムだしぃ。」やら「お、俺は別に興味無いけど2人は不安だからしょうがないから立候補したまでだ。」やらと…まぁ、派手な論争が勃発した。嵐の口調は次第に崩れ、リーはやたら胸やら女らしさを強調し始め、ラーはツンデレ属性が極まっていった。

最終的に勝っても負けても恨みっこなしのジャンケン大会が開催された。

そして、勝ち抜いたのは…




「よし勝ったァアア!!!!じゃなくて!!ま、まぁ、2人が心配だったし丁度いいというかなんと言うか…(ごにょごにょ)」




勝者はラーであった。

因みに負けた嵐とリーは酷く凹んでいた。

敗者である2人は、「私の方が長く一緒に居たのに…」「よりによって1番女性らしさの欠けらも無いラーが…」とボヤいていた。


「いや、嵐もリーもラーもそんな付き合いの時間の大差はないだろ…リーの言う女性らしさが何なのかは分からんけどラーにも魅力はあるぞ?二次元で例えるならスポーツ女子やら体育会系女子やら俺っ子やら、まぁ、元気さが萌えポイントなんじゃないか?

ん?どうしたそんな目で見て。」


「マスターのバカ。」「マスターのおたんこなす。」


「いや、なんでさ!!俺はただラーだって魅力的な女性だって言っただけだろ!!なぁ、ラー!!ってどした!?」


振り返って話を振ったラーは、両手で顔を抑えながらイナバウアーをしながら転げ回っていた。

なんだこの奇怪な行動は…バグか?バグなのか!?

「大丈夫か?」と声を掛けると…


「なんでもない!!なんでもないから!!今はちょっとマスターの顔が見れないと言うか、俺の顔が見せられないというか…」


よく分からないが、何かと格闘しているようだった。

そして嵐とリーから「天然」やら「女たらし」やらと怒られた。

なんでだ?


しばらくの間、嵐とリーの機嫌を治すのに格闘し、現代に戻ったら駅前のフルーツパフェを奢る事で手を打った。


最終的な配役としては、新が父親、ラーが母親、リーはラーの姉妹で同居人、嵐はリーの子供といった感じだ。

正直無理矢理感がある。

設定としては、リーはラーの姉妹で夫を亡くし娘の嵐と居候しているとなっているが、発案した時は即刻拒否された。

しかし、他に納得出来るような設定が出なかったため、採用された。

2人は余計落ち込んでいた。

追加でパンケーキを付ける事で手が打たれた。


そして、しばらくの間、姪っ子は施設に預けられた。

その間、5人で暮らすのに十分なアパートを借りた。家具やら食器やらも1色揃えた。

それと、育児費やら教育費やらの金銭。最初は新の口座から落とせばいいのではと考えたが、この世界に新の口座は無く、元々あったものは、この時代の新のものだったため使えない)。稼ぎ方はお馴染みの指名手配狩り、町狩人風に言うとスイーパーだ。

