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金代①

「先生お前みたいに可愛い子、大好きだよ」




先生が可愛いだなんて言うとは、頬がかああっとなる。


「いつも貢がされて結局逃げられるけど」

あっけにとられた私はしばらく言葉をなくす。

金代先生は人を一喜一憂させるのがうまいなあ。



なんだか先生の首が輪を描くように赤くなっている。

「あの先生、その首の…」

「ああ、これ?」

先生は首のあたりを掻く。


「どうしたんですか?」

「俺金属アレルギーなんだよ」

キラキラ光るアクセサリーをしているが、外せばいいのに。


「知り合いにもらったんだよ」

「知り合いですか?」


「ゴルマヌスって言うゴツイ名前なんだけどさ、あ、見た目は名前負けするくらい中肉中背」

「はあ…」

ゴリラという生き物のような筋肉ムキムキの人を想像してしまった。


「男女問わずめちゃくちゃ慕われていたそこは羨ましかったな」

今は三井先生に女子人気をとられているけど、金代先生だって男女に人気があるではないか。


「まあ昔やってた仕事の先輩」

「まるで慕っていなかったというように聞こえたのですが」

「一応尊敬はしていたかもなぁ、実際強かったし未だにあの人には勝てないだろうな」

強い、勝てないということは対戦?


「格闘技でもやっていたんですか?」

「まさか…いや、でもミスターインドアの先生が昔はファイターなんてちょっとカッコイイか」

違ったらしい。


「まさか…人には言えないようなお仕事ですか!?」

「そんな度胸あるやつに見えるか?ただの健全な神父だよ親父が牧師だったから似たような仕事をってわけ」

牧師と神父の違いで一番印象が強いのは結婚可能か否か、という辺りだ。


どちらも神様を奉る点では類似しているのに、なぜ牧師にならなかったのだろう。


そして昔の仕事ということは今は神父ではないの?


「あ、そろそろ帰らないとヤバイな」

「え!?」

「俺がいつも食べているあれ、この時間限定なんだよ」


金代先生は信じられない速さで行ってしまう。

もっと話が聞きたかった。


「おはよ」


「あ、金代先生」

――――なんだろうこの不思議な力。

魔力ではないし、三井先生のとも違うが近い。

彼にあるのわけでもない。


金代先生はなにやらイラついている。


「あー口寂しいなあー」

ききよがしにこちらをチラチラ見ている。


「チョコは食べないんですか?」

「それがねー、どっかの金持ちのお坊っちゃまが今日の分のチョコを買い占めてさあ…」


つまり金代先生はチョコを買えなかったからイライラしているのか…。


「……市販のチョコで…もらうか」


金代先生は呟く。


「なにか言いました?」

「いや何も」


さすがは大人だわ。ポーカーフェイスを決められた…。



「金代先生は?」


彼は今日、授業に一度も来なかった。


今朝見かけたので最後である。どうしたのだろう。


まさかチョコが食べられないくらいで、職務放棄するわけない…。


私は放課後、先生を探すことにした。


―――放課後になり、学校内を探すことにした。


真っ先に職員室へ向かうと、芳樹先生がいたので、たずねてみた。


『金代先生なら帰ったよ』


と言われたので、学校を急いで飛び出す。


学校の近くを探しても、いない。金代先生はどこだろう。


途方に暮れていると、近くから悪魔の気配を感じた。


私は元の姿に変身し、悪魔のいる場に向かった。




そこには、思いがけない人物がいた。


「…?」


―――金代先生が、いまにも悪魔の鋭い爪に割かれそうになっていた。


どうして彼が、そんな目にあっているのだろうか。


「先生!」


声をかけて、ハッとなる。

魔女の姿はただの人間には見えないのだ。



「…来るな百桃、こいつは悪魔だ!」



なんで、ただの人間には見えないはずなのに―――――


私は姿を消すアイテムを装着しているので普通は見えるわけない。

そう言えば先生は神父だと言っていた。


神父に悪魔が見えるのかはともかくとして……首に下げている十字架は悪魔に効果がないようだ。



「というかその格好なんだ…?」

「そんなことより!悪魔をどうにかしないと!」


「お前にも、悪魔が見えるのか……?」

「はい。私は魔女ですから」


あ、言ってしまった―――――――!


なんとか悪魔を退治したはいいが、別の問題がふりかかっている。


「私が魔女だと知って、疑わないんですか?」


人間界の人は魔法を使えるという概念ないから普通は驚くみたいだが、先生は平然としている。

もう力を使って敵を倒してしまったので、ただのコスプレでしたとは言えない。


「まあ仮にも神父やってたし」


「あ、ですよね……」


「それに、俺も似たような力・使えるしな……」

「え、いま何か言いましたか?」


「いや別に」

またはぐらかされてしまった。


「これで合点がいった。……つまり、お前が授業を避けていたのは」

「はい、この世界の文字が読めないからです」


「言葉はわかるんだな」


「便利なアイテムがありますから」

「ならそっちの世界の言語を教えてくれよ」

金代先生はチョコを食べながらそう言った。


「え?」

なぜ教師相手に私が教えることになるのだろう。


「俺がその世界の言葉を覚えて訳せば授業もできるだろ?お前も文字を読めるし」



『わからないならお前の国の言語で授業してやるから…』


ふと思い出したが、彼は以前似たようなことを言っていた。



(先生……)

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