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巻神ルート

可愛らしいサーモンピンク色の髪は、人間界では彼以外にまったく見かけない。

魔女の世界では色々髪を見てきたので、特に驚きはしないけど、場所で違うなら、ここでそう生まれてきた彼はすごいと思った。


菜園時君の家に行く途中で巻神君と原比良君が手を降っていたので、近くに向かった。



「あの後大丈夫でしたか?」

きっと病院に行ったんだろうけど。

「いやあ…今日は造花ですまないね」

巻神くんに紙で出来たピンクの薔薇をもらった。

「あ、ありがとうございます」

「僕が素晴らしい王子だからってかしこまる必要はないさ

気楽にはなしたまえよ」


桜を手渡されたとき、突然倒れたのは驚いたけど。

薔薇に近い植物だと知らなかったからだろうけど、なんで桜を手渡されたんだろう。

聞いてみることにした。


「たまたま庭先で…いやいや買ったんだよ」

今は五月なので桜の季節ではないと思ったんだけどますますわからなくなった。


今日は平日だけど学校は休みで、修行のチャンスだと思う。

というわけで私は早朝から出歩いていた。


道に迷ったら誰かに聞けばいい、と楽観的に出たのはいい、だけど本格的に迷ってしまったみたい。


見覚えのある赤い髪が視界の端にチラリと見える。

よく見ると彼は小さな子達を連れて、こそこそ歩いていた。


近づいて声をかけた。



「巻神…君?」


「ミーナ君!?これは違うんだ!!断じて誘拐だとかそんなものじゃないんだ!」

「いえ!そんなことは考えてはいないから…!」

「これは弟妹達なんだ…誰にも言わないでくれ!」

巻神君はなぜか必死で、取り乱している。


「どうして?私は一人だから、他に家族がいることは羨ましく思うよ」

「ミーナ君、外国ではそうかもしれないけどこの国だと大家族は好奇の的なんだよ…」

家族があるのは代々王家だけ、それも一子のみなので、大家族というものを自国で見たことはない。

だから私にはこの国の基準はわからない。

そう言ったらおかしいと思われてしまうだろう。

とりあえず言わない約束をし、その場を誤魔化しておく。


それにしても優雅な印象だった巻神君が、あんなに大変そうに家族の世話をしていて、おどろいた。

「巻神くん、この前のことなんだけど――――」


「なんのことかな?」



巻神くんは、茶川くんの後ろにまわった。

私から距離をとっているのだろうか。


手には薔薇、造花かな?顔が青ざめているけれど。


「う…」

「おい…!」

――――巻神くんは倒れた。



つい数十分前、彼を茶川くん、原比良くんが二人がかりで保健室のベッドに、寝かせてくれた。


閉じたまぶたには長い睫毛、美味しそうなサーモンピンクの髪、彼が薔薇そのものであるかのように綺麗。


ちょっと羨ましくおもうが、せっかく似合うのに薔薇の花に触れられないなんて…。


悲しい、かわいそう、同情、は違う。

こういう気持ちをなんていうんだろう。


「う…ん」


「巻神くん大丈夫?」

ようやく巻神くんが目を覚ました。


「なぜここに君が!?」

「私がいるとまずいの?」

「まずくはないよ、だけど…」


なにやら呟きながら巻神くんがゆるめられていた襟を直す。


なにが彼をおかしくしたのか、考える。


―――この前、弟妹たちと歩く彼を見かけたからだろうか。



「私だれにも言わないから」

巻神くんの手を握り、安心してもらおうと笑顔を作った。


「う、うん。それならいいんだ」

巻神くんは落ち着いた様子。


もう放課後なので、巻神くんと一緒に帰ることにした。


巻神くんの家についた。

どうやら巻神くんの家の向こう側に私の家があるみたいだ。


なにか嫌な感じがする。

化け物の類いではなく、魔女にとって嫌な存在が近くにいる。


清浄な空気、それが、巻神くんの家から漂ってきている!!



もしや、彼は神仏の類いだったのだろうか!?


魔女の敵に触発され、私は戦慄する。


「顔が険しいけど、家がボロいから嫌な気分になったのかい?」

「いえ!外観はさておき、家の中に神に近しい何かが!」


「神様?貧乏神でもいるというのかい!?やっぱり家が貧乏なのは貧乏神のせいなのか…」


「私がその変なものを追い出すわ!!」



うちなる魔力を増幅させ、体をコーティング。



「あら~おかえり」


腹の大きい女性がいる。

それはともかく、背後に白い何かいる。




天使だ――――。

【大天使ガァブリェエル】


《聖母マリィアには自然に子供が出来た。それを告知したのがこの天使》



「1年ほど前まで、僕の家はそこそこのお金持ちだった。母が2ヶ月に一人謎の出産をするから家がこんなにことに…」


なるほどこれが原因か。


「ガアアアガブガブ!!」


これは、天使なの?