しかし、育児をする上で自己紹介などをすると面倒なので家庭教師をやることにした。

あとは、施設に1度入れ連れ戻すための手続きやらその他もろもろだ。


最後にやったのは、身分証明の発行。これは日本総理大臣に連絡し直接発行を頼んだ。

口調がこの時代の自分と違い過ぎて怪しまれたが、色々情報を渡すと納得された。

この時代の新とは別人として扱われることとなった。


そして、新は改名し、この時代での名前を“仁堂新田(じんどうあらた)”。

殆どそのままである。

嵐は“仁階堂山風(にかいどうやまかぜ)”。

こちらも殆どそのまま。嵐の字を崩しただけである。


最も変わったのはやはりリーとラーである。

リーは“仁階堂亜利奈(にかいどうありな)”。

ラーは“仁堂來麗(じんどうらうら)”。

リーは何となくだが亜月からもじった感があると嵐にツッこまれたが否定しているが、ギクリやらドキッやら効果音が出ていたので図星だろう。

ラーは何故か外国人風の名前を命名したが、まぁ、見た目が完全に日本人じゃないから問題ないだろう。

因みに日本人のような髪やら瞳やらをしていないのは全員である。

新は白髪のままで過ごすことにした。


こうして、新はしばらくの間姪っ子の世話をする事になったのである。




* * *




新が姪っ子を引き取った夜の事である。

1台の大型トラックが高速道路を走っていた。

夜間にトラックが高速道路を走るのは当たり前の事。

しかし、それに漬け込んで二人の男は逃亡していた。


彼らは“CRASH(クラッシュ)”という名で裏の世界を渡り歩く暗殺者(アサシン)、“武井”と“河野”である。

彼らの暗殺方法は“衝突事故”。

軽トラックを分厚い鉄板で覆い、戦車程に重くなった車体で車に乗ったターゲットをそのまま轢き殺す。

派手なやり方だが警察は足取りが掴めない。

何故なら、CRASHは芸能人やら大臣やらの有名人の暗殺は行っておらず、一般人やマフィアを主にターゲットとするものしか請け負っていないからだ。

更に言えば、需要な証拠となる暗殺に使われた車が見つからない。


それもそのはず。

鉄板で覆われた軽トラは姿を変える上にトラックの積荷として移動するからである。

姿を変えるというのは、実は覆っている分厚い鉄板は簡単に取り外し可能なうえ、熱によって形を変える。

所謂、形状記憶合金というものでできているのだ。


彼らはターゲットを轢き殺した後逃亡し、すぐさまトラックの荷台に乗り込む。

荷台には予めストーブで熱されたサウナ状態にしてあり、軽トラが中に入ると覆っていた鉄板が形を変え、車の修理器具を入れる大きめの箱になる。

そして、操縦者がトラックに乗り移り逃亡。

その間に荷台は耐熱加工された冷却器で冷まされ、違和感なく逃亡できるという訳である。


警察や雑誌記者の中では一躍有名になったが、長知れ渡り過ぎたため雲隠れしていた。

しかし、最近になって途轍もない額を出すという婦人に雇われ、今日の昼、ターゲットを殺した。

あとは、悠々と移動し逃げるだけである。


深夜とは言え、高速道路は日中よりは利用者が少ないがそれなりには利用者がいる。

平成の世で生まれた煽り運転とやらもいるらしいが、今回は現れなかった。


タバコを吹かしながら高速道路を走っていると、何やら奇妙な物がサイドミラーに写った。

訝しげに思った助手席に座る河野がサイドミラーを見つめる。

“何かが走っている”。

気のせいか?いや、気のせいではない。

このトラックを追っている?


「おい、武井。何か近づいてくる。」


「あ?また煽りか?」


「いや違う。何かが走っている。」


「寝ぼけてんのか?こっちは時速100kmくらい飛ばしてんだぞ。」


「いや、間違いない。何が来る。」


その何かは黒かった。

夜の闇より黒い何かが、彼らのトラックを追っていた。


「アレは…まさか…“人か”」


「お前ついにボケたか?」


「いや冗談なんかじゃねぇ!!こっちに向かってくる!!追いつかれるぞ!!」


「もういいから黙ってろ。」


「やばいやばい!!来るぞ!!」


「だからいい加減に…」


次の瞬間、鈍い音と共に車体が大きく揺れる。

突然の揺れに流石の武井も驚く。


「何だ今の。」


「なんだアイツ!!車体を掴みやがった!!」


「マジかよ。だが、時速100kmのトラックに追いつける人間がいるわけ…」


そして再び、トラックが揺れる。次は後ろに引っ張られるかのような揺れだ。

本当に何かがいる。本当に人かは分からないが何かがいることは間違いない。

武井もそれを流石に理解し、アクセルを強く踏み横転しない程度の蛇行を繰り返す。

しかし、揺れる車体をその何かはしっかりと車体を掴み離れない。

その時、運が良いのか悪いのか高速道路の先がカーブになっていた。

しめたと思った武井はアクセルを思いっきり踏み込み、カーブする車線に接近する。

そして道がそれた瞬間、横転しないギリギリの速度でドリフトしながら壁と車体スレスレでカーブする。

その時、車体と壁の間には車体を掴んでいた何かが居た。車体を擦らずとも、掴んでいる何かはみんちに出来る。

そして、カーブを曲がり終えた後、車線は一本道に入り揺れが止んだ。


「振り切れたか?」


「分かんねぇ…けどミラーには写ってねぇ。」


「なんだったんだ今の…」


「さぁ…」


「ちっ、次のパーキングでトラックの血を吹くぞ。このままじゃ人殺しが乗ってますって言ってるもんだ。」


少々焦ったが振り切れた事を確信した武井は一息つくが、おそらく付いたであろう車体の血の跡を消さなければならない事を思うと面倒だとボヤいた。

しばらく沈黙が続き、トンネルにさしかかった。

トンネルの中オレンジのライトに照らされながら、ふと、河野はとある噂を思い出した。


「まさか…さっきのって…」


「どうした?」


「いや、そんなはずは…」


「だからどうしたって。」


河野の妙に焦った姿に武井は呆れながら聞いた。

河野はゴクリと生唾を飲み込み口を開いた。


「俺達今日の朝コンビニで飯買っただろ?」


「ああ。そうだな。」


「お前が小便済ましている間に適当な雑誌を立ち読みしてたんだ。」


「それがどうしたってんだ。」


ゴクリと再び唾を飲む音が聞こえる。

どれだけ緊張してんだよと思いながら武井は河野の話に耳を傾ける。


「たまたま読んだ記事にこんな話があったんだよ…」


「噂?」


「ああ、“指名手配狩り”の噂だ。」


「指名手配狩り?ああ、アレか。世界各国に居るって噂のアレか。確か名前は…」


名前を答えようとしたちょうどその時、トラックがトンネルから抜けた。




「「“死神”。」」




トンネルから抜けた瞬間、ダンッッ!!!!とトラックに強い衝撃が走った。




***




後日談だが、CRASHは逮捕されたが2人は酷く何かに怯えていた。取り調べに対しては自分達の罪は認めるものの、その晩何が起きたのかは語ろうとはしなかった。2人の刑罰は無論死刑。何十人もの殺人を犯してきたのだから当たり前だろう。

刑が執行される1週間ほど前、とある記者が彼に何があったのかを尋ねた。

すると、彼らは口を揃えてこういった。


『『死神に会った。』』


彼らの証言は週刊誌に掲載された。

そうして世間に死神の名が知れ渡った。


「………。死神様、この記事どう思いますか?これ、“死神様の仕業じゃないですよね?”」


「ん?あーその記事なら俺も読んだよ。」


新は姪っ子をあやしながら嵐の見ている画面を横目で見た。

嵐が見ているのは今の情報ではなく現代の情報メディアである。

今のインターネットの情報は現代の情報を見る事ができないが、嵐の持っている機械に新の時神の力を送り込めばば現代より前の時間のものなら見る事ができる。ただし、現代より後の未来は見る事ができない。過去を改変する新たな原因となるのを防ぐためという理由もあるが、新た自身もそこまでうまく力が使いこなしていない事が主な原因だろう。


「じゃあ誰が死神様の真似事をしたんだ?」


リーが率直な疑問を述べる。


「記事に書かれている手配犯の捕獲方法は“ありえない殺気”って、死神様と同じね…。」


リーラーも画面を覗き込んだ。姉妹ということもあってか、3人とも同じしかめっ面をしている。

新も初めて見た時は同様の顔をしたが、奴らを捕まえた正体はすぐにわかった。

何故なら、“記憶”にあるからだ。


「“ここにいる俺以外にも同じ事ができる奴”がいるだろ?」


たった一人だけ、新と同様に殺気を操れる人物がいる。それも、ここにいる新と同等の力を持った狩人が。


「あー…なるほどな。」


一番はじめに答えがわかったのはラーだった。

先日の


「リーは誰かわかったの?」


嵐はリーrちゅに尋ねた。


「なんとなくわかった。」


「答えは?」


「“死神様”」


「だから、死神様の仕業じゃないって…」


「正解。」


「え⁉︎さっき自分じゃないって…」


「確かに俺の仕業ではない。だけど“この時間”にいるのは俺だけじゃないだろ?」


嵐は数秒キョトンとした顔をしたがすぐに答えに至った。


「“過去”のマスターですか⁉︎」


「正解」と新はラーから渡されたミルク瓶のお温度を確認しながら答えた。

新は、この時間においても現代同様に死神という名前で依頼された指名手配犯の捕獲していた。しかし、新の記憶に上にはCRASHの捕獲した記憶は“無いと思っていた”。先日、実験を兼ねて、この時間の新の貰う予定であった手配書の中にCRASHの指名手配書を紛れさせてみた。“過去の新に、自身の記憶の無い行動をさせたら自身の記憶はどうなるのか?”。下手したらまた歴史が代わるリスクがある。

いきなりCRASHを捕獲させるのはリスクが高すぎるため、小さい改変を複数回行ってから行った。小さい改変というのは、新が過去に購入したプラモデル。この時間の新が購入する直前に順番を入れ替え、過去に購入したものと“違うシリアルナンバーのプラモ”を購入させてみた。結果、朧気に覚えていた過去に購入したプラモのシリアルナンバーの記憶。その数字が“脳内で変わった”。元々そうであったかのように脳内で数字が入れ替わった。それ以外に変化は特に起こらなかった。

あとは、買う予定だった缶ずめの配置を変えてみたりだとか、本屋で買う予定だった漫画の付近にある本の位置を少し変えてみたりなどの実験を複数回行い、いよいよCRASHを捕獲させる実験を行った。

結果、“過去にCRASHを捕獲した”という記憶がごく自然と頭の中に入ってきた。さも同然化のように、記憶の中にある。違和感はあるが、特に問題は無さそうだ。

CRASHを捕獲して、他の歴史が改変されるという不安要素はあったが、それに関しては多大な影響は出ないという“確信”があった。

確かに、CRASHは新が捕獲した記憶は無かった。が、過去の新以外の“人間でない者”が捕獲したという記事を読んだ記憶はある。

過去に読んだ記事にはこう書いてあったと、記憶している。



『CRASH逮捕。再び現れた仮面のヒーローは何者?』




お久しぶりです。数年ぶりに続きを書いてみたくなり、戻って参りました。

以前まで読んでくれていた方も、忘れてしまっているかも知れませんが、気が向いたら読んでいただけたら幸いです。

また不定期で投稿すると思いますが、よろしくお願いします。

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