悪魔よりひどいことをするんだなあ。


「巻神くん、目をつむっていて!私が邪悪な天使を追い払うから!」


巻神くんが目を閉じた。



「きたれ我が契約者“悪魔ぺリリィム”!白き害悪をこの家から追い出したまえ!!」


「キシャアアアア」


これ…天使じゃない。

白い魔力で作られた紛いものだ。


魔力は基本的に黒いが、突然変異で白い色をした魔力を持つ者がいるときく。


白い魔力―――

そんな魔法を使えるものがこの近くにいるなんて。

「ねーねー隣町のコンビニにさ~」

「えーマジで~」


なにやらコンビニなるものに面白いものがあるようで、気になった私は見に行くことにした。



四角くて低い建物。これがコンビニ…



「いらっしゃいま…」

「巻神くん?」


いったいなにをしているんだろう。


「あのほ、ほら僕の家お金ないだろう?」


巻神くんがとても動揺している。


「そうですね」

「このことは黙っていてほしいんだ」

「なにか言われて困ることでも?」


そもそもここはどんなことをする建物なんだろう。



ひとまず巻神くんがすることを終わらせるまで待った。



それからコンビニとバイトについての説明を受けた。


慌てていたのはバイトは校則なるものの違反となるかららしい。


コンビニはどこにでもあるが、近場だと教師に見つかるからということで隣町にしたようだ。



「こまっている人に追い討ちをかけるようなこと、私はしないよ」


巻神くんは安堵したようだ。

ついこの前もこんなやりとりがあった。



とにかく一刻も早く彼が報われるよう応援しよう。


◆祈るにはどうしよう?

→〔神社〕

〔教会〕


――ああ、神社ならば教会ではないしチガイホウケン的な意味で魔女がお祈りしてもいいわね。


「私がいなくなってもこの先巻神くんが過度な苦労せず息災でありますように……」

「あらあらお嬢さん、ここは縁結びの神社だよ」


――神社によって願うジャンルが違うの!?


「そうなんですか?」

「外国から来たんだね」


人間界では珍しく髪が紫でファンキーなお婆さんが神社の作法について説明してくれた。


「ありがとうございました……というかどうしよう」


帰宅したいが私は神社を適当に探して歩いていた為、ここがどこかわからないので道に迷ったみたいだ。


「あ、こんにちは」

「こんにちは」


神社へ入っていく女性とすれ違いざまに会釈する。


「あれ、もしかして……」

「なにか?」


紫の髪をした彼女を見ると何やら見覚えがある人の顔が浮かぶ。


「巻神って男子知ってます?」

「同じクラスです」

「じゃあやっぱり貴女が巻神くんが言ってた転校生ね!」


彼女は巻神くんとどういう関係なのだろう?


「あ、ついでに最近そちらの学校に嫌味っぽいエセ京弁の人来てません?」

「そういう人が副担任ですけど……」


やっぱり、と言いたそうな顔をしている。


「私はこの三井神社の神主の姉三井光希。光吉の従姉です」

「道理で、先生と似ていると思いました」


先生との関係はともかく、彼女は巻神くんの近所のお姉さんなのかしら?


◆きこうかな?

→〔きく〕

〔きかない〕


「あの、光希さんは巻神くんとはどういったご関係なんでしょうか?」

「あれ、巻神くんの事気になってる~?」


彼女は私をからかっている。


「ええっ!?」

「前に彼がこのあたりに住んでたの。よく妹や弟と遊んでたわ」


あの頃は皆、小さくて可愛いかった。と彼女は懐かしむような目で神社の広い場所を眺める。


「姉ちゃん、彼氏連れてきたわ~」

「どうも」


腕を組んで照れ臭そうにしている男子。ああ、妹さんも巻神くんとは何もないみたい。


「いま安心した?」

「……!?」


ニヤニヤと私の考えを読んだ。人間界にも恐ろしい者がいる。

私は道に迷ったと話すと、知り合いを呼んでくれると言われた。


「やっと……帰れる」

「ミーナくん!?」

「え、知り合いって巻神くん……」

「おせっかいお姉さんと読んでいいのよ」


彼は初日に私の家へ来たから帰宅への道は私より知っている。

彼女からしたらそれが理由ではないだろう。

そもそも私は巻神くんをそういう意味で好きではないような?

